1997年公開のイタリア映画。アカデミー外国語映画賞など多くの賞に輝く名作。
強制収容所に入れられた父親が、子供を不安にさせないために「これはゲームなんだ」と嘘をつき通す。
抜群のユーモアと悲劇的なストーリーの見事な融合。優しさに満ちあふれた感動の名作です。
「子供+感動」の映画が大好きな母親のため、借りてきました。
北イタリアの田舎町に引っ越してきたグイド(ロベルト・ベニーニ)は、口から出まかせで人を楽しませる天才。ふとしたきっかけで知り合った小学校教師ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に強引にアタックをかける。ふたりは急速に惹かれあい、駆け落ちのように結婚。ひとり息子ジョズエ(ジョルジオ・カンタリーニ)をもうける。
だが、時代はどんどんきな臭くなってゆき、駐留してきたナチスによって彼らは強制収容所へ送られてしまう。母ドーラと離れ離れにされてしまったジョズエを不安にさせないため、グイドは素敵な嘘を考案する。
「いいかいジョズエ。これは誰もが参加したがる凄いゲームなんだ。泣いたり、お腹がすいたとか言ったり、お母さんに会いたいとか言ったら即失格。お家に帰されちゃうんだ。だけどジョズエがいい子にしていたら、ポイントがもらえて、1000点たまったらジョズエが大好きなホンモノの戦車に乗ってお家に帰れるんだよ」
前半はグイドのサクセスストーリー的なラブストーリー。
言うことなすこと陽気でウソばっかりの、実に憎めないグイドの魅力がたっぷり。
このひと、ただの嘘つきじゃなくって、非常に頭の回転が速く、機転が利いて、人を楽しませる天才なんですよね。
このコメディパートのあまりの楽しさに、この物語がどんな話だったかすっかり忘れてのめりこんでしまいました。
そして突然やってくる急展開。
ナチスによる強制収容所送りです。
ここはあまりの落差に愕然とさせられます。
しかし、話は暗くならずにつとめて明るいのが素晴らしい。
息子ジョズエのため、精一杯陽気に振舞い、不安にさせないようにウソをつき通すグイドがとてもまぶしい。
そんなウソはすぐにでも崩壊してしまいそうなのに、このグイドはそんじょそこらの嘘つきじゃない。
こんな極限状態で次々つじつまを合わせてしまえる大天才なんですね。
機を見るに敏。
大胆な発想力と、行動を恐れない勇気もある。
まさにスーパーマンパパ。
愛する子供のため、愛する妻のためならどんな事だってできちゃうんですね。
ブルース・ウィリスみたいにタフでもないし、トム・クルーズみたいにカッコよくもない。
まぬけな感じでニヤニヤした、どこかしら哀調のあるやせっぽちのお父さんですが、誰よりも頼れるし誰よりもくじけないし、そして誰よりも優しい。
この最高のお父さん像には、涙が出るほど憧れを感じます。
同時に切なくなるほどの感動。これは言い尽くせないものがあるなぁ。
また子供のジョズエがこれまた無邪気でかわいらしい。
一緒に観ていた母親はジョズエにメロメロだったようです。
かといってやっぱり舞台はナチスの強制収容所。
ご都合主義、楽天的になれる物語ではありません。
凄惨で、悲劇的な背景舞台はかわりない。
ジョズエの目線には極力入らないようにして、そういった恐ろしさも描かれていきます。
霧の中でグイドが偶然見てしまう「死体の山」は、あまりに恐ろしく印象的なシーンでした。
そういった恐ろしさをしっかり描いているからこそ、お父さんの陽気なウソが引き立ち、観客の心を打つのでしょう。
このすばらしいグイドを魅力たっぷりに演じるロベルト・ベニーニは、イタリアの有名なコメディアンらしいのですが、なんとこの作品では監督・脚本もこなす八面六臂の活躍。
わたしは特にこのきわめて完成度の高い、無駄のない脚本にシビれてしまいました。
前半のグイドとドーラのデートシーンは最高のからくり。
ちょっとしたジョークのシーンが伏線となってて、忘れた頃に手品のように帰ってきてグイドとローラを結びつける。
最高に楽しくなれるいいシーンです。
このサーカスのような素晴らしい脚本には「映画ってやっぱりこうでないとな!」と改めて思っちゃいます。
またこのコメディ部分のやりとりが、ちゃんと後半への伏線になっていたり、後半のサバイバルの重要な手がかりになっていたりと、どこまでも無駄がありません。
実はロベルト・ベニーニの父親が2年ほど強制収容所に入れられた体験者らしく、ベニーニはこの父親をモデルにグイドを描き、自分をジョズエに投影したようなのです。
ベニーニ自身に強制収容所体験はありませんが、敬愛する素晴らしいお父さん像が、この作品だったのですね。
彼の父への熱い思いが伝わって来ます。
この優しさあふれる感動作には、本当は満足度98点くらいあげたいところなんですが、残念だったのはドイツ人医師の扱い。
個人的に政治的なものを感じてしまったので2点マイナスです。
イタリア人が持つドイツ人への感情が垣間見えた気がしたのですが、そういうのはこの映画には邪念のような気がしてしまったのですね。
まぁでもあの人がああでなければ、この映画もああいう素晴らしい結末にはならなかったわけで、必要悪なのかも知れませんね(えらくボカした文だw)。
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