ごく普通のタクシー運転手と、冷徹なプロの殺し屋が一台のタクシー内でぶつかり合いながら夜のロサンゼルスを疾走する。緊迫と興奮のアクション娯楽。
物語を追うごとにどんどんヒートアップしてゆく興奮はなかなか。
タクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)が今夜乗せた客ヴィンセント(トム・クルーズ)は、最初は紳士的な男に見えた。一晩で5箇所をまわらなければならない仕事で、タクシーを一晩貸切にさせて欲しいと言う。高い契約料金に気を良くしたマックスはそれを了承するが、ヴィンセントの仕事とはプロの殺し屋。今夜一晩で5箇所をまわり、5人の人物を消すつもりだったのだ。それを知ったマックスは逃げ出そうとするが、ヴィンセントは許さない。運転手として腕のいい彼を強引に運転させ、このまま殺しの手伝いをさせると言い出す。
一方ロス市警とFBIも徐々にヴィンセントの犯行に気付きだすが、監視カメラに写ったマックスをヴィンセントと勘違いしてしまう。はたしてマックスの運命やいかに。
最初はごく普通の、どこにでもありそうなアクション映画かと思って観ていたのですが、中盤、マックスがロス市警やFBIに追われる展開となるあたりからの盛り上がりかたが素晴らしい。
それまではただ殺しを繰り返すだけの作品で、ひとつ間違えると殺し屋に振り回される男の不幸を笑う、ドタバタのバディ・ムービーになりそうなものなんですが、この映画は違う。
ちょっとした手違いから連鎖的に発生するアクシデント。
徐々に切羽詰っていく状況。
時間制限は夜明けまで。
奔走するロス市警とFBI、そして暗躍するマフィア。
様々な状況がどんどんマックスとヴィンセントを追い詰めてゆき、緊迫感は否が応でも高まる。
この中で、主役ふたりが生の人間としてぶつかりあってゆく。
始めはただ状況からぶつかりあっていただけの二人が、それぞれの人間性を知るようになって、その正反対な存在をぶつけあうようになる。
アクション映画でありながら、この二人のタクシー内での会話が映画の大半を占めるような印象すらありますが、むしろそちらのほうに興奮しました。
この計算しつくされた緊張感はすばらしい。
めずらしく悪役を演じるトム・クルーズの演技も見所。
目だけで演技をする「コヨーテ」のワンシーンは私の最高のお気に入り。
あいかわらずカッコイイし、色気のある大人って感じになってますね。
マックスのジェイミー・フォックスも、誰もが親近感を感じる平凡な男を演じていながら、中に非凡な才能・卓越した洞察力を秘めているという面をよく演じていました。
このジェイミー・フォックスの演技なくして、この映画のストーリーはありえないと思われます。
アクションシーンは見所たっぷり。
特にディスコでの物凄い混乱のなかでのトム・クルーズの乱闘は必見。
どんな混乱の中でも一時たりとも目的を見失わず、冷静沈着なプロの殺し屋のスゴみを感じます。
また音楽の使い方もオシャレで、先述の「コヨーテ」のシーンでの挿入歌など、ゾクゾクとさせられます。
映像としても、非常に印象的なシーンが多いですね。
ロサンゼルスの輝きわたる天の川のような広大な夜景の中、だだっぴろい高速道路を突っ走るシーンなど、ロサンゼルスという世界の独特の空気を感じさせてくれます。
アクション映画でありながら、どこか心に残る映画。
そんなタイプだと思います。
ちなみに私が利用しているレンタルビデオ店「DORAMA」さんでは、これが「サスペンス」のコーナーにありましたが……うーん、これサスペンスなのかなぁ〜。
この二人がどうなってしまうのか……という形ではサスペンス感がありますが。