緊張の展開や謎に満ちた世界観もさることながら、雨宮をはじめとするキャラクターたちの魅力がやっぱり秀逸。
まとめて読むと「やっぱり面白いなぁ〜」と再認識させられます。
「助けて」
そう言葉を残し、雨宮桜子は姿を消した。
夜科(よしな)アゲハは彼女を捜すため、連続“神隠し”失踪事件に関わる都市伝説「秘密結社サイレン」へとアクセスする。そしてアゲハの命を懸けたゲームが始まった!!(裏表紙コピーより)
気になる(色んな意味で)痛々しい少女を救うため、危険な世界に足を踏み込む少年。
そして謎の赤いテレホンカードと秘密結社という都市伝説。
神隠し、5億円の懸賞金などなど……、私なんかは大好きなモチーフがたくさんつめこまれた第1巻。
物語の冒頭としてはこれはかなりよくできているなぁと感じますね。
このあたり、打ち切られたとはいえ一度連載を経験している岩代先生ならではの、失敗を経験に活かしているところを感じます。
第1話の、夜科アゲハがサイレンに足を踏み入れるまでの自然で無駄のない流れがまずすばらしい。
アゲハを半ば強引に運命的にサイレンに投げ込む流れでありながら、動機は雨宮を救うためと、しっかりと提示されています。
そしてアゲハをサイレンに追い込む形となる謎の男達という、今後の伏線もしっかりと張っている。
また今後への伏線と思わせる単語がちりばめられていたことも、読み返してみて改めて気づかされました。
冒頭、アゲハのモノローグの「隕石」と言う言葉は、もしかすると大胆な真相の伏線なのかもしれませんし、「アンケート」の質問事項も、いくつかは何かの核心をついているのかもしれません。
またなにより、サイレンに踏み込んだあの瞬間のドキドキ感は、読み返してもやっぱり凄くイイものがありますね。
ヤベェなんか凄いとこに来た! って感じがビシビシ伝わってきます。
また、そこからの展開もよくできている。
欲望に突き動かされてぶつかりあう人々。
予想外の事態にまきこまれ、次々と死んでゆく人々。
少年達の意地の張り合いとすがすがしいスジの通し方。
理不尽な死と、理不尽な現実。
つぎつぎと事態が展開し、問題が巻き起こったかとおもうとグシャリと潰されて、また次に予想外の事実がつきつけられる。
このジェットコースター感覚がとても気持ちいいですね。
夜科アゲハの、焦りや苦痛やジレンマを一緒になって体感できます。
よくよく考えられた展開だと思います。
そういう作品的な面白さもさることながら、しかし、このマンガのとびっきりの魅力と言えば「雨宮桜子の壊れっぷり」と言っても過言ではないでしょう(笑)。
雨宮の壊れたシーンがくると、その破壊力の高さに改めて圧倒されます。
「…教えてあ――…げ…ないッ…!!」
に始まる、あのシーンはインパクト極めて大!
この巻最高の名シーンかもしれません。
壊れた少女の怖い表情というインパクトを先にもってきて、実はその裏に、これまで必死に孤独と戦ってきた少女の悲惨なみちのりを匂わせる上手さ。
雨宮は誰も守ることができなかった自分の非力さを責め、誰も自分を信用してくれなかったことを恨み、捨て鉢になりかけている極めて危うい状況になりかけているんだけれども、そういうふうになってしまうっていうことが、いかに雨宮が本来は「人のことを大切に思う優しい少女」であるのかを物語っているわけですよね。
自分が生き残ることだけに必死になるタイプであれば、そういうことに傷つくこともないわけですから。
そういう雨宮の本当の優しさ、そしてそれをズタズタにしてしまったこの世界の非情さを感じ取り、アゲハは
(……頭の中で …何かが弾けた)
と奮い立つ。
これはちょっとこっちまでグッと来てしまいます。
また他にも、「フフ…知っているに決まってる…!! なんでもクソもない…!!」とか、「へええぇ〜〜〜 じゃ ここにいなよ… えいえんに…」の怖いシーンも収録。
この壊れっぷりはお見事。
今年のジャンプに生れ落ちた、最高にかっこいいヒロインですよ(笑)。
物語としても、とても綺麗なところで1冊が終わる実に完成度の高い第1巻。
これは上手い。
手直し部分としては、「あの山」のトーンが若干濃くなって、さらにソレっぽくなった気がします。
連載時はちょっとソレと断定していいのだろうか? と、一見疑問の残るフシもありました。
ほかにもいくつか加筆訂正があるかもですね。
装丁はしかし、なにやら地味。
表紙はとても美しいのですが、背表紙側が沈んでます。
本屋で山積みじゃなくて棚に刺してあったので、背表紙だけでは探しにくかったですよ。
2巻以降、各巻色が変わるのかな?
さて、2巻ではあの「どこでもいいから私の体にタッチしてみて」が来るわけですね(笑)。
いやいや楽しみだ(爆)。
サイレン、今ジャンプでイチオシの漫画です。
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