丸々2巻にもおよぶ地獄の七十人斬りがついに終了。
ボロボロになりながらもなんとか生き残った武蔵に巨大な壁が。
そしておつうと又八にもひとつの転機が訪れる。
様々な意味でのターニングポイントとなる一冊か。
過去感想→ 26 , 27
ネタバレ注意!
まさに果てしないという言葉こそ相応しい、地獄の七十人斬りもついに終結し、一転して静かな一冊。
しかし、こんこんと眠り続ける武蔵の枕辺で語る又八、そしてそれを武蔵の布団にもぐりこんで盗み聞くかたちになるおつうなど、なかなか面白いドラマでした。
今ではこじれまくってしまった又八とおつうのふたりですが、枕辺でのこの幕間劇のおかげで、おつうも又八をちょっとだけ許すことができたのではないでしょうか。
又八って、とことんダメなやつですよね。
何度も改心しては、そのたびに挫折しちゃうし。
今度こそ? と期待するたびに読者として何度裏切られたことか(笑)。
初心はとてもいいのに、なんでいつも、途中で卑怯、卑屈、嘘、逃げに走ってしまうのでしょうか。
根底にある原因は、武蔵に対するコンプレックスなのでしょう。
今回は眠り続ける武蔵と向き合うことで、そんな自分と正面から向き合うことができたのではないでしょうか。
(俺は 強いお前が怖くて 疎ましくて
そして 大好きだ)
ここはかつてない素直な又八で、なんだかすがすがしい風が通り抜けるような心地でした。
おつうに「何か変だよ」と言われた前髪とモミアゲも落として、別人のようになった又八よどこへゆく。
この「改心」がホンモノだといいのですが。
又八、いつものパターンでまた途中でおかしくなっちゃうんじゃないの? って思っちゃいますよね。
いやいや、今度こそ頑張れ又八!
起き上がった武蔵に突きつけられる無情な事実。
足が思うように動かない!
今まで、剣一筋に生き、それしか己の価値を見出せなかった武蔵にとって、これはあまりにも残酷。
まさに死刑宣告。
しかし、沢庵和尚がそれをあえてつきつけるのもまた、武蔵を思ってのこと。
我々はすでにこの武蔵が、足の傷から立ち直り、巌流島の決闘に至る事を知っているわけです。
なのでこのくだりにはあまり緊張感を覚えないわけですが、それでも武蔵の苦悩、沢庵和尚の深い思いを想像するとなかなかに重いエピソードです。
武蔵がこのどん底からどのようにして這い上がってゆくのか、その過程に興味をひかれます。
ところで、この巻で私がちょっと気になったのは、おつうの顔の変化でした。
ひさびさにたくさんおつうが描かれたから気づいたってだけかもしれませんが、以前のおつうとかなり変わってますよね。
大きな違いは、鼻すじ。
かなりくっきり強調されるようになっただけじゃなく、鼻から額にかけての線がとても高い位置に描かれるようになりました。
日本人離れした彫りの深い印象になっているんですね。
まだその描き方もちょっと不安定な感じがして、おつう像もひとつに定まらない感じがするのですが、まだ井上雄彦先生も模索中の描きかたなのかもしれませんね。
画力の高みにありながら、なお変化しようとする井上先生、貪欲な人だなぁと思いますよ。
しかし、なんだかあまりにも吉岡道場編が壮絶すぎて、終わった今はスポーンと緊張感が抜けてしまったような感じです。
放心したような感じといったほうがいいんですかね。
さぁ次はどんな話が待っているのでしょうか。
次の巻がまた待ち遠しい。
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