人気のアニメーション作品。
原田知世主演の映画にもなった筒井康隆原作の小説から、さらに20年後を舞台にした続編だが、完全に独立したストーリー。
少年少女たちの青春群像があたたかく、爽やかで切ない。
ゲーム仲間のあめじすとどのよりレンタル。ありがとうあめじん!
元気でちょっとおっちょこちょいな女子高生・紺野真琴(声:仲里依紗)は、踏切事故をきっかけに、自分には時間を飛び越える能力「タイム・リープ」ができることに気づく。
驚く真琴だったが、前向きに生活を楽しくするために利用することに。食べ損ねたプリンを食べたり、遅刻を回避したり、テストでいい点をとったりと、「タイム・リープ」のおかげで真琴の日々の生活は絶好調。ちょっとまずいことがあったら巻き戻してやりなおせばいいのだ。有頂天になる真琴。
そんなある日、仲のよい男の子から告白を受ける。しかし真琴はその告白を、時を巻き戻すことでなかったことにしてしまった。ここから、ちょっとずついろいろなことが狂い始めるのだった。
私などの世代には原田知世主演の映画と、あの「と〜き〜を〜、か〜け〜る〜少女〜♪」のあの歌が一発で頭にのぼるこのタイトルですが、内容は完全オリジナルの新作続編ということ。
キャラクター・デザインにはエヴァンゲリオンの貞本義行。
時間を遡ることで何度も同じ日々が繰り返され、同じシーンが何重の意味をも持ってくるという、なかなか良くできたシナリオとなっています。
演出の運びもすばらしい。
緩急のつけかた、笑いのタイミング、人物の心理の誘導、緊張感のある盛り上げ方、どれも充実していて見ていて心地いい。
始めから最後まで目が離せない、非常に高い完成度です。
ただ、本作品はさほど時間SFという要素は重要視しておらず、「タイムリープ」の能力説明もかなりボカしております。
SFにこだわった見方をしてしまうと、その点が少々頭にひっかかってしまうので、終盤ちょっと素直に感動できないかもしれません。あまり深くは考えずに主人公に感情移入したほうが勝ちですね。
私が頭にひっかかってしまったのは2点。
ひとつめは「タイム・リープ」の効果の説明がないというところ。
どうも「タイム・リープ」には3種類以上の違う「使い方」がありそうなんですが、この「使い方」のそれぞれの特徴やリスク、スペックの限界などを説明せずに話が進むので、「あれ?ここではあっちの能力のほうが便利じゃない?」とか思ってしまうんですね。ちょっとひとことだけでも欲しかったかな。
あともう一点はクライマックスでの重要人物の「記憶違い」。
時間軸をいじったからまだ経験したことのないことを、主要人物が知っていたりする脚本ミスが一箇所。それもかなり重要な場面であったものだから目立ってしまいました。
といってもそれ自体が致命的なポイントとはなっておらず、脚本自体は素晴らしい流れをしているので気にしなければ「そんなの関係ね〜!」で済む話だったりしますw
あまりSFとしては見ずに、「もしもこんなことができたら」というファンタジータイプの青春物語として観たほうがよいという感想です。
作中ヒロインの口からも表現されますが、「タイム・リープ」というより、「リセットボタン」という言い方のほうが適切でしょうね。
コンピュータRPG感覚で何度でも人生をやりなおせたらどんなことができるだろう、というタイプです。
本作ではその設定を、「少年少女の恋」と、「彼らの成長」にからめていきます。
高校生の男女の、なかなか複雑な恋模様ですね。
この作品では、既に付き合っているカップルというのは登場しません。
主人公真琴と、そのそばにいつもいる仲良しの男の子二人。
いわゆる「ドリカム状態」なわけですが、彼らは別に付き合っているわけでもなく、かといってただの友達とも言いがたい。とても微妙な関係ですね。
そんな3人の周りに、数名の女の子が配置されていて、ひそかにそれぞれ想うところをもっている。
誰もがひそかに誰かを想っていて、だけど誰もなかなか口に出せない。
思いを寄せる矢印は複雑に絡み合っていて、どう考えたって円満解決にならないのは明白。
ひとりが口に出すと、それが連鎖的に周りに衝撃を与え、ビリヤードのように他の人をどんどん動かしていってしまう。
最初は一見のどかで穏やかで居心地のいい平和な友人関係に見えても、実はとても絶妙なバランスの上に成り立っていたりする。
ちょっとひと押しすると、全員がバタバタとし始めてしまうんですね。
なかなかこれは青春じゃないですか。
そんな舞台に、何度失敗しても何度でも時間をまき戻してなんとかしてやろうじゃないかと果敢に挑戦する真琴という人物配置はぴったりですね。
キャラクター描写も爽やかで暖かく、見ていて優しい気持ちにさせてくれます。
みんな魅力的でいい人ばっかりですね。
私が気に入ったのは、本編で恋愛混戦からは離れてヒロインを助言する「魔女おばさん」こと芳山和子。
このひと実は原作ヒロインの20年後ということで、前作を知っている人にはサービス登場というような位置なんですが、また実に味のあるいいキャラクターになっています。
あたたかく、言葉少なめに真琴を導く大人の女性という感じです。
ちょっと風変わりで浮世離れした雰囲気が素敵で魅力的ですね。
そんな彼女が「昔のこと」を語る場面はとても意味深いものを秘めています。
彼女を真琴の未来の姿ととるか、それともとらないかは、観客次第というところでしょう。
ちなみに声は原沙知絵。
「原田知世」と二文字違いだ!
・・・って、まぁそれだけですがw
ラスト、主人公が到達する「ある結論」も、なかなか胸を熱くさせられます。
ああ、子供の頃ってそうだったなぁ〜って、昔の事を思い出しちゃいます。
大人だったらそんな結論には到達しないし、もっと子供だったとしたらそうなるはずもない。
あの世代のあの瞬間だからこそ出せる結論ってあるんですよね。
同世代だとしたら圧倒的な共感を呼ぶでしょうし、私のような世代だとしたらとても切ない郷愁を感じるかもしれません。
青春ドラマとして、とても正しいまっすぐな作品だと想います。
ひねくれずに渾身のストレートど真ん中。
なかなかこれは気持ちのいい作品です。
あまりSFを普段見ない人、それも若い女性にもオススメできる素敵な作品でしょう。