現在公開中の続・三丁目の夕日が随分人気ありますね〜(そろそろ公開終了?)。
そいじゃ前作を観てみようというわけで借りてきました。
家族3人で観たのですが、父親と母親はご満悦。
昭和33年の東京の下町を舞台に描かれた、人情味豊かな心温まる感動のドラマ。
青森から集団就職で東京駅に降り立った六子(むつこ)(堀北真希)は、東京の大工場に就職したと大喜び。社長(堤真一)自らの出迎えに、仲間達も社長秘書にでもしてくれるのではないかと盛り上がる。だが、いざ鈴木オートというその会社についてみると、そこは工場とは名ばかりの下町の小さな工場(こうば)。六子の東京生活は波乱で幕をあけた。
また、鈴木オートの真向かいの駄菓子屋をいとなむ小説家志望・茶川竜之介(吉岡秀隆)は、居酒屋の美人女店主(小雪)のお色気にほだされ、酒の勢いで縁もゆかりもない子供・淳之介(須賀健太)を預かることになってしまう。
鈴木オートと青年・茶川を中心に、夕日町三丁目の心温まるドラマが始まる。
戦後復興後の力強い下町の生活感を、模型やVFXを駆使して非常に美しく再現してます。
欧米人はVFXを使い、SFやファンタジーの大作を次々と生み出していますが、日本人ならではの武器がここにあったという発見ですね。
そうか、日本人はこういう勝負のしかたがあったんだと。
全編とにかく懐かしさのかたまり。
次々と描かれる「あの時代ならではのもの」にとてもひきつけられます。
私のような世代には、これもまたファンタジー。
ラジオからテレビへ。
氷を入れて冷やす冷蔵庫から、電気冷蔵庫へ。
時代を象徴するような物の変化がとても興味深い。
現代のように便利な科学を否定するような価値観はまだなく、便利なものに希望を見出すとても明るい時代なのです。
貧しく、苦しい戦後を乗り越えた世代だからこその希望なのです。
一緒に観ていた両親は、何か出てくるたびに「ああ、そういえばこの頃はこんな冷蔵庫使ってたのよね〜」とか、「そうそう、みんなで集まってテレビ観たもんだ」とか言って、かなり楽しんでいたようです。
あの時代を生きてきた世代にとって、これはもうたまらない作品でしょう。
言ってみれば、戦中世代の無敵作品が「火垂るの墓」だとすると、これは戦後世代のそれになる可能性がありますね。
かといって時代考証がしっかりと忠実に作られているわけではないらしく、父親いわく、「あの時代、ここにこんな下町はなかった」だとか「この通りは当時こんな建物でビッシリじゃなかった」とか、けっこう重箱つついていました。それもまた楽しかったようではありますが。
つまりは、あの時代のイメージの最小公倍数的世界といった感じなのでしょう。
誰もが共感できる、誰もが歩んできた「あの時代」を舞台にしたということなのだと思います。
鑑賞後にふと気づいたのですが、この作品、おじいちゃんおばあちゃんがほとんど登場しませんね。
主人公の家族は父母子の3人。まるで現代の核家族状態。
そのほかの登場人物は、むしろ家族のいない孤独なひとたちばかり。
基本的にみんな「寂しい人たち」なのです。
そのかわり、ご近所さんたちの結びつきがとても強い。
テレビが来たとなるとご近所みんなで集まって大騒ぎし、医者の家庭の悲しい事情は皆の公然の秘密。
金が足りなきゃお隣さんに借りて、クリスマスには素敵な共同戦線。
現代の東京ではとっくに失われてしまった、あたたかく生命力に溢れた地域社会がそこにはあります。
この作品では、あえて家庭の物語を省略することで、夕日町のみんなのむすびつきをこそ描いたのだと、そう解釈できます。
悪い人は結局出てこない。
みんな、どこにでもいる普通のいい人たち。
貧しく素朴だけど、心あらわれる素敵な物語です(あ、ちょっと悪いひとは金持ちでしたねw)。
ふたつの物語が終盤たたみかける感動は、素直すぎて逆にジーンときます。
観終わって、とてもすがすがしい気持ちが胸に残りました。
現代人が無味乾燥な日々の生活に追われて忘れてしまった優しさを取り戻したくなる、そんな一本です。
前作のレビューも書いておられるのですね。「人」というもの、「人の接点」というものを敏感に捉えていらっしゃるのですね。勉強になります。ヒロミと茶川のあのデレデレとしたシーン、何回観ても笑ってしまいます。小雪さんのウィスキーのCMが好評ですが、いつもALWAYSを想い出してしまいます。お酒つながりで。
小雪さん、綺麗でしたね〜。
なんというか、古い和が似合うんですよね。
キラキラばかりしてない、ちょっとしっとりしたところがいいんでしょうかね。