2008年01月09日

読書感想 そうだったのか!ニュース世界地図2008

 池上彰「そうだったのか!」シリーズ。
 今回は世界地図で見る「世界の現在」
 2008年のための地球解説、ニュースがもっとよくわかるといううたい文句の一冊です。



 国際ニュースを聞いていても、「あれ?グルジアってどこの国だっけ?」とか「ぬー、コソボってどのへんだったっけかな〜」とかいう事ってありますよね。
 なんとなく大変なことが起こってるっぽいとはわかっても、その周辺状況とか、その事件がじゃぁその後どういう影響を及ぼしそうなのか、そういうのってさっぱりだったりします。
 そういうトコがわかんないと、次第にニュースに無関心になっていき、しまいには国際情勢ナニソレーってなっちゃうわけです。
 それじゃぁいけないですよね。
 嘘か本当か知りませんが、アメリカのアフガニスタン攻撃が始まった頃、アメリカの大学生に世界地図を見せて、エジプトはどこですか?って質問したら半分も答えられなかったと聞きます。
 そんなことでは未来は不安ですよね。


 この本は、国際情勢初心者だけど、ちょっと興味があるよーっていう人にぴったり。
 現在の国際情勢、紛争、経済問題などをシンプルに57の項目にわけ、それぞれ大きく見やすい地図入りで解説しています。
 人って不思議なもので、「グルジア」と言われるだけより、「グルジアはここ」って地図で指されたほうが頭にインプットされやすいものなんですよね。
 地図と記事がセットにされたこの作りはなかなかわかりやすくていいです。
 ニュースを聞きながら、その傍らにこの本を置いておくとかなり便利かもしれません。


 まず驚いたのは、冒頭の「世界の紛争地と難民数」の記事。
 世界地図に紛争地と難民数が、そのスケール別に色分けされて記されています。
 代表的なところをピックアップしていきましょう。
 身近なところでは、「中国14.0万人」「ロシア15.9万人」
 間近にこれだけの難民がいるということに驚きます。
 まぁどちらも国土が広大ですから、各地に散らばっているのでしょうが、しかし10万の難民というのを想像することができません。
 そしてアフリカでは、「コンゴ40.1万人」「スーダン68.6万人」
 ケタ違いです。
 で、さらにケタ違いなのが、「イラク145.0万人」「アフガニスタン210.7万人」
 そして「ヨルダン、レバノン、シリア、パレスチナ難民430万人」
 なんという数でしょう。
 もう私には「数字」としてしか頭に入ってきません。
 それだけの「人」が難民になっている状況が想像できないですよ。
 あらためてショッキングでした、これは。


 北極海の資源をめぐって各国が競争を始めているという記事は、そんなことやってたのかと、ちょっと驚き。
 温暖化のせいで異常な気候変動に戦々恐々とするだけが人類ではない。なんとそれを商売の種と目の色を変える人たちがいた。
 北極の氷がとけ、これまで採掘不可能だった地域の資源が有効利用できるかもしれないということで、ロシアはじめ各国が熾烈な資源獲得競争を始めているらしいのです。
 そんなニュース、少なくとも私は聞いたことがなかったですよ。

 インド、パキスタンやアフガニスタン、イラク、パレスチナなどの中東問題は、ここ数年のテレビ報道などで繰り返しミミタコ状態ですから大まかには知っていましたが、それでもシンプルにまとめてくれているのはありがたいですね。
 情報が増えると人間って混乱してどこが重点なんだかわかんなくなりますから、多少強引にでもシンプルに表現してくれると落ち着きます。

 最近キナ臭いスリランカや、ちょっとわかりにくい旧ソ連のチェチェン、グルジアあたりをおさらいしてくれたのもよかった。
 特にグルジアはちょうど今大統領選の結果が発表されようとしているところですからね。
 ロシアに対し強硬姿勢を示してきたサーカシビリ氏に本決まりになりそうですが、それが今後どのような波紋をおよぼすのか、この本を読んでなければ興味を持って聞けるニュースではなかったでしょう。

 ブッシュ政権が迷走する間に、中南米にキューバ・ベネズエラ・ボリビアの「善の枢軸」が結成されつつあるという非常に興味深い話もありました。
 また、キプロスやベルギーの分裂、スペイン北部バスク地方の現状など、あまりニュースにのらない情報もフォロー。
 最後のパート、アフリカ編では、2010年サッカーワールドカップ開催国、南アフリカ共和国の非常に危険な治安状況を紹介。
 そして虐殺の続くスーダンのダルフールと、それを後押しし続ける中国という大きな問題提起もありました。


 ひとつひとつの記事は非常にシンプルで、肉をそぎ落としすぎのきらいもありますが、それによってかなり素人がとっつきやすくなっています。
 ニュース素人オススメの一冊です。
 著者・池上彰氏の筆致が、とても平易な文体で、かつ、毎度の事ながらあくまで中立的な立場を貫こうとしているところも読みやすくて好感が持てます。
 それでもこういったニュースの性質上、池上彰氏の考えが入っているわけですから、「鵜呑み」にして読むのは賢い判断とはいえないでしょう。
 この本をとっかかりに、どこかに興味をもったら、そこからは自分の力で調べてゆき、自分の「感じ方」「考え方」「意見」を持つのが、大人のやりかたってものだと思うのです。
 まぁしかし、わたしもその道半ばなんでなんとも言えないんですけどねw
ラベル:感想 池上彰
posted by BOSS at 17:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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