「岸辺露伴は動かない 〜エピソード16 懺悔室〜」が週間少年ジャンプに掲載されたのは、97年30号(後に短編集「死刑執行中脱獄進行中」に収録)。
短編読み切りでありながら「エピソード16」って何だよ!って突っ込みたくなったものですが、あれから10年。
ついに第2弾の登場です。
ジャンプスクエアの記念すべき創刊第二号掲載。
「ジョジョの奇妙な冒険」第四部の名脇役・岸辺露伴を語り部に、日常のすぐそばに隠れ潜む、非日常のエピソードが語られます。
ネタバレ注意!
冒頭数ページの編集者との会話で、すでに岸辺露伴の世界に飲み込まれちゃいます。
8年後の玉美や音石明というなつかしい顔にニンマリとしてたら、不意うちの「ドリッピング画法!」で思わず吹き出しました。
さらにあの露伴先生が康一君の家に世話になりつつ机もなしに今漫画描いているかと思うと、その光景を妄想するだけでおなかいっぱいになりそうです。
そしてセーラームーンのフィギュアをなにゆえに持っていたのか露伴先生www
あの露伴先生とセラムンのフィギュア!(爆)
想像もつかない組み合わせです!!
冒頭から飛ばしてるなぁ〜。
目をそらす編集への容赦ない追求も実に露伴先生らしくていい。
露伴先生って、とんでもない天才で凄い人なんだけど、やっぱり友人にはなりたくないタイプの人なんですよねぇ。
このどぎつい個性が健在で実に嬉しい。
本編は、ごくありきたりな痴情のもつれからのトラブルかと思いきや・・・・・・なんとも血なまぐさいクレイジーな事件へ。
隠そうとすればするほど血を吹き出し、思うようにいかなくなる「生きている死体」という恐怖。
しかしもっとも怖いのはそういう異常なモンスターではなく、次第に常軌を逸して手段を選ばなくなっていくこの女のほうですね。
あの、最後の血の隠し方には吐き気を覚えました。
いや、でもこれも一つの愛の形なのかなぁ〜。
最初は保身のためだった行動が、いつのまにか献身、そして愛へとすりかわっていく過程は省略されていますが、なんとなくわかりますねぇ。
子供が二人とも群平の子供であることが示唆されてますが、そこから私が感じたのはこの女性の異常性ではなく、奇妙な平和さでした。
なんだけっこう幸せそうじゃんって。
おっそろしいけどそれでも幸せなら、この女性にはこれで良かったのかも知れませんねぇ。
ほんと、なんとも奇妙な妖怪がいたもんです。
このシリーズの私が好きなところは、この話を聞いた人は、岸辺露伴が本当の事を言っているとは誰も思わないだろうな〜って想像できちゃうとこですね。
露伴としては大真面目で、相手も最初は露伴の話にのめりこむんだけど、はたと露伴が天才漫画家なのだと思い出し、
「またまた露伴先生、そんなこと言ってボクをからかわないでくださいよ〜。ほんと先生、真に迫った話作るのがうまいんだから〜。思わず信じちゃうところでしたよ〜」
って感じになるんじゃないでしょうか。
漫画家大先生が作り話で一杯食わそうとしているんだろうくらいに思い込んでしまうんじゃないでしょうか。
大漫画家という肩書きがあるために、いかに話が本当でも、逆にその言葉の信用性が落ちちゃうんじゃないかという皮肉な話。
まぁ露伴先生のことだから、そんなことこれっぽっちも気にしないんでしょうけど。
彼はただ最高の漫画が描ければそれでいいんですから。
そういうところが、岸辺露伴という歪んだ天才の、ひとつの魅力なんじゃないかなぁ〜なんて勝手に妄想。
いやぁまたまた面白い話でした。
このシリーズはまた是非読みたいですよ。
本格的にシリーズ化してほしいものです。