夏だお盆だホラーが見たい!って事で思いついたのが
『夏休みっ 納涼エイリアン祭り!』
エイリアン1〜4の一気観賞企画です。
ひと昔前はTVの洋画劇場などでもよく放送されたこの作品ですが、まともに最初から最後まで観たことはなかったんで、この際ちゃんと観てみようって思ったんですね〜。
まずは原点、エイリアン第一作。
SFホラーの代表的作品。
狭い密閉空間の宇宙船を舞台にした宇宙怪物ホラーもの。
ストーリーもホラー演出も面白いが、やっぱりH・R・ギーガーのグロテスクな世界がイマジネーションを刺激する。
辺境宇宙で、老朽貨物船ノストロモ号は正体不明の救難信号を受け取る。救助に向かった惑星は無人の惑星で、そこで隊員達は謎の異星人の巨大な船を発見。異星人がはるか昔に死に絶えてしまったと思われるこの宇宙船の内部を恐る恐る探索するうち、隊員の一人がなにか生物の卵のようなものが無数に並べられているのを見つけ出す。ここで彼はよせばいいのに近づいてしまい、卵の中から飛び出てきた「何か」に顔面に寄生されてしまう。意識を失った隊員を連れてノストロモ号に帰還し、顔面にとりついた奇怪な生物をはがそうとするが、その生物の体液は強力な酸で出来ており、傷つけると船体にダメージを負う危険がある。手をこまねいているうちにしかし、謎の寄生生物は自然に死に、宿主の隊員も息を吹き返す。だが、その隊員の体内ではもっと恐るべき宇宙の怪物が生まれ出ようとしていたのだ。
まさにSFホラーの原点といった感のある王道作品。
それだけに今見ると物語も恐怖演出も古典的で、逆に驚くほどに真っ正直だ。
唯一「おー、そういえばそういう設定だったな!」と驚く展開は船内にいた「裏切り者」のエピソードだったが、それもまぁ有名な話ですっかり私が忘れていただけだ。
が、それはもう今だから言えるような話で、1979年の公開当時を思えば全てが驚きだったのではないだろうか。
また古風ながらも、丁寧なつくりの脚本と演出でバランスがよく取れており、観客としては安心して観ることができる。
安心して観られるホラーというのも変な話だが、つくりがしっかりとした古い家の安心感のようなものだ。
ひとつひとつ説得力のあるエピソードが積み重なって出来上がっていく恐怖の世界は、そこに偽りのリアリティを生み出すわけだ。
このリアリティという話でこの作品が面白いのは、エイリアンをただの怪物としてではなく、ひとつの生物としてライフサイクルを想起させるような描き方をした点だろう。
卵からフェイスハガー、チェストバスター、そして成体へと、次々と姿を変えていくその仮定が、まるで昆虫の変態のようで説得力を持っている。
「もしかしたらこんな奴らがいるかもしれない」って思わせる存在感を持っているのだ。
映像技術においては、それは30年近く前であるので技術面では最近の作品とは圧倒的な差があるのだが、それをカバーするほどイマジネーションがあふれていて、古さをあまり感じさせないのが凄い。
むしろ逆に新しいと感じてしまうだけのインパクトにあふれている。
なんと言っても素晴らしいのは、いまさら言うまでもなくギーガーのデザインの独自性で、この生理的に訴えてくる独特の原初的な恐ろしさは他にはないものだろう。
現在、未だにこのギーガーの模倣、インスパイア類が世界中のモンスター・デザインに地位を得ている。
これを超えるインパクトのあるモンスター・デザインっていうのはなかなか生まれないだろうなぁっていうのが感想だ。
特に気に入っているシーンが、実は後半のホラーシーンではなく、冒頭、辺境の惑星で異星人の巨大な船を発見するシーン。
ゴツゴツと謎めいた奇岩が一面にひろがる荒野の向こうに見えてくる、異様な形状の巨大すぎる物体。
恐る恐る近寄っていく隊員たち。
その宇宙服についたカメラから送信されてくる質の悪い映像で、驚くべき異様な物体の映像を見つめる救命艇の隊員。
近寄っていく隊員の視点と、救命艇の隊員の視点を交互に、この異星人の船の発見を描いていく。
現地隊員の視点では全体が見えないもどかしさはあるし、なにが飛び出てくるかわからない恐ろしさもある。
かといって救命艇に残った隊員の視点じゃ、カメラはノイズだらけでほとんどなにが映っているかわからないというジレンマ。
徐々に近づいてゆくと、その恐ろしく巨大で異様な形状の物体は、なんらかの人工的な、しかしどう見ても地球人類の手によるものではないものであることがわかってくる。
それは「異質」のかたまりであった。
このイメージが素晴らしい。
ギーガーによって描かれたスケッチをもとに作られたシーンなのだが、このイマジネーションはショッキングだ。
演出の妙とギーガーのデザインがドッキングした非常にいいシーンとなっている。
古典といえば古典だし、古臭いと言えば古臭いのだが、改めてみるとやっぱり面白い。
まだ観てない人はとりあえず観ておいて損ないと思いますよ。
最近の作品と比べたって遜色なしの面白さです。
ところでこの作品、DVDでは2バージョンあるらしく、わたしはレンタル店にあったディレクターズカットではない通常版で観たのだが、字幕スーパーの出来があまり親切ではなかった。
あきらかに画面の人物のセリフを飛ばしているシーンが多々あり、英語さっぱりな人は多少ストレスを感じるかもしれない。
オススメは吹き替え版。
故・富山敬や榊原良子、納谷六朗、郷里大輔という往年の大ベテランたちが共演しているので、古い声優ファンには垂涎モノ。
古い映画って吹き替え版も楽しいんですよね〜。