2007年08月23日

映画感想 エイリアン3

満足度70点(レンタルDVD)
 前作で巨大になりすぎた感のあるエイリアン・ワールドだが、第3作はここであえてエイリアンを一匹に絞り込んで単純化。物語の原点に立ち返り、ある結論を導こうとする。
 しかしその冒頭の展開は、あまりにもショッキングだ。

ネタバレ注意!(前作エイリアン2をこれから観る人は読まない事を強くお勧めします)



 前作エイリアン2の直後から物語は始まり、衝撃のオープニングシーンとなる。悪夢のような惑星から脱出したリプリーらが冷凍睡眠中の船内に、なんとエイリアン・クイーンが卵を産み落としていたのだ。這い出したフェイスハガーがリプリーやニュートの眠る冷凍カプセルを破壊し、寄生しようとする。火災が発生し、異変を感知した宇宙船は自動で脱出艇を用意し、眠ったままのリプリーらを近くの惑星へと降下させるが、その脱出艇も着陸を失敗して海面へたたきつけられる。奇跡的に命をとりとめたリプリーを救ったのは、その惑星の住人達であった。そこは監獄惑星で、住んでいるのは全員男の囚人と職員だけ。女性の登場に騒然となる監獄の住人達だったが、その裏で、脱出艇に忍び込んでいたフェイスハガーは囚人の飼い犬に寄生していた。犬から生まれたまったく新しいエイリアンの誕生。今度は監獄を舞台とした地獄絵図が繰り広げられる。そして、リプリーは自分に起きたある異変に気づく・・・。


 まぁなんというかとんでもないコトをやってくれたものだと私は冒頭怒ってしまった。
 あれだけ苦労して、エイリアン2の一本を使ってようやっと手に入れたリプリーの幸せは、いともたやすく奪われてしまった。
 残酷にもほどがある。
 それはニュートの死だ。
 あまりにも可哀想で、これだけで私のこの映画への評価は15点は下がっている。
 たしかに今回の作品にニュートがいては邪魔になるし、緊迫感、孤独感が損なわれるだろう。
 ニュートが死ぬことで、リプリーの思いはラストへ向けて変遷を始めるのだから、必要だということもわかる。
 しかし2を観て感動し、ラストシーンでリプリーとニュートの幸せを祈った観客としては、裏切られた失望感は正直のところ隠せない。
 冒頭にこのショッキングなシーンをあえて用意して観客の度肝を抜き、そのあと度肝を抜かれた観客達をちゃんと満足させ、エキサイトさせるだけのものが本編に用意されているのかというと、少々疑問が残ってしまう。
 それだけ私にこの冒頭シーンは残酷でショッキングだった。
 一応補足しておくと、これは2を観て一発でニュートファンとなった私の偏った観方である、ということも説明しておかなくてはなるまい。
 本来このブログでは否定的な表現は避ける方針であるのだが、まぁしかしこれだけは触れておかないとウソも甚だしいと考え、悩み悩んでここに記すことにした。

 エイリアンを一匹に絞り、物語を単純化することで原点回帰をし、より深いストーリー性を追求した感のある本作。
 本筋となるのはエイリアンとリプリーの関係であり、リプリーがどう結論をつけるのか、そこに一点集中している。
 リプリーはエイリアンに対し、どこか奇妙な親しみすら感じてしまっているのではないかと思わせるシーンもあって、感慨深いものがある。

 今回のエイリアンは犬を宿主にして生まれており、体型も獣的で非常にすばしっこく凶暴。
 2ではある程度エイリアン同士コミュニケートを取り、リプリーが卵に銃を突きつければクイーンがひるんだりと多少高等知能生物らしい表現すら生まれていたが、それを廃して今回は本能のままに殺戮を繰り返す凶暴な殺人野獣となった。
 今まで以上にスピーディーで神出鬼没。
 逆さに天井を駆け巡る運動能力は目を見張る。
 このエイリアンの視点で逆さになりながら、物凄いスピードで犠牲者を追いかけてゆくカメラワークが面白い。

 1、2とギーガーのイメージを前面に打ち出してきたエイリアン・シリーズだが、本作はまったく違ったイメージとなっている。
 舞台を不潔な監獄とし、巨大な溶鉱炉が真っ赤に燃える鉛を鋳型に流し込んで、轟々と煙を噴出していたりするのが印象的。
 あちこちに長い長い巨大な排気トンネルが張り巡らされていて、エイリアンはそこを縦横無尽に駆け巡っている。
 このどこもかしくも錆びた鉄の塊な、広大な監獄施設のイメージが、今回の統一ビジュアルだ。
 今までのグロテスクで生理的な恐怖のイメージはエイリアン一体に担わされており、これまでの作品のファンには少々がっかりする人もいるだろうが、私はこれはこれで新鮮で面白かった。

 またこのエイリアン3を観てない人でも、シガニー・ウィーバーの丸坊主のポスターは見たことがあるだろう。
 この監獄惑星は非常に不潔で、そこらじゅうにシラミがわんさかいるので、囚人も看守もみな坊主頭にしなければならないのだ。
 このエイリアンシリーズに共通して言えるのが、どこもかしくも悪環境。
 いつも砂嵐が吹き荒れていたり、土砂降りの雨だったりする。
 ハードなSF世界にこういう設定は欠かせない。

 今回はこういうハードな世界を舞台に、囚人達、看守達とのトラブルが絡んでくる。
 今まで女性がいなかった惑星にひとり降り立ってしまったリプリー。
 せっかく欲望を切り捨てたと思ったらまたぞろ誘惑がやってきて恐怖するものもいれば、みさかいなく襲い掛かってくるものもいる。
 脱出艇や、死んだニュートの体にエイリアンが潜んでいると考えたリプリーを助けてくれるのは、この惑星でただ一人の医師だが、彼も彼で過去になにかわだかまりを持っている。
 リプリーはエイリアンの危険性を必死に訴えるが、所長は馬鹿にして聞こうともしない。
 今回のもうひとつの見所がこういったドラマだ。
 しかし、あまり深入りせず、短時間で切り上げて本編のエイリアンとの対決に戻ったのは正解。
 観客が求めているのはそっちなのだから。

 ラスト付近、今まで話にしか出てこなかった存在、エイリアンを軍事目的で利用しようとする企業ウェイランド社が登場することになる。
 彼らはエイリアンを捕獲し、利益だけを追求しようとしており、監獄惑星の囚人達の生命など意に介しようとしない。
 ここへきて、エイリアンはただの宇宙の生物に過ぎず、もっとも悪いのはそれを悪用しようとする人間ではないのかという仄めかしが見えてくる。
 皮肉な構図はなかなか面白い。

 終局、あるひとつの結論をつける本作だが、ここで終わっては私としては消化不良だったことだろう。
 なんといってもニュートの死は悲しすぎる。
 これを救ってくれるのは、4での新たな出会いだ。
posted by BOSS at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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