ひさびさの映画館。Waoに誘われて観て来ました。
人気テレビドラマシリーズの劇場版。そういった意味で偏見を受けそうなこの作品ですが、これがなかなかの出来。
今らしい社会性と、このドラマならではの人間ドラマを両立しつつ、スピーディに展開する画面は脚本のうまさを感じさせてくれます。
あらすじ
東京郊外の電波塔に、テレビの人気キャスターの死体がぶら下げられた状態で発見される。その死体のそばには、「f6」の文字が。
衆議院議員の片山雛子(木村佳乃)のもとに小包爆弾が送りつけられたことから、警視庁特命係の名コンビ、杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)にその護衛任務が命ぜられる。からくも襲撃を阻止するふたりだったが、その現場には「d4」の文字が。
このふたつの事件に関連性があるのではないかと疑った特命係は、独自の調査を開始。インターネットの会員制サイトSNSのなかに、処刑予告のような掲示板を発見する。そこにはテレビキャスターと、片山議員の名前があり、その横に「死刑」の文字が添えられていた。そこで行われていたのは、有名人の言動を槍玉にあげ、参加者の投票によって有罪無罪が決定される闇の裁判であった。
特命係の追跡が始まる。死体のそばに添えられた記号はなにを意味するのか……。
わたしはテレビシリーズはほとんど観ていなかったのですが、最近友人のWaoよりオススメされて再放送を数本観たレベル。
登場人物がだいたいレギュラーっぽいなとはわかるのですが、初見の人物ばかり。
それでもちゃんと人間関係がわかるよう、さりげなくセリフのなかに説明が織り込まれているのがなかなか親切設計。
完全に初見の場合でも、ちゃんと楽しめるのではないでしょうか。
またたくさんのレギュラー陣が登場し、役者としても油の乗ったビッグネームがふんだんに登場するわけですが、それがただの顔出しに終わらず、それぞれがちゃんとストーリーの重要なポイントやその人物らしい見せ場を与えられているのがすばらしい。
というか脚本家の苦心のたまものというものでしょう。
中盤までの展開は、虚無的な知能派犯罪者との戦いがメイン。
なにやらデスノートを思わせるような、処刑ゲームの首謀者との戦いとなり、いかにも今風だなぁと思わされます。
「人を殺すことのどこが悪いの?」などと平気で言えてしまう若い人の感性は理解不能ですが、そういう虚無的な「今」を反映させたところに、この作品の社会的観点の敏感さを感じます。
その「今」に、右京さんや亀山がどう答えるのか、見ているこちらは期待が高まります。
しかし後半、目玉となる大イベント東京ビッグシティマラソンを挟み、作風をゴロリと転換させたところが脚本のミソ。
実在の大問題となった「あの事件」をどうしても彷彿ととさせる作りとなっており、そこからはもう一つの映画が始まるような感触。
これがうまく出来ていて、観ていて飽きさせません。まるで2本の映画を観ているような満足度です。
それでいながら全編が破綻せずにちゃんと一本につながっているのが、よく出来ています。
何度も言うようですが、この作品は脚本がかなり頑張っていますよ。
120分ほどの枠の中に、よくもまぁこれだけのエピソードを詰め込んだなと感心するほどの充実のストーリー展開。
次々と謎が謎を呼び、右京さんが早業のように謎を解くとすかさず次の挑戦状がたたきつけられる「わんこそば状態」。
そういった点ではミステリーとしては笑ってしまうほどの出来すぎなドラマなのですが、そういうものだと観てしまえばこれはとても楽しい。
右京さんの天才ぶりと、警察内部でも異彩を放つ人間性を楽しみ、その指示で必死に駆けずりまわる亀山の熱血ぶりを楽しめば、これはすばらしい娯楽です。
またあれよあれよと話が展開するスピードながら、ちゃんと観客がついてくるのを待ってくれる気遣いぶりもあり、なかなかの快感です。
そしてまた笑いあり、涙ありの気持ちのいい人情劇もあり。
娯楽作品として抜きん出たものがあるわけではないのですが、ちゃんと楽しい時間をすごせる良質な一本です。
終わってみれば、何気ない会話が最後にメインテーマだったことに気づかされたり、「一本取られた!」と感心させられました。
これには普段からドラマを観ているほうがショッキングさが上だとのWaoの言葉もあり、往年のドラマファンにはたまらないものなのかも。
Waoの感想でもありましたが、普段はいがみあっているあのイヤな捜査一課と、珍しくも共同戦線をはったりと、劇場版ならではのお楽しみもあり。
「劇場版ジャイアン効果」じゃありませんが、もし本作が好評で劇場版続編が作られたりしたら、捜査一課がまたいいヤツらになるのかもしれませんね(笑)。
鑑賞前に超映画批評さんのところで良くない評価を読んでしまいまして、多少警戒しつつ観にいったのですが、なんのなんの、ちゃんと面白いじゃないですか。
というか、期待して見るところが違うだけなのだと思いますが。特にわたしはテレビ版のファンというわけでもないので、ファンメガネもかけていないのでそう思えますね。
それこそハリウッド超大作のような期待の仕方こそできませんが、日本のテレビドラマスタッフが作ったものだと思えばこれはかなり満足のできるレベル。
とりあえずドラマを劇場版にしちゃいましたというお茶の濁し方ではない、本気で作ったぜイェーという気合を感じるものでした。
随所に「テレビ的」なカメラワークが目に付きますが、そのへんは大目に見て楽しめば、「おお、ちゃんと頑張ってるじゃないか」と。
超映画批評さんでは「必然性のないトリック」だと酷評されていたわけですが、私は最後まで観たらちゃんと必然性があると納得がいきましたよ。
最後の最後で犯人の動機が分かったら、ならばそうするよなぁ、そうでないといけないよなぁと、結構わたしはうなずけちゃったんですけどね。
まぁ、私が気づいていない破綻がどこかにあるだけなのかもしれませんが(笑)。
それより気になったのが、中盤のあの大爆発。
それこそ、"必然性"、" 理由づけ"がわかりませんでした。
まぁ、あの爆発のおかげで相棒らしい名シーンが生まれたのですから、そのくらいは構わんのですが(笑)。
ところでこの作品のパンフレットがなかなか面白い出来。
茶封筒に入っていて、その口が「開封厳禁」のテープで閉じられている形。
中身は二部構成になっていて、ひとつは作中場面のアルバムのようなありがちな一冊。
注目がもう一部で、こちらは「事件解決翌日の新聞」の形をとっているんですね。当然一面に真犯人の顔がドーンと(笑)。
間違っても鑑賞前に開封しちゃダメです。
「相棒新聞」と名乗るこの新聞が凝りに凝ったすばらしい出来なんですね〜。
朝日さんならではのサービスといったところでしょうか。
800円と、パンフとしてはちょっとお高めですが、鑑賞後のお楽しみにぜひゲットをオススメいたします。
余計なことですが、封筒はカッターなどで綺麗に開封したほうがいいですよ。
中身が新聞なので、あとあと保管に困りますから。
そんなこととは知らずにビリビリにひっちゃぶいてしまって、後悔している私からの忠告です(笑)。
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