女の子が勉強のため、友人女性の田舎の家に泊まりに来たら、突然襲ってくる殺人鬼。次々に惨殺されてゆく友人家族。息を潜めて隠れる主人公の運命は?
古典的な殺人鬼ものの始まり方をしながら、途中からのテンション上がりまくりな展開と、アクロバティックなトリックは大いに見所。
ただのスプラッター・ホラーと舐めてかかると足をすくわれますぞ!
試験勉強のため、マリー(セシル・ドゥ・フランス)は女友達のアレックス(マイウェン)の実家に今夜から泊まることに。寝る前、マリーがヘッドフォンで音楽を聴きながら自慰に没頭していると、突如襲ってくる殺人鬼。眠りについていた家族は次々と殺されてゆく。マリーはじっと息をひそめ、部屋の片隅に身をひそめるが……殺人鬼はアレックスを縛りつけ、錆びついたトラックに載せ連れ去ろうとする。マリーは友人を救うためトラックに忍び込み、殺人鬼の隙をうかがうが……。この奇妙な展開の結末やいかに。
一応宣伝によるとリュック・ベッソンが関与しているっぽいフランス発ホラーですが、監督は20代そこそこの若手アレクサンドル・アジャ。
製作がリュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープということで、名前だけ貸した流れなのではなかろうか。
予算はハリウッドの超スケールなんて夢の、超低予算。
それこそ「撮影現場で移動中など、殺人鬼とヒロインの役者をなるべく一緒にしないようにしたかったのに、移動用の車が二台手配できずに結局一台の車で移動させました。けどそれがいい作用をしたんですよ〜」なんていうエピソードが残ってしまうほどに超低予算。
そんな経験なし、予算なしの作品だというのに、これがチープ感をほとんど感じさせない。
ハリウッド超大作相手に敢然と勝負をする気概を感じる作品です。
まず冒頭の農家の惨劇のシーンから、続くガソリンスタンドのシーンは典型的なスプラッター・ホラーの作りをしています。
殺人鬼の歩くときの革靴のたてる、「ググッ……グググッ……」という音がなんとも不気味でいい。
ヒロインのセシル・ドゥ・フランスはあまり美人じゃないけど迫真の演技で、家の中をあちこち逃げまどい、殺人鬼にみつからないよう悪戦苦闘するさまは観客がのめりこめるものがあります。
殺し方も凝っていて、得意武器(?)はカミソリですが、ひとりひとり殺しの小道具を変えていてそれがいちいちショッキングで面白い。
また血しぶきをこれでもかこれでもかと撒き散らかす演出もえぐいながらもなんだか見ていて笑ってしまうのは、やはりスプラッターの王道でしょう。
ただまぁ言ってしまえば、そういう作品はいくらでもあるだろうと。
たしかに演出はいいし、残酷描写も派手で恐怖演出もキレがあるし、ちょっとパロディ臭くてそれもいい。
しかしそういう作品はホラー界いくらでもあるだろうなと、そう思っていたのですが、いやいや騙されました。
途中からがこの映画タイトルどおりのハイテンション。
中盤、マリーがガソリンスタンドでブチ切れてからがかっこいい!
ぐちぐち言ってまともに応対してくれない電話の警察に吐き捨てる言葉がまたキレてます。
そして、さらにこの映画は大きなトリックを隠しているのですが……、普通にスプラッター・ホラーとして見ていると、かなりアクロバティックな落とし穴に落とされます。
まさに若いスタッフならではのエネルギッシュな展開で、注意深く観ていないと、単に「ありえね〜!」って言っちゃいそうな展開なんですが、その準備段階は気付かないうちに序盤から着々となされているんですね。
なかなか強引でありながらも用意周到です。
たしかに若いスタッフでなければ踏み込めない領域かもしれませんね。
老練なスタッフはもっと観客を納得させることに手を惜しまず、そういう手腕も長けているはずです。しかし、老練なスタッフではここまでのショッキングは生めないかもしれない。
若くて怖いもの知らずで強引さだからこそ、これだけのトリックでショックを生むことができたのかもしれません。
「なんじゃこりゃ〜〜〜!」と思いつつ、一度観たらもう一回観たくなる魅力いっぱい。もう一度観るとまた違った怖さも見えてくる。そんなスプラッターもいいですね〜。
しかし、残酷シーン満載なんで心臓の弱い方や小さなお子様には決してオススメできませんのでご注意を。