1974年の『悪魔のいけにえ』のリメイク版。リメイク元は見てないけれどもかなり話題なので観てみた。
実話を元にした殺人鬼モノの独特の怖さで、こういう映画にありがちなジョークっぽさがあまりない。
真剣に殺人鬼のホラーをやっちゃいました。
痛いしビビるし、登場人物が異様な迫力。
でもヒロインのおねーちゃんは美人でボインボイン(死語ッ)。
面白いけど心臓の悪いかたにはお勧めしません。
まず冒頭にモノクロ映像を並べて、これは実話だよというところから始まる。新聞やテレビの報道で凄惨な事件現場の映像が流され、次に手持ちカメラの視点で警察官が事件現場にカメラマンを案内してゆく。階段を下りて行くと、途中壁を爪でひっかいた痕跡があり、はがれた爪がひっかかっていたりする。そして、さらに奥へと降りて行くとそこには・・・・・・。
場面は変わり、時間を二日ほど遡る。ド田舎の道を走るワゴン車の若者5人に話は移る。ホラー映画にありがちな、セックスとドラッグに浮かれた若者達だが、ここで一人の少女を道で拾う。少女は暴行でもされたんじゃなかろうかという様子で放心状態。この少女を病院か家にでも連れて行ってやろうかと話していると、少女は突然「そっちには行きたくない!!!」と暴れだし、隠し持っていた拳銃で自殺してしまう。突然の惨劇に混乱しつつも、死体をなんとかしなければと、保安官を呼ぶために立ち寄った挽肉工場。ここが、当時アメリカ全土を震撼させたテキサス・チェーンソー大虐殺事件の舞台となるのであった。
ホラー映画にもいくつかのタイプがあって、じわじわと恐怖を想像させてくる静かなタイプとか、次々と披露される残酷だけど間抜けな死に様に爆笑したりする悪趣味なタイプとかがある。
この作品は、「ビックリ」と「痛さ」をガツンガツン出しつつ、異常な登場人物に震えさせるタイプだ。
まずこの映画にはジョーク的な息抜きがない。
だいたいホラーなら各所にブラックジョークがあって息抜きがあるものだが、今回は見当たらないのだ。
体質が合わない人はちょっとこれで辛いかもしれないが、全編シリアスなホラーっていうのも面白い。
作品としては、突飛なところもなく、実はかなり堅実な作りをしています。
この作品が特異なところと言えば、最初と最後にドキュメンタリー風味な手持ちカメラ映像を絡める点で、このスパイスでいかにも映画全体が実話であるかのように見せるところでしょうか。
全体のスジとしては王道を行っていて、わざと王道をはずすことで観客の読みをすかしてゆく『ホステル』とは180度違います。
しかしチェーンソーっておっかないなぁ〜。
筋肉マッチョの大男がぶんぶん振り回すと、これどうにもなりませんね。
受け止めることも受け流すことも不可能で、もう逃げるしかない。
破壊力もおっかないし、そもそもエンジン音もおっかない。
エンジン音がしているうちは、ああそこにヤツがいるのねって分かるが、いざ聞こえなくなると恐怖はいや増しに増してくる。
突然背後でブルルルルルルルーーーン!!!って鳴り出したりするんじゃないかとビクビクもの。
ちょっと気になって調べたんですが、チェーンソーって言えば『13日の金曜日』シリーズのジェイソンなんじゃないのか?って思ったんですが、実はジェイソンはチェーンソーを一度も使っていないんだそうです。ちょっと意外。
痛そうなシーンは数々ありますが、その中でも、『背中串刺し宙吊り』が見ていて痛くてしょうがない。
全体重が背中に刺さったブッ太い釣り針状のフック一本にかかってて、もがこうがどうしようが抜けるものではない。
肉がひきつり骨が軋むのを想像してしまった。
ありゃ〜〜息だって止まりそうだ。
なんとか助けようと女の子が釘から引き抜こうとするんだけど、そうすればそうするほど何度も犠牲者に釘が食い込んでゆく。
辛らつ極まりない罠だねぇ。
異常な人物はいっぱい出てきますが、中でも保安官が最高。
『フルメタル・ジャケット』で、海兵隊に志願した新兵を、罵詈雑言浴びせまくってしごきまくる恐怖の鬼軍曹ハートマンって有名なキャラクターがありますが、実はこのハートマン軍曹役のR・リー・アーメイが保安官役。
あの高圧的な暴君で絶対に逆らえない恐怖の鬼軍曹、ほとんどそのままで保安官やってます。これには観てて大喜び。
死体を預けようと助けを呼んだら、この保安官何を思ったか若者達を容疑者扱いして恐怖の尋問大会。
絶対ベトナム帰りだよという勢いで若者達を恐怖のどん底へ叩き落します。ここが最高だった。
で、見ていて不謹慎だとはおもいつつ、ついつい目が行ってしまうのがヒロインのエリン役ジェシカ・ビールの最高の美貌と最高のスタイル。
スレンダーな体をタイトなジーンズとへそだしの白いシャツで包み、キャーキャー言って逃げ回るとおっぱいがブルンブルン!
思わずこっちは恐怖どころではなくなってしまうわけだが、恐怖映画において魅力的なヒロインっていうのは欠かせない要素ですね。
このエリン、ダメな若者達のなかでも数少ない良識派で、「麻薬ダメ。ゼッタイ」な人で、少女をワゴン車に乗せようと言い出したのもこの人。
さらにこのエリンはとんでもなく勇敢で、友人が死にそうになってて、これ以上の恐怖には耐えられないからひと思いに殺してくれというと、迷いつつも決然とトドメを刺しちゃうのだ!
これ、日本映画のヒロインだったらゼッタイ無理だろうね!
あるいは「あきらめちゃダメだよ!」とか言って励ますかもしれない。
どっちがいいって訳じゃないけど、とにかく驚いた。
こないだ『エイリアンvsプレデター』観ていても似た様なシーンがあったけど、こういうの日本の映画ではあまり見た記憶がないなぁ。
アメリカの男性には綺麗な女性にトドメを刺してもらいたい願望があるんだろうか、とか考えてしまった。
アメリカ人女性もいい迷惑だろうになぁ。
強い女性映画が多い影響かもしれないですな。