殺人鬼ジグソウが帰ってきた。
後ろめたいものを持っている人を監禁し、失敗すると残酷な死の待つゲームをさせる彼のやりかたは健在。
今回はそのジグソウが冒頭逮捕されてしまう。
だが本当のゲームはそこから始まるのであった。
意外な結末へと持ってゆく脚本のうまさは相変わらず。
今回はさらにジグソウ役の演技が素晴らしい!
注意!前作『ソウ』のネタバレを含みます!
物語冒頭で、今回はジグソウが逮捕されてしまう。
あれだけ警察を翻弄してきた彼にしては、なんともあっけない幕切れかと思われたが、それがゲームの始まりだった。
ジグソウの目の前にはたくさんのモニターが据えられており、どこだかわからないある場所が映っている。
そこには10名近い男女が監禁されていた。
そしてその中の一人は、ジグソウを逮捕した刑事の息子だったのだ。
男女には既に神経毒ガスが浴びせられており、あと2時間の命。
それまでにゲームに勝ち、彼らを救わなければならない。
前作『ソウ』は、密室の息詰まるような緊張感と圧迫感、ラストのどんでん返しとそれを構築する全編の巧妙な伏線に舌を巻いたものだ。
それだけに2を観るこちらも構えて観てしまう。
殺人鬼自身は手を下さず、死への最後の一押しをするのは被害者自身というなんともオソロシイ手法をどう生かすか。
期待せずにはいられない。
映画は二つの場面を行ったりきたりする。
閉じ込められた男女が脱出しようと館のなかをさまよい、次々と悪質な罠にかかってゆく血みどろのゲーム。
刑事とジグソウがくりひろげる一触即発の会話ゲーム。
映画を二重構造にしたことで、鑑賞中ほっとする暇なく緊張感が持続できた。
また、前作からのファンにも嬉しいことに、前作冒頭だけ登場した女性、アマンダが監禁された男女のなかに登場する。
彼女はジグソウのゲームただひとりの勝者。
彼女の行動こそがキーなのだが、慌てふためき自分勝手に行動する男女は彼女の言うことを聞こうとしない。
そこにイライラさせられてなかなか面白い。
おまけに前作のある場所も出てくる。
これは本編ではあまり意味はないのだが、ちょっとニヤリとさせられるシーン。
監督はファンの扱い方を心得ているようだ。
気に入ったのはジグソウ役のトビン・ベル。
彼の静かなクレイジーっぷりと、ずるずるひきずるような囁き声がよい。
今作いちばんの存在感だ。
彼の声が、前作のルールを知らせるテープの声まんまだったのが笑ってしまった。
てっきり機械で加工した声なんだろうと思っていたのに、実はあれジグソウの地声だったのねと。
肌が青白く、目の周りだけに赤いくまどりをしたように充血しているところが印象的。
なかなかのキャラクター像をつくったものだ。
今作はまた痛覚にかなり来る映画でもある。
前作のラスト付近もかなり痛覚にキたが、今回のジグソウの仕掛けがまた、痛いものが多い。
各人の感覚によって違うと思うが、私がいちばんキたのは「注射器風呂」だ。
使用済みで血まみれの注射器が無数に詰め込まれた落とし穴の中に、ひとつだけ解毒剤の注射器・・・というまさにジグソウなゲーム。
穴の中に槍ぶすまや毒虫や蛇、硫酸や溶岩という構図はめずらしくないが、この使用済みの注射器というのが実に現代アメリカらしい発想で怖い。
このトラップの意地の悪さは、1を超えていると言っていい。
1と2の違いは、冒頭シーンでも明らか。
1と2では生き残るために切り裂くモノが違うのだ。
このへんに今作のグレードアップがあると見た。
脚本面では、1の衝撃にはちょっと届かないかなと思わせるかもしれないが、充分満足のレベルだ。
ちゃんと最後に観客を何重にも裏切ってくれるし、これ以上は贅沢というものかもしれない。
前作があまりによかった続編というのはなかなかに制作側もプレッシャーだっただろう。
大満足というところまではいかないがかなり満足といったところ。
それも1と比べればというだけのことで、公平に一作品としてみれば非常に満足レベルなのだ。