20世紀FOXの怪物シリーズ、エイリアンとプレデターを戦わせた前作「AVP エイリアンVS.プレデター」の続編。
今回は戦いの舞台をアメリカの小さな町に移し、日常の風景が恐怖に浸食されてゆくさまを丁寧に描く。
「プレデリアン」の生態も見所だ。
作品としてはエイリアン1、2、プレデターと前作「エイリアンVS.プレデター」を見てからの鑑賞をオススメしたいですが、本作オンリーでも楽しめるよう最低限配慮されていますので「予習なんてめんどくせー」という方はぶっつけ本番でもまぁ構わないかと。
以下感想は前作エイリアンVS.プレデターのネタバレを含みます。
物語は前作のラストシーンから直接始まる。帰還船内部で衝撃の誕生を遂げた新種エイリアン「プレデリアン」によって、プレデターらは虐殺され、母船はコロラドの山林に墜落する。近くで狩りを楽しんでいた親子が墜落船の様子を見に近寄って、エイリアンの幼生フェイス・ハガーの犠牲となるが、それは今回の想像を絶する事件の序章に過ぎなかった。
同じ頃、プレデターのエリート戦士「ザ・クリーナー」がコロラドの森に降り立った。彼の目的は母船の爆破、そしてエイリアン掃討と証拠の隠滅だった。冷徹でプロフェッショナルなザ・クリーナーは次々とエイリアンを掃除してゆくが、目撃した人間もまた容赦なく殺してゆくのだった。
戦いは徐々に、山間部に挟まれた小さな町クレステッド・ビュートに舞台を変える。日常が一転、地獄の光景に。エイリアンとプレデター、そして人類の存亡をかけた戦いが始まる。はたして、生き残るのは誰だ。
南極の秘境探検、超古代の遺跡探検の入れ物に、エイリアンとプレデターという二大スターを入れてとことんド派手にバトルを楽しませてくれた前作でしたが、今回は入れ物を変えて、味わいをゴロッと変えてきました。
どこにでもありそうなアメリカの片田舎、森の中にたたずむ小さな町を舞台に、徐々に徐々に忍び寄ってくる恐怖の演出。終盤には恐怖が決壊して一大パニックになるという古典的な構造を丁寧に踏襲しており、なかなか好感が持てます。
考えてみるとエイリアンは市街戦は初体験なんですね。
どうりで街中で見るエイリアンにすごいショッキングを感じたはずです。
あの特異なフォルムが街中の日常世界に登場するとなんとも凄いインパクト。
序盤から中盤にかけて、恐怖が徐々に日常を浸食してゆく様がなかなか丁寧に描かれています。
恐怖映画のセオリーを忠実になぞっている感じですね。
小さな町のありふれた光景が一変して恐怖に塗り替えられるということで、強く共感できるようできています。
思わせぶりな映像効果、音響効果にもこちらはビクビク。
なにげない側溝の鉄柵すらフェイス・ハガーの足に見えたりする始末。ええい、なかなかやりおる。
そしてエイリアンもプレデターも、そしてプレデリアンも、闇にかくれてほとんど姿形が見えないのは王道。
正体がなかなか見えず、ちょっとずつたまってくるフラストレーションも、終盤へ向けての加速剤です。
主人公格となる数名の人間達は、描写が偏らず、誰が主人公かわかりにくくなっており、終盤まで誰が生き残るのか読めずにハラハラさせてくれます。
作品本筋とはちょっと外れますが、個人的には、あの母と娘の関係にはもうちょっと踏み込んで欲しかったかな。
そのへんがサラリと描かれてしまうあたりが、今作品のよさではありますが。
話題の目玉、新種エイリアン「プレデリアン」ですが、その奇抜なデザインのみならず、生態が大きな見所。
エイリアンの大きな魅力である、昆虫的な、何度も姿を変えつつ子孫を残す、あの手法をある部分受け継ぎつつ、より効率的な形態をプレデリアンは手に入れました。
これがまたなんともオゾマシくてセンス・オヴ・ワンダー!
やはりエイリアンシリーズの後継者であることを感じさせてくれます。
一方、プレデリアンと対峙する最強のプレデター「ザ・クリーナー」もこれまでのプレデターとは一線を画する魅力。
これまでのプレデターは、女子供や武器をもたない者、病気の老人などは殺さないなど、蛮族の戦士的に名誉を重んじるタイプに描かれてきましたが、今回は抹殺、証拠隠滅のプロフェッショナル。容赦なしです。
証拠につながるものは青く光る強酸性の液体で溶かして消滅させ、人間の目撃者はことごとく消去します。
武装は、両肩にプラズマ・キャノンを乗せてガンキャノン状態。
槍やチャクラム、腕部のカギヅメといった従来の武器に加え、新兵器も多彩。
そして戦い方はパワーより知略。
トラップを駆使してエイリアンをおびき寄せ、一気にハンティングしてゆく様はカッコイイ!
また今回キーアイテムともなる新兵器の銃がおもしろい性能で、撃つたびにちょっと時間をあけてエネルギーをチャージしないといけない。
これってまんまカプコンのアーケード版だったりします!
監督のストラウス兄弟は映画制作前、研究としてアーケード版も遊んだということですから、あながち穿ちすぎとも限らないでしょうね。
ここは思わずニヤリ。
今回の作品は時間的位置づけとして「プレデター2」と「エイリアン1」とを繋ぐ役割となっており、そのようなシーンがラストふたたび登場します。
こういった配慮がファンにはうれしいところ。
アレは続編への伏線じゃなくってファン・サービスなんですね。
また、随所にこれまでの作品を連想させるようなシーン、音楽が散りばめられており、なかなかサービス精神旺盛。
個人的には「エイリアン3」でリプリーに鼻を摺り寄せるエイリアンのあのシーンの再現に笑えました。
知らない人は普通に怖く、知ってる人は余計に怖い。
ストラウス兄弟、なかなか面白い仕掛けを作ります。
脚本の練りこみが足りないのか、少々物足りなさを感じたのが今回残念なところ。
ストーリーの各所に「もうちょっと何かが欲しい」と思わせるところがあったものですから、もしかすると脚本の取捨選択、編集の段階で急遽変更とかあったのかもですね。
DVD版の追加シーンなんかで補填されることを期待しておくことにします。
ところで、今作品始終降っているヒジョーに冷たそうな雨。
暗い画面でシルエットの似たもの同士が戦うもんだから、少々絵的に分かりづらくする原因ともなった雨なんですが、これ、実はホンモノの雨。
撮影期間中ほとんどが雨に降られる日々だったそうです。
はじめは恐怖映画にピッタリと興奮していたスタッフも次第に体力をやられ、しまいには主役のひとりダラス役スティーヴン・パスカルが低体温症を患ってしまったとか。
まさに心身を削る撮影だったことでしょう。
お疲れ様!