2008年02月13日

アニメ感想 NOIR 15〜26話

 終末的雰囲気漂う犯罪映画風ガンアクション「NOIR(ノワール)」
 一気に26話、最終回まで見終わりました。
 非情に印象的ないい演出をしたかと思えば、物凄いトンデモアクションまでやってしまう、そんなアンバランスさも魅力?
 ラストはなかなか染み入りますね〜。

過去感想→1〜7話 8〜14話

ネタバレ注意!



 次第に世界の闇にうごめく巨大組織「ソルダ」がその全貌をあらわし、霧香のみならずミレイユまでも実は深く関係していたのだとわかる中盤。
 ソルダ内の勢力争いもからんできて先の読めない面白さがありました。
 こういう敵組織内での内部抗争は好きなお題です。

 この作品をオススメしてくれた友人DRRイチオシは香港編、第15話、16話の「冷眼殺手」だったのですが、どれどれと見ていてビックリ。
 毒の爪を武器とした冷徹な女暗殺者との緊張感高まる死闘がそれまで描かれて、さてどんな決着がつくのかと思いきや、最後はあの階段での銃乱射での決着!
 それも両手に拳銃持ってただ乱射するだけという、お前はスーパーロボットか!という凄いインパクト。
 いや、そんなちょっとオバカっぽいところも充分面白かったのですけれども。

 え?ツルハシ?
 あれはカッコイイですよ。
 使いにくいツルハシの切っ先をぴったりグレートソードの刃に当ててはじくなんて、どんな達人なんだよと!
 あまつさえ振りの速さで勝っちゃうし!
 ちゃんと高橋由伸ばりに腰で振ってるところが凄いのですよ(タブン・・・)。
 そのあと奪ったグレートソードをあんな小さい体でブン回すのも凄いw
 絶対に必要筋力度足りてなくて命中判定−20%くらい入ってるはずなのに(爆)。

 まぁそんな「オモシロ」もたまにありましたが、全体としてなかなか印象的ないい演出が多かったですね。
 私のイチオシは第23話「残花有情」
 「ソルダ」の中でもアルテナ派と対立し、また絶対多数を占める派閥幹部の一人との、緊張感溢れるミレイユの接触。
 狙撃班が見つめる中での幹部との取引は、長い沈黙が効果的に使われた名場面。手に汗握るいいシーンでした。
 この話はまた、霧香が残した手紙も泣かせるのですな。

 徹底して最初から霧香が殺し屋ナンバーワンで、ミレイユはそれに大きく劣るという演出がされてきましたが、ミレイユの荘園突入からの大活躍は眼を見張るばかり。
 人間死ぬ気になったらスペック飛び上がるわけですよ。
 霧香vsミレイユ戦は見ごたえ抜群の名勝負。
 お互いの手口を知り尽くした友と友の死闘というわけで、一切セリフで説明しなくてもなんとなく「読みあい」が伝わってくるのが面白い。
 ミレイユは霧香が高いところ登るのが大好きだっつーの知ってたから最後読みあいに勝ったわけですよね。

 にしても霧香はどんどん高いところに登るなぁ。

 敵と遭遇→敵振り向く→霧香いない→背後の木の上から登場、バンバン

 が、お決まりの得意技でしたけど、ミレイユ戦でついに軽く5mはあろうかという遺跡の梁に登ってしまいました。
 お前は一瞬でどうやってそこまで行ったんだと(笑)。
 放っておいたらエッフェル塔でも一瞬で登っちまいそうです。

 クロエのラストは哀れでしたねぇ。
 見た目に似合わずといったら失礼ですが、クロエはなかなか純情でポジティブで夢見る感じの女の子でしたからねぇ。
 なんだか余計に哀れです。
 最後は嫉妬に狂い、霧香に裏切られたことを悲観しての悲劇、のように見えますが、私はそうではないと思うんです。
 彼女には、本来ならいろんな選択肢があったはずなのに、アルテナによって「ノワール」という呪縛をかけられていたからこその結末と受け取れました。
 小さな頃からアルテナの掌中で育てられたことで、クロエは「ノワール」という枠内でしか判断材料を持たず、人と人との関係を「ノワール」としてしか考えられなかった。
 それゆえクロエは、選択肢を失ったような錯覚をしてあのような悲劇へと突っ走ってしまったのではないでしょうか。
 悲しいことにクロエが持つことが出来た幸せは、「奇妙なお茶会」で貰ったフォークに象徴されるように、誰もが見向きもしないようなこと。
 それですら幸せな想い出にできてしまうくらい、クロエっていうのは普通の生活からかけはなれた生き方をしてきたんですね。
 憎いのはアルテナだと思うのですよ〜。

 ここで霧香がまた興味深い。
 初めて彼女は人のために泣くことが出来たんじゃないでしょうか。
 13話「地獄の季節」において、ミロシュの死に際しても涙を見せなかった霧香です。
 あの時霧香は泣くこともできず、ただ何も考えることもできずに朝を迎え、その様子は混乱のきわみのようでした。
 あの時点ではまだ、人のために泣くことが出来なかった霧香です。
 思えばシリーズ当初、彼女は人殺しが出来てしまうのに、それが悲しくないと言って泣くというとても奇妙な嘆き方を見せましたね。
 矛盾しているようですが、人のために泣けない自分が悲しいというのは、霧香はすっかり心を閉ざしてしまっていたわけですね。
 記憶を失い、自分が誰なのかも分からなかった霧香は、他人に眼を向けられるほどの余裕もなく、本質的に興味も沸かなかったことでしょう。
 その霧香が、ミレイユというかけがえのない友を得、ミロシュをはじめたくさんの人々とすれちがい、部分的にせよ記憶を取り戻し、そして最後にクロエを殺害してしまうことで、ようやっと「人のために泣ける心を取り戻した」のだと思うのですよ。
 飛躍するようですが、つまりはやっと「人となれた」。簡単に言えば、やっと「心を自由にできた」のですね。
 ミレイユにせよ、霧香にせよ、彼女らはどんなに懸命にもがこうが、かたや家族や周りのものを操られ、殺され、かたや記憶を奪われ、身体的にも精神的にも自由ではなかった。
 二人の物語は、過去への巡礼を果たし、呪縛から脱することで心の自由を目指した物語だったんですねぇ。
 対照的にクロエは、自由というものを最初から知らなかったという意味で、とても憐れな存在だなぁと思うのです。

 そしてラストシーン。
 響き渡る2発の銃声は、ふたりの末路を示しているのでしょう。
 しかし、そういう末路をたどることになると、充分覚悟しての二人の旅立ちだったはずです。
 むしろそれをこそあえて選んだふたりには、充分幸せだったと思いたい。
 悲しく穢れたどうしようもない世の中という悲観的な世界観のなかで、もがき苦しみながら本当の自由を得ようと戦った二人の物語は、ここに形の上では「敗北」の結末を迎えますが、精神的には気高い「勝利」と思っていいでしょう。
 魂よ安かれ。
 なかなかに美しい〆でした。
posted by BOSS at 23:18| Comment(12) | TrackBack(0) | ドラマ・アニメ感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 うーっす、おつかれー。
 つーか、15〜16 話はべつにイチオシじゃねっすよ!? 「笑え」ですからw
 まぁツルハシはマジオススメでしたがw つーかツルハシの回がかなりベストエピソードでござんす。
 クロエの件は、あの段階ではネタバレになる(そもそもクロエ登場前だしなw)ので云えなかったんですが、「私だったのに! 私のはずだった!」は刺さるよねぇ。
 そして最萌えは黒霧香だと思うのですがいかがでしょうかw 黒霧香大暴れで流れる BGM「killing」の圧迫感が素晴らしいのでありますよ。
 音楽的には、「殺しのテーマ」salva nos が最終回に長尺で流れるのが激アツだと思います。そして、最終回といえば、主役クラス以外で作中最強の「頭上から下突きで登場→ボディーアーマー着込んで剣で銃相手にトツゲキ」が素晴らしく熱かったよね! と妙な同意を求めてみる次第w
 ラストについては解釈は分かれるんじゃないかなぁ。わしも初めて見たトキはそう思ったんですが、その後通しで見返したときに、違うんかも? ってな疑問が芽生えたりとか。
 ま、語られてないので観る側に任されてるんでしょうな。
Posted by DRR at 2008年02月16日 18:48
 仰るとおり、音楽面のパワーがかなり熱い作品でしたね〜。
 前半部はその音楽のパワーに画像がついていけない部分も少々見受けられましたが、最終回付近の盛り上がりはさすが。

 そしてクロエ、いい子だったなぁ〜。
 哀れでしたわ。

 時代錯誤じみたボディアーマー&剣はなんか妙な熱さがあったね。
 殺しに美学を感じますw

 ラストの銃声は、少なくとも「あの瞬間」を示しているのではなく、彼ら二人の「この先の宿命」を暗示しているのだと思うのですよ。
 それが分かっていて、その上での闇世界からの決別だったから、とっても素晴らしいんじゃないかな〜なんて勝手な解釈をしてみました。
 逆にあれで生きていたら、個人的にはなんか嫌なんだよなぁ〜。暗い作風が一気に能天気になってしまいそうで。
 そんなサディスティックな私ですw
 仰るとおり、明らかな描写でないのは受け取り手に解釈を委ねているんでしょうね。

 いやしかしなかなか良いものを紹介ありがとう!
 オモシロかった〜。
Posted by BOSS at 2008年02月16日 19:10
こんにちわ!
中1なのに、何故かノワールを知っている、
まりぃともうします。

私の一番お気に入りの話は、25話です。
霧香とミレイユの銃の向け合い!!
あそこは、本当に感激(?)でした。

2部作は出ないのでしょうか…。
Posted by まりぃ at 2008年12月24日 13:41
 いらっしゃいませ。
 中一でノワールを楽しまれたその趣味のよさがうらやましい(笑)。
 25話、あれは最後を飾るにふさわしい大熱戦でしたね〜。

 続編は……どうなんでしょうね。
 出るとしたら主役を代えて、まったくの新キャラにして、霧香たちは伝説の殺し屋としてチラッと話に出てくるだけとか……最終回にちょっとだけ出てくるとか……そういうのが面白いですかね(笑)。
Posted by BOSS at 2008年12月24日 23:54
私はケーブルテレビでたまたまみつけて、「なんか面白い!!」ということではまっていったのです…。

続編でたらいいですよね〜♪
主役を変えるの、いいと思います!
あ、ミレイユの子供…とか??
Posted by まりぃ at 2009年01月06日 12:12
 なるほど、その手がありましたね。
 しかも母親ミレイユが失踪して、それが物語の発端とかだとオモシロそうですなッ。
Posted by BOSS at 2009年01月06日 21:11
 ふむ、母親がミレイユ、となると、父親は霧香ですか。
 ……。
 …………あれ? 何か間違ったか?
 母親が霧香で父親がミレイユ?
 ……うーん、なんか違うような気もするんだけど、どこがおかしいんですかね?
Posted by DRR at 2009年01月08日 23:42
病院行って来ーーーい!!
Posted by BOSS at 2009年01月10日 00:24
ほぅ、失踪ですかー。
面白そうですねー。

DRR様
父が霧香…はさすがにあり得ないのでは…。
でも、ミレイユならなんかありそう。
Posted by まりぃ at 2009年01月10日 10:29
 落ち着いてまりぃさん!
 DRRに毒されないで〜ッ!(笑)
Posted by BOSS at 2009年01月12日 23:24
 わははは、電波が感染しましたなっ。
 しかし、そうなると、やはりクロエが喪われたのは痛い……。
 (そうなると、って、どうなるとだ?)
Posted by DRR at 2009年01月13日 23:47
あれま、私、病気に…。
というか、ノワール知ってること自体がアレなのでは…??
たしかに、クロエがいないのはさびしいですよね…。
Posted by まりぃ at 2009年01月17日 14:12
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