2007年07月26日

読書感想 グイン・サーガ外伝21

 『グイン・サーガ 外伝21巻 鏡の国の戦士』 栗本薫 ハヤカワ文庫

 外伝ですら21巻というそれだけでも長編だっつーのなグイン・サーガですが、そんなことはまぁ何を今更な話ですね。

 今回はグインを主役として、外伝1巻「七人の魔道師」の後のエピソードを描く3話オムニバス。
 本編では現在グインが放浪中ですが、こののちどうにかケイロニアに帰還し、しばらくして「七人の魔道師」事件が勃発。そしてこの話へとつながるわけなので、読者の意識としてはだいぶ未来のお話。
 当然先の気になる読者としては「現在のあの人はどうなってるの!?」とか「あのひとはまだ生きてるの!?」とかまぁいろいろ心配になって、グインらのセリフに聞き耳を立ててしまうというというオマケ要素つき。
 ある種未来の予言の書のような位置でもあるんですね。

 また最近はイシュトナリスが主役だったり、グインが主役でもほとんど本編と変わらない(むしろ本編でやったほうがいいんじゃない?)ようなキタイ編やらで、グイン主体の外伝らしい外伝は久方ぶり。
 期待は高まります。

 第一話は鏡合わせの魔の刻限のいたずらか、異世界に迷い込んだグインが遭遇する異形の怪異の話。
 第二話は何者かの魔法によって愛妾ヴァルーサをさらわれ、それを追って謎めいた闇の世界に奥深く、グインがどんどんもぐりこんでゆく話。
 第三話はついにグインに待望の嫡子が生まれようとする前日、その胎児が母体から忽然と消えうせる怪異とその意外な謎の正体。

 どれも外伝5「時の封土」あたりのいかにもなヒロイック・ファンタジーの雰囲気で嬉しくなります。
 物語のタイプとしては第一話が楽しく、アイテムや舞台の趣向で言えば第二話、そしてキャラクターたちの面白さで言えば第三話と、それぞれ違った醍醐味が味わえるのも特徴。
 安心して楽しめる短編集となっています。
 また、本編へのドキドキな伏線を引いていたりして、あいかわらず意地の悪いことをしてくれますw

以下ネタバレ注意!



 第二話は正直途中かなり単調さに退屈になりかけたのですが、ラストの本の中に閉じ込められて挿絵のようになっているグインというビジュアル・イメージがなかなか面白く、けっこう気に入った一本となりました。

 第三話はなによりハゾスが活躍したのが嬉しい。
 2人のグインのうち、どちらが本物か見破ろうと、問答を問いかけるあたりがギリシャ神話やエジプトの説話を髣髴とさせるようなとんち話となっていて面白い。
 最近地味化していたイメージのハゾスでしたからねぇ。久々に能臣らしさが発揮されてこれは嬉しかった。

 さて、ここからは私の邪推ですが、この一冊はもしや栗本薫御大の野望というか欲望のようなものが感じられて仕方ありません。
 第一話のカリューにしろ、第二話の闇の女王にしろサリューにしろ、偽りの世界にグインという超絶パワーを取り込んで実在する確かな世界にしたいという邪念で悪さをしかけました。
 これって栗本薫自身の、意識するかしないかにかかわらず、妄執か、本能のようなものなのかもしれないって・・・ちょっと思えちゃいます。
 グイン・サーガという既に本編外伝あわせて130冊以上に上るファンタジー世界を描いてきて、膨大な情報量は既に実体化寸前のところまで積み重なり、栗本薫自身公言してはばからない通り、彼女の頭の中には本当にその世界が存在するんですよね。
 あとがきなどによれば、作者は作者ではなく、すでに自動筆記マシーンとなって、どっかから電波で飛んでくる信号を受け取って原稿に写し取っているに過ぎないのだそうな。
 まぁ話半分、ウソ八百だとしても多少やっぱり本音というか希望みたいなものも入っているでしょうからね。
 グインの世界は、栗本薫にとっては、もうすっかり「そこにある世界」なんですね。
 いかに、そこに実在化させるかに取り憑かれているのが栗本薫なのかもしれません。
 自分の描く世界を実在化させたいという欲求は、もしかすると栗本薫という作家にとってもっとも強烈な欲求なのかもしれません。
 とすると、今回のグインを罠にはめてきた妖魔、物の怪こそが、栗本薫の分身…いや本性と言っていいのかもしれませんね。
 カリューや闇の女王のセリフを読むにつけ、そんな気がふとしてきました。
 挿絵となったグインを前に正体を現すトカゲの化身サリューは、作品を前に舌なめずりする栗本薫そのものという趣です。

 またそうすると、ずっとグインに見惚れていたいっていう第三話の鏡の化身も、栗本薫の一部なのかもなぁって思えてきますよね。

 ……考えすぎですかね?w


 ところで……


 シルヴィア死んだのかぁああ!?

 うぉおおおお!!!

 そこが一番大事じゃないかぁあ!!


 本編では死んだとは一言も言ってませんが、もしかすると幽閉とか、流刑とか、国外逃亡とか、亡命とかして、なにやら少なくとも失脚したのは間違いない様子。
 やたらと過去形で話されるのですもの。
 あ〜、そうかそうか…あのサイロンのケイロニアワルツの夜の頃を思うと、なんとも悲しい話だなぁ〜。

 しかし、そんな超大事な伏線をさらりと外伝で引いてしまうあたり、グイン・サーガって面白いなぁ〜。
posted by BOSS at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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