ナイロビの貧しい人々に混じってボランティア活動に従事していた女性が殺された。
女性の夫は単身事件を追うが、事件の背後には世界的な規模の陰謀が渦巻いていた。
陰謀劇の面白みと、死んだ妻を理解しようと駆けずり回る男の哀愁のミスマッチが面白い化学変化を起こした。
ナイロビ駐在の英国外務省一等書記官ジャスティン(レイフ・ファインズ)の元にとどいた、突然の妻の訃報。ナイロビの貧しい町でボランティア活動に没頭していた妻テッサ(レイチェル・ワイズ)が、友人の黒人医師とともに何者かに殺された。
黒人医師と妻が浮気しているのではないかという疑いを抱いていたジャスティンは混乱しつつも事件を追うが、徐々に事件の背後には世界的な規模の陰謀が見えてくる。妻がなにを追っていたのか、何を考えていたのかが分かってくると、ジャスティンは妻の思いを遂げさせるために、身の危険も顧みず、ひとつの旅に出る。
この作品の大きな柱は二本。
ひとつは巨大な、国際的な陰謀劇を暴いてゆく面白さ。
アフリカの貧しくなにも知らない憐れな人々を食い物にする巨大な権力者に、誰しも怒りを覚えるはずだ。
もうひとつは妻の足跡をたどる夫の旅路の、悲しい愛の物語。
死んだ妻がなにを考え、どのような思いを抱いていたのか探ってさ迷い歩くのだが、冒頭既に妻が死んでいるだけにもうやるせないというしかない。
妻テッサ役のレイチェル・ワイズは私などは『ハムナプトラ』『ハムナプトラ2』のヒロインでおなじみで、美貌とナイスなスタイルにメロメロだったりしたのだが、本作では印象が大分ちがう。
ちょっと年輪をかさね、アゴまわりの肉付きもよくなって、ふてぶてしいというか精力的な印象になったのだが、なにより演技力が違うのだ。
映画は何度もテッサとジャスティンふたりの回想シーンを挟み、さらには車を運転中のジャスティンの隣に幻のテッサが現れたりと、冒頭死んだにもかかわらずけっこうレイチェル・ワイズは出ずっぱりというイメージ。
死んだ妻の幻を追い続けるこの物語では、その妻の魅力が非常に重要。
エキセントリックで情熱的でどこまでも愛にあふれ、そしてどこか哀調をはらんでいるテッサという女性の物語を体当たりで演じていて、う〜ん一回りも二回りも大きくなったなぁ〜というのが実感だ。
印象的なのは、二人の出会いのシーン。
外交官の代理として記者会見を行うジャスティンに、勇敢にも敢然とくってかかるテッサ。
テッサは大国の理論を声高に非難し、まわりの記者たちからも煙たがられる空気。
そんなテッサを、ジャスティンは優しく守ろうとする。
このふたりのキャラクター性をワンシーンで飲み込めるよいシーンだ。
妻を失った夫の旅路が、巨大な陰謀の真相を追う壮大なサスペンス路線と、妻との愛を確かめようとする切ないラブストーリー路線のふたつを兼ねているという構造が面白い。
どちらか一方だけではありきたりな作品になってしまっただろうが、ふたつをあわせることで、印象を重ね合わせあう関係となっているようだ。
一見ミスマッチに思えるこの二つの要素が、非常に面白い印象の絡み方をした。
このような作品の場合、なにを説明してもほとんどネタバレになってしまいそうでヒヤヒヤものなのでこのへんで筆を置くことにします。
なかなかのずっしりした重厚感と奥行き、そしてしっとりとした切なさを秘めた良作です。
公式HPはこちら。
こちらで流れているテーマソングがなかなかいい。
作品全体の哀調がよくあらわれています。