2007年08月24日

映画感想 エイリアン4

満足度96点(レンタルDVD)
 帰ってきたリプリーウィノナ・ライダー演じる海賊コールの共演。
 軍部のおぞましい実験によって復活を遂げたエイリアン・クイーンが新たなエイリアンたちを生み出す。
 いかにもSF的なセンス・オヴ・ワンダーがいっぱい。

前作『エイリアン3』のネタバレ注意!



 体内に宿ったエイリアン・クイーンの幼生ごと溶鉱炉に身を投げ、死んだはずのリプリーを、軍部は200年の歳月をかけて実験を繰り返し、クローン技術で再生してしまった。軍部はエイリアン・クイーンを軍事利用するために、大量のエイリアンを軍事要塞衛星の管理下で増殖させていたのだ。それには海賊も一枚噛んでおり、エイリアン増殖のために不可欠な宿主を「調達」してくるのが彼らの役目であった。この海賊のなかに潜りこんでいた謎の女コール(ウィノナ・ライダー)が、エイリアン軍事利用を阻止しようと暗躍し、再生したリプリーと出会うことに。時を同じくして、エイリアンの群れが厳重な管理下から巧妙に脱走、軍事要塞衛星はパニックとなる。


 今回は『2』の100匹以上というほどではないにしろ、数十匹のエイリアンが登場し、軍事要塞は上を下への大騒ぎで、さながら災害パニック映画のような様相。
 非人間的な実験を繰り返してきた非道な軍部の人間達を、ばったばったとやりたい放題。
 このへんは不思議とエイリアンを応援したくなる展開で、それまで冷凍ガスでなぶられていたエイリアンが、逆に人間にそれを向けるシーンなど、思わず溜飲が下がる気分だ。


 リプリーとエイリアンは、クローン再生の仮定で遺伝子が影響しあい、すこしずつ混ざり合ってしまっている。
 リプリーの爪はエイリアンを連想させる黒で、血液は強酸でできている。
 運動能力も飛躍的に向上しており、殴られたってびくともしないタフさ。
 そぶりも少々エイリアンじみた冷たい表情としぐさで、不気味さをアピールしている。
 いっぽうエイリアンもリプリーの影響を受けずにはいなかった。
 その結末は伏せるとして、このリプリーのエイリアン側へのシフトで、テーマは明確に「悪いのは人間の悪しき心」として打ち出してきたようだ。
 今まで軍事利用の目標としてしか見られなかったエイリアンのサイドに、リプリーが置かれることでそこが強調される形となったのだろう。

 といっても、本作はエイリアンとリプリーたちの戦いを描いた娯楽作品であり、高尚なメッセージはつけあわせの立場をわきまえている。
 リプリーと共闘戦線をはることになったコールら海賊たちが、いかにこの軍事要塞を脱出するか、そのスリリングなアクションは『2』の頃にもどったような派手さで、見せ方もうまくハラハラドキドキのエンターテインメントだ。

 真新しいアクションとして、エイリアンとの水中戦が用意されている。
 水没した部屋を息を止めて泳ぎ渡ろうとするリプリーたちに、驚くほどの水泳能力を見せて追いすがってくるエイリアンの群れは実に驚異だ。
 そしてなんとか水面に這い上がった彼らを、最悪の凶悪さであるトラップ待ち受ける。
 ここはこれまでのファンにはたまらない恐怖で、まさに怖気を震わせる。

 『2』『3』『1』で作り上げたSF設定を掘り下げ、拡張することで世界を演出してきたのに対し、本作はさらに別ルートから派生してきたSF的アイデアを多数投入することで面白いインパクトを生んでいる。
 そのひとつがクローン技術によってエイリアン化してゆくリプリーの不気味さ。
 そしてリプリー以前に実験対象となった被験体との遭遇。
 さらにリプリーの遺伝子を受け継ぐことで変化することとなったエイリアンの次なる姿だ。
 このへんのセンス・オヴ・ワンダーは『1』のころのワクワクさを取り戻す勢いで私はこの点を大きく評価したい。

 この映画でとても重要な役割をになう女海賊コールだが、演じるのが実は私が昔から大好きな女優ウィノナ・ライダー
 観る前から期待大だったのだけれどもこれが期待以上のすばらしさ。
 女戦士というには華奢で、顔は幼く、透明感のあるキュートさ。
 そんな彼女が、とても海賊に身を投じるとは思えない、わけあり風な謎めいたところのある女性を好演している。
 ある秘密を背負った彼女は実に複雑な悩みを持っており、言動は不可解な深みを持っている。
 そんなナイーブで複雑なキャラクターを演じるのに、繊細な彼女のキャラクターはぴったりだ。
 このコールとリプリーの関係が、ぎくしゃくしたりぶつかったりしながら不思議な友情へと変わってゆく過程が面白い。

 ある秘密があかされてからの二人の関係は、似たもの同士としての親近感からどんどん引きあっているように見える。
 リプリーにとっては、あまりに残酷すぎる人生だが、このコールとの出会いが彼女の救いに少しでもなればと、そう祈りながら鑑賞していた。
 またコールにとってもそうあれかしと。
 この二人の関係は、『2』のリプリーとニュートの補完関係に似ていてまたちょっと違うタイプだ。


 鑑賞後、このシリーズが何度もたどり着こうとしてたどり着けなかった場所に、ようやっと到着したという安堵感と満足感があった。
 娯楽作品としても非常に高い興奮と面白さを提供し、さらにエイリアンシリーズをSFとして愛するファンもうならせる新しい境地と深みを備えている。
 そして今までの作品の集大成といってもいい展開と、結論で、ああやはりここまで観てきてよかったなと思わせてくれた。
 これはシリーズものの続編としては稀有なことかもしれない。
 あ〜面白かった!

 
 そして後日、ウィノナ・ライダーの他の映画が観たくなった私が手に取ったのは、意外と今まで観たことのなかったあの有名作品であった……。
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