ネタバレ注意!
言ってしまえば強烈な大どんでん返しとか、意外な結末とか、大興奮の盛り上がりとか、そういう性質のラストではまったくなかったわけですが、長きにわたった素晴らしい漫画の、なかなか綺麗な着地をみせられたという、そんな感慨です。
万丈目のホロリとくるラストや、空恐ろしい博士の娘の結末、サダキヨの満足そうなやすらかな死に顔、カンナと蝶野のあらたな歩み。
ここまで広げてきた大風呂敷が、次々に綺麗にたたまれてゆく様は観ていて感心するばかり。
なるほど派手で見た目ばかりのラストより、今までの伏線を丁寧に拾って、こうやって落ち着かせてゆくほうがどれだけ大変かわかりませんね。
ケンヂに、最後はひたすら昔の過ちを償わせるというのもよかった。
今さら謝ったところで、それは今となってはどうしようもないし、相手はヴァーチャル・アトラクションの人間だけど。
それでもそうしないと、ケンヂは次へのステップを踏めなかったってことでしょうね。
最後の20センチュリーボーイが校舎に流れるところで、物語がループ気味になったのもよかった。
こういうループは大好きです。
最初のシーンからの思い出がいろいろとフラッシュバックしてきて、思わず最初から読み返したくなっちゃいます。
ループしつつも、なるほどケンヂが曲をかけたからこそ、カツマタ君は自殺を思いとどまり、実はケンヂは世界を変えていたんですね。
人の命を救うというとても素晴らしいことをしておいて、本人まったく気付いていない。
そして後々は世界を破滅に導く狂気の人間を生み出す元凶ともなってしまっているんですが、それは運命の皮肉ともいえますね。
良いこともしていたけれども、それが最悪の事態も生んでいた。
でも、今となってはどうしようもないことで、過去のその瞬間には、わかるはずもないことだった。
なんとも運命というのはとんでもないものだなぁと、考えさせられてしまいました。
さて、ラスト、「ともだちの正体」があかされましたが、この正体にきっと賛否両論なんでしょうね。
まったく本人の描写のなかったカツマタ君では、サスペンスものとしてはちょっとアンフェアなんじゃないの?という意見もあるでしょうね。
まぁ私も拍子抜けしたのはたしかですが、考えてみたらここまできたら犯人なんてどうでもいいかなという気もしてきてしまいました。
また、すでに「ともだち」像はフクベエの時にさんざん描写済みであり、第二の「ともだち」は人格的にも多くのものを欠落した歪んだ模倣だったと、わたしは解釈してますので、これ以上描写するものも持たないからこそ第二の「ともだち」だったんじゃないかなと。
まぁそのように理解しております。
ケンヂの模倣の「ともだち」のさらなる模倣ですね。
誰にも注目されず、また外に主張できるほどの自我も不確実で曖昧。自分で自分がどんな顔なのかもしっかり把握できていない。
そんなアイデンティティー欠如の人物が、カツマタ君だったんじゃないかなと思ってます。
だからま、そんな描写することもなくってもいいかと。
描かれなくってもだいたいわかるなと、思ってます。
興味深いのがケンヂとユキジのその後ですねw
ふたりが幸せになってくれたらよいなぁと、願うばかり。
未来へのいろんな希望をたくした、とってもよいラストでした。
あ〜面白かった!!