今までの物語がひとつの集大成を迎える。
物語はまだまだ続くが、大きなエピソードがひとつ終わったな〜って感じで感無量。
本当は21巻まで読んでいますが、長くなったのでとりあえず19巻のみの感想。
ネタバレ注意!
過去感想はこちら→1〜3 , 4〜6 , 7〜9 , 10〜12 , 13〜15 , 16〜18
オニ星人最後のボスを倒し、一般人からの大喝采。
そして黒い玉の部屋に戻る。
そこからがすばらしい。
なかなか帰らないオッチャンと坂田を心配するくだり。
帰ってきたオッチャンの「今回も生き残れた・・・ 今回も・・・・・・」という安堵。
やはり今回の激戦はいつにもましてハードだったんだなぁ〜と噛み締める思いです。
「生きてて良かった・・・」という思いが本当に伝わってくる。
そして互いが互いに支えあい、心配しあっているものたちの絆が暖かい。
採点が始まり、次々と100点取得者続出。
そのメンバーが、和泉を除き皆誰かを生き返らせることを選択。
もしかするとドライな坂田などは、桜井が死ななければ今回で抜けていたかもしれない。
だが、死んだ桜井を復活させるあたり、ドライなふりして意外と心は熱いんですねぇ。
「もっかい最初からやろうや・・・・・・ な・・・・・・」のあたりがグッとくる。
この師弟2人の絆、ほんとうにいいですね〜。
そして意外にも、玄野をひそかに想うレイカが、タエちゃんを復活させる。
これにはびっくりしましたが、玄野へのレイカの想い、そして玄野の喜びと復活したタエちゃんを思うと、こみ上げてくるものが止まらなかった。
レイカは玄野をこの闘いから解放してあげたいのですね。
100点取った玄野はあきらかにこのままだとタエちゃんを復活させてしまうから、それで100点消費して解放はまた次になってしまう。
それではまた危険な闘いが続くだけ。
だからタエちゃんをレイカが復活させ、玄野には玄野自身の点数で闘いから解放されて欲しかったわけですね。
玄野のコトを想いつつ、タエちゃんへの玄野の想いも理解している、かなり複雑な心理状態のレイカですが、これもひとつの愛の形かと、そんなところなのではないでしょうか。
このへん、女性読者だとかなり違った意見が出そうですが、男のわたしからはそう受け取れて素直に感動しました。
レイカ、いい女性じゃないですか。
ここまで玄野一途の恋愛一直線って印象が強かったレイカでしたが、わたしはここで見直しました。
そして、なによりも
タエちゃん復活!!!!!
よかった〜。よかったなぁ〜〜。
本当に心から嬉しいですよ。
あんなに心根の優しい善良な娘が、闘いには何の関係もないのに無残に殺されてしまうなんて耐えられることではありません。
玄野にとっても、いまやタエちゃんはかけがえのない魂の一部。
彼女を失うことは半身をもぎ取られるにも等しかったんですよね。
初めの頃、自己中心的な子供のように戦ってきた玄野の目を開かせ、はじめてタエちゃんのために生きて帰りたいと思った娘なんです。
玄野に感情移入しても、そうでなくってもこの娘の死は痛すぎた。
漫画のキャラクターの生き死ににここまで入れ込むのも久しぶりですが、タエちゃんの死は痛ましいというか不条理というか、悲劇って言葉で片付けられない痛みでしたから。
タエちゃんのためにも、そして玄野のためにも、本当におめでとう! よかったね!
心から祝福したいと思います。
ガンツ、いい話を用意しているなぁ〜。
次に、こちらも意外と稼いで100点を取ったおっちゃん。
加藤を復活させてくれました!
これにも感動!
ガンツワールドの元祖ヒーローというか、意図したわけではないにしろ玄野を自らの死で目覚めさせ、そしてその後ずっと玄野の目標でありつづけた加藤の復活!
なんだか最初の頃のストーリーが一気に走馬灯のように思い出されて大いに嬉しかった。
よかったね加藤〜。
玄野が引退しても、加藤がいれば心配ないよね〜。
まさに、これにて加藤と玄野の勇気の物語はぐるーっとまわって一回転し、友情の物語へと昇華したわけですね。
そしてやっぱり加藤なんだな〜って思うのが、おっちゃんへお礼するくだり。
あ〜やっぱりこいつは変わってないなぁ〜。本当にいいやつだなぁ〜って思わせてくれます。
そしてこのいつも心の温かいおっちゃんも、本当にいい人だなぁ。
ただの冴えないおっちゃんと思いきや、本当に皆のことを思ういい人ですよ。
玄野やレイカ、桜井などのメインメンバーだけじゃなく、ちょっと軽んじられそうなイナバのことも「生きてたね・・・ ホントによかった・・・」って迎えてくれてます。
温かさだけじゃなく、戦いの中では意外と激しいところも見せてくれて、仲間を怖気づかせない最後の砦を演じようともしてくれたり。
リーダーじゃありませんが、おふくろさん的存在と言いますか、よいムードメーカーになってきてますよね。
また、きんにくらいだーこと風も自分の点数で誰かを復活させていいと提案。
風の目線の先には、幼いタケシ。
自分がこの戦いから解放されてしまえば、間違いなく次の戦いでタケシは死ぬでしょう。
彼も、ついに誰かのために生きることを選択したんですね。
戦いに生き、最強をめざすことしか考えていなかった彼が、生まれ変わった宣言をした瞬間でした。
これにも胸が熱くなりましたね〜。
玄野のまわりには、なんていい人たちが集まったんでしょう。
レイカ、おっちゃん、坂田、桜井、風、そしてもちろん加藤。
みんな誰かを思い、誰かのために戦い、生き残ろうと必死です。
利己的な人間は不思議と生き残れないこのガンツストーリー。
誰かのために戦うものこそ強いってことなんでしょうかね〜。
風のポイントを使って復活させたのが西ってのも驚き。
岸本でも格闘ねーさんでもなく、嫌われ者の西とは。
玄野は、残るみんなのために戦力として、情報源としてもっとも助けになるのは西だと思ったんでしょうね。
岸本でも、他の誰でも、もしかしたらまた死ぬだけかもしれませんし。
西なら、変化しつづけるガンツの戦いについて、何か助言を得られるかもしれない。
そうすれば、こうやってタエちゃんや加藤を生き返らせてくれた皆を死なせないために助けになるかもしれないって思ったんでしょうね。
もっとも仲間のためになる選択肢とはなにか・・・・・最後まで岸本って言いかけたようですが、苦慮の末の決断だったんでしょうね。
そして玄野は拍手で送られながら、涙の別れ。
みんなのあたたかい気持ちが嬉しすぎる。
この仲間たち、口には出しませんがどこかで玄野がいなくなることに不安はないのでしょうか。
実際不安はあるでしょう。
玄野の経験、戦闘能力、リーダーシップは今までのガンツチームの勝利を生む大きな原動力だったことは誰の目にも明らかですから。
でも玄野自身が、これまでどれだけ苦労をし、タエちゃんを失うという悲痛極まりない体験をして心をズタズタに引き裂かれてきたことは、みんなわかっているんですね。
だからこそ、これ以上リーダーに無理をさせたくない。
そこではみんな一致団結なんです。
みんな玄野のことが大好きなんですね。
「・・・俺なんかに・・・ ついてきてくれて・・・ ありがとう・・・」
と涙する玄野。
これまでの長い物語のいろいろなエピソードがつまった、いいセリフですね。
もうこのあたり、涙腺最弱の私としては星飛雄馬状態。
涙で紙面が読めなくなりましたw
記憶を失って日常に帰ってきた玄野とタエちゃんのエピソードも、涙なしには読めません。
ベッドの下にあった、タエちゃんの描いた玄野の肖像画を見て、記憶がないながらもわけもわからず涙があふれてしまう玄野。
これはガード不能のパンチでした。
同じくタエちゃんも、記憶がないながらも部屋のあちこちにある玄野の写真を見てあふれる涙。
紆余曲折ありながらも最後は手をとりあう2人。
苦労は多いでしょうけど、この2人ならきっと大丈夫って思わせる最高の結びかたですね。
そしてこれまた最高なのがラストのおっちゃんとのホームでのくだり。
1巻での、道をたずねる老婆を手厳しくあしらった玄野のシーンを、偶然にもおっちゃんが道を尋ねることで繰り返してしまう。
かなりドキドキしましたよ〜。
記憶を失って、玄野は成長した経験まで忘れて元のもくあみになってるんじゃないだろうかって心配しました。
ページをめくって本当に安心。
これがあの1巻の玄野と同一人物だろうかっていう、やさしい表情と親切な対応。
記憶を失っていても、ちゃんと今までの物語で積み重ねてきた経験、決意、人を思う心といったものが、ちゃんと玄野のなかで生きているんですね。
もしかしたら、最初から玄野はこういうこともできたのかもしれない。
別に玄野が別人に変わったわけじゃなく、秘めていた要素が、この長い戦いと悲劇のなかであらわれて出てきただけなのかもしれませんね。
あの、冷淡で無感覚、自己中心的だった玄野は、心の使い方がまだわかっていなかっただけ、だったのかもしれません。
自分の表し方、他者へのアプローチの仕方がつかめていなかっただけなのかもしれませんね。
そしてまた、大切な守りたいなにかを持つことが、どれだけ大きなものかっていうことですね。
なにはともあれ、象徴的な1巻への回帰的エピソードで大団円のムード。
これにて、1巻からきた玄野の成長物語は終わった印象ですね。
実際は20巻でも玄野の活躍はありますが、それは新たな21巻への序章といった位置合いの様子です。
この19巻は実に心に響く巻でした。
連載中の漫画にこういうことを言うのもなんですが、現在、ガンツで最高の巻を上げろって言われたら、私は迷うことなくこの19巻をあげます。