これに対し、中国が憂慮を示しているってことなんですけど、あれ?
なんかおかしくないですか?
いろいろツッコミどころがありそうな話です。
米国の衛星撃墜、中国が憂慮示す
【北京=佐伯聡士】米国が偵察衛星をミサイルで撃墜したことについて、中国外務省の劉建超・報道局長は21日の定例会見で、「我々は、こうした行動が宇宙の安全と他国にもたらすであろう損害を追跡しているところだ」と述べ、憂慮を示した。
その上で劉局長は米国に対し、国際義務を適切に履行し、必要な状況説明や関連データ提供を迅速に行うよう求めた。
有人飛行や月探査衛星などの打ち上げを次々に成功させ、米露に迫る「宇宙強国」を目指す中国は、今回の衛星撃墜により、宇宙軍事技術で圧倒的優位に立つ米国がさらに技術開発に弾みをつけると見て警戒を強めており、これをけん制するものとみられる。
軍事的能力の向上には宇宙開発が不可欠で、宇宙を制する国だけが軍事的主導権を掌握することができるというのが中国の本音だ。
中国は昨年1月にミサイルによる衛星破壊実験を行ったが、戦略目的など具体的な説明をしないまま、「宇宙の平和利用」を主張した。
この破壊実験では、高度850キロ付近の軌道上で多数の破片が発生。米国の科学者団体は「衛星に当たると破壊力のある1ミリ以上の破片が200万個発生し、10年以上漂い続ける」との試算を発表した。
(2008年2月21日22時16分 読売新聞)
記事中にあるように、昨年中国は自国の衛星をミサイルで大気圏外において破壊する実験を成功させたって、大々的にやってましたよね。
あれも、「宇宙の安全と他国にもたらすであろう損害を追跡」してやった実験なんでしょうか。
なんか言動に整合性があるように聞こえません。
まぁでもそれはそれ、表向きと裏とでは違う顔があるんでしょうからいいとして、米国もなんだかサラリとおっかないことをやってのけたなぁというのが私の思うところ。
有害な物質が含まれた燃料が地表に到達することを危惧して行われた措置らしいのですが、だとすると破壊された衛星から飛散した有害な物質は、大気圏に分散して有害な効果を及ぼさないというデータはしっかりあるのでしょうか。
アメリカはそれを開示する義務が、世界にあるのではないでしょうか?
また、衛星の破片が飛散して地表に降り注がれる懸念が、実はカナダやアフリカ南西部にあるという情報も。
このような国々に対し、安全なら安全であるという説明責任もあるのではないでしょうか。
そういった点では、中国の「(米国が)国際義務を適切に履行し、必要な状況説明や関連データ提供を迅速に行うよう求めた」という主張は至極もっともだと思うのです。
今回のスパイ衛星が操作不能に陥った件が、アメリカの軍事的な実験だったとかいうロシアや中国の懸念もわからないでもありません。
しかし、そこまで急いでやらなくとも、アメリカには困らないだけの地盤があると思うのでこれはリアリティは感じないのです。
もしそうなら、操作不能に陥るという失態をベースに行われる実験となりますから、軍事的パフォーマンスとしてはプラスマイナスどっちかわからないんじゃないのか?という部分もあると思うのです。
昨年の中国の実験に対する示威行動説というのも、なんだかリアリティを感じないくらいにはアメリカの軍事的技術力の評価は高いものだとおもうのですよ。
もし今回のスパイ衛星の操作不能状態が事故のように突発的なピンチで、色々と考慮手配している時間がなかったための緊急措置だったというなら、このアメリカの独断的ともとれるなさりようも分かるのですが。
悩んでいるうちに手遅れになる危険があるなら、高度な政治的判断でやっちゃえ〜ッって事だったら、まぁわかるんですよね。
しかし、もうちょっと余裕があったんじゃないのかなぁ。
もうちょっと、他の国に対して配慮があっても良かったんじゃないだろうかと思えてしまいますよ。
私の好きなSF漫画「プラネテス」に次のようなセリフがあります。
「ケスラー・シンドローム。加速度的にデブリ(宇宙のゴミ)がデブリを生む現象だ。秒速数kmの運動量でデブリと衝突した人工天体は無数の破片を生み出す。
その無数の破片がさらに他の人工天体と衝突する。
そうやってどんどんデブリが増殖していくんだ。
ひとかけらのデブリが数億のデブリを生むきっかけにもなる」
(第1巻 PHASE.3より)
プラネテスでは主人公達はいつ果てるともないスペースデブリを回収する宇宙の掃除屋となってあくせく働いているのです。
自国の勝手な都合でちょっと間違えば、衛星軌道はひとくくりに大変なことになってしまうかもしれない。
衛星軌道に国境なんてないんですよね〜。
所詮漫画の絵空事と笑われそうですが、実はこのケスラー・シンドロームの提唱者は、NASAの実在の人物ドナルド・J・ケスラー(Donald J. Kessler)なのです。
リアルな可能性を持った話なのですよ。
アメリカの偉い人にも、中国の偉い人にも、プラネテスを読んでもらいたいものだなぁ〜なんて思っちゃったニュースでした。
●サイエンス・シミュレーション 人類 火星に立つ」− 第1集 ドラマ〜2030年 史上最も過酷な旅 −
……という番組ですが、2030年、アメリカ、日本、カナダ、ドイツ……など6カ国共同で火星に行くプロジェクトの話なのです。
この話の中で、今から、たった20年ぐらい先の予想の中で、同時期に中国は単独で無人宇宙船を火星に到着させ、6カ国共同の有人火星探査よりも早く水を掘り当てているんです。
NASAの協力を得て制作されている、同ドキュメンタリー……その中で中国の技術力は、そのぐらい進歩していると予想されている……という点で、私は驚きましたが……(だって、「先行者」のイメージが……w)
案外、この話からすると、中国とアメリカの宇宙開発にける技術力の差は急速に縮まっているのかもしれませんね。
アメリカが、ヒタヒタと静かに近づく脅威の足音を感じ取るぐらいまでには……
観たかったなぁソレ。
一昔前の「中国」っていうイメージはもうかなりの部分で変わってきているんでしょうね〜。
ひとつには一党独裁体制による強いリーダーシップが、軍事面など重点を絞った強靭な推進力となっているんでしょうね。
そのパワーは、日米欧には真似できないものがあるんじゃないかなぁ〜。
一党独裁はうらやましくないですけどね。
アメリカと中国とEUが宇宙開発でしのぎを削りあう、そんな時代がもしかすると来るのかもしれませんね〜。