2007年08月14日

映画感想 隠し剣 鬼の爪

満足度85点(レンタルDVD)
 「たそがれ清兵衛」につづく、藤沢周平の小説を原作とした山田洋次監督時代劇第二弾。前作と舞台を同じに、人物配置、ドラマ展開も少々似ているものの、作風をガラッと変えてきた。



 「たそがれ清兵衛」の事件から数年後(?)の海坂藩。貧乏侍の片桐宗蔵(永瀬正敏)は雪の日、以前奉公人として雇っていたきえ(松たか子)と街中でばったり再会するが、突然泣き出すきえの様子をその後もずっと気がかりにしていた。雪も解けだす頃、嫁ぎ先で姑からさんざんにいじめられていたきえはついに倒れ、それを知った片桐は強引にきえを離縁させて連れ戻す。つかの間の、まるで夫婦のような生活にきえも笑顔を取り戻す。しかし、城中で悪い噂が立ちはじめ、片桐はきえを、彼女のためにも田舎へ帰るよう説得する。と、その頃、大事件が勃発。藩の剣術指南役門下生として片桐とは互いに腕を競い合った仲である、狭間弥市郎(小澤征悦)が、謀反のかどで捕らえられる。片桐は牢から脱走したこの狭間を討てと命じられるのであった。

 原作を、同じ藤沢周平小説の『隠し剣 鬼の爪』『雪明り』からとっており、本作品も剣豪ドラマ部分と男女の淡い恋愛ストーリーのふたつからなっている。
 このふたつが有機的に結合し、片方が片方のドラマ進行のきっかけを生む形となっているわけだ。

 前作はしっとりとした情緒深い物悲しさで全体が包まれていたが、今回は打って変わって明るい。
 やはり根底に根ざしている人間観、人を思う心のあたたかさや、真っ正直に生きる人物の美しさのようなものは変わっていないが、表現が軽妙であまり重々しくはしない。
 随所に笑いやコミカルな役者の動きを交え、観客としては前作よりも肩の力を抜いて観ることができるタイプだ。

 もっとも重いのはやはり剣劇部分だが、前作のような『殺し合い』というタイプではなく、『果し合い』という形になっている。
 達人同士の仕合というには、だいぶ双方ヘトヘトになってしまったりして綺麗にはいかないのがやっぱり山田洋次なのだが、今回はひとひねりあって、決闘前に片桐は師から必殺剣を伝授される。この剣の手口を観客は丁寧に二度にわたって見せられるので、はたしてこれがうまくいくのかどうかと、期待しつつ、固唾を呑んで見守ることになる。

 前作登場した役者から、小林稔侍田中泯神戸浩が続投。
 田中泯は前作とうってかわって剣の師匠役だが、あの存在感のある低い声の味は健在。
 小林稔侍も違う役名だが非常に似通ったキャラクターで同一人物かと思ってしまった。よく観ると、性格がちょっと違ってこっちは悪人っぽいんですね。
 前作で実は一番のお気に入りキャラであった中間(ちゅうげん)直太の神戸浩は、なんと同名の直太で登場!
 あのちょっとネジが一本足りないような、いつも酔っ払ったような愛嬌のある、微笑ましい独特のキャラクターですね。
 この直太がいろいろな場面で画面のはじっこをかざってくれていたのが嬉しかった。
 きっと『たそがれ清兵衛』のあと、運良く片桐家に雇われたんでしょうね〜。

 前作を静のドラマとするならば、こちらは動のドラマ。
 主人公片桐は「それはちがう!」と思ったら相手がなんと言おうと正しいと思うことを言ってしまうし、そのままやってしまう。
 そこがかなり爽快で、観ていて胸がすっとする。

 また本作のキーワードと思われる「身分」という仕組みだが、これを「片桐と藩」「片桐ときえ」の二重構造で見せてくれる。
 一筋縄には行かないが、なかなか興味深く、そして味な結論へ持って行ったなと私は思った。

 松たか子はしかし元気はつらつだなぁ〜。
 冒頭病気に臥せっている演技が無茶に思えてしまうくらいピッチピチなのだが、農村で元気いっぱい働く彼女はじつにしっくり来ていた。
posted by BOSS at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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