アフリカの紛争に揺れるシエラレオネ共和国を舞台に、3人の男女の運命の変遷を描きつつダイヤモンドを巡る血なまぐさい世界を観客に突きつける作品。
レオナルド・ディカプリオの熱演が光る。
反政府軍RUFの襲撃を受け、家族と離れ離れにされたソロモン(ジャイモン・フンスー)は、奴隷としてダイヤモンド採掘場で働かされる。幸運にも巨大なピンクのダイヤを発見したソロモンはそれを隠すが、その場をRUFの隊長に目撃され、あわや殺されかけるところを政府軍の奇襲でからくも救われる。
一方ダイヤモンド密輸業者のアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)はソロモンが発見したダイヤの話を聞きつけ、ソロモンに付きまとい始める。
もう一人の主人公は女性記者マディー(ジェニファー・コネリー)。彼女はダイヤモンドを巡る国際的な闇取引の証拠となる証言者をもとめてアーチャーに接触してくる。当初ぶつかり合う二人だったが、次第に惹かれあうことになってゆく。
巨大なダイヤを巡り、利害のまったく食い違う3人の物語が始まる。
主題は『紛争ダイヤ』。
正規のルートではなく、アフリカの紛争地域から不正に流出してくるダイヤモンドで、アフリカの紛争の大きな火種でもあり、紛争の巨大な資金源ともなっている。
きらびやかに見えるダイヤモンドは実は、アフリカの人々の血にまみれているのだというのが中心のテーマ。
ド派手なアクション、戦闘シーンを数々散りばめながら、軽薄にならずなかなか重厚なつくりにまとまってます。
ひとつに、3人それぞれのキャラクター造形がよいことがあげられるでしょう。
ソロモンの人情味あふれる、家族思いで力強い父親像がまずありき。
アーチャーの酷薄でありながらもどことなく人間臭さを感じさせる複雑な表情もすばらしい。
マディは情熱的でいながらつねに冷静に自分を律することの出来る女性のひとつの理想です。
どんなことがあろうと一緒に行動することなどなさそうなこの3人を強引に同行させることになる脚本も、よくできていると言っていいでしょう。
中でも、RUFに少年兵にされた息子と対峙する父親ソロモンがすばらしい。
最近各所で叫ばれるようになった「少年兵」問題ですが、この映画では無理矢理拉致された子供たちが少年兵に仕立て上げられてゆくまでが事細かに描かれています。
明るくてサッカー好きだった少年が、徐々に人間性を消され、無残なほどに冷徹な殺人マシーンに仕立てられてゆくのが手に取るようにわかります。
そんな息子と向かい合った父親の悲しみ、戸惑い。
この映画のもっとも心打たれたシーンです。
紛争に荒れ果て、一部の特権階級が搾取を欲しいままにして取れるだけ取ったら海外に逃げ、あとは貧しい者達が苦しむ広大な大地が残るだけ。そんなところはだれも統治しようとは思わない。
政府軍と反乱軍がぶつかり合い、一般人はそのどちらからも搾取され、虐殺される運命。
不正取引が横行し、先進国からは武器弾薬が流れ込んで紛争を助長し、その見返りとして黄金や石油、ダイヤが輸出されてゆく。
先進国にしてみれば、アフリカの紛争は商売のタネなのだ。
なんともやるせないアフリカの実体を全編目の前に突きつけられる作品。
それでいて問題作ぶって小難しい社会派作品を気取っていないのは、やはりアクション映画として、娯楽映画として非常に高いレベルに到達できているからでしょう。
また、レオナルド・ディカプリオの熱演も光っています。
ただの自己中心的な密輸業者かと思いきや、複雑な過去が垣間見えてくる中盤、そして急展開の終盤と、徐々に徐々に内面が出てくるうちに、まるで別人のように変貌を遂げてゆきます。
特に終盤の迫真の熱演がすばらしい。
多彩な人物像、アクション、社会批判、国際問題と、様々なテーマを内包しつつ、破綻させずにうまく纏め上げた手腕に感心します。