K2登頂中に吹雪にみまわれクレバスに落下、遭難した妹を助けるために、登山家としては引退していた兄が立ち上がる。
劣悪な条件と切迫するタイムリミットのなか、過酷な登山が始まる。救助活動は成功するのか・・・。
主人公兄妹は、父と3人のロッククライマー。
ある日、事故に巻き込まれ3人が一本の命綱にひとつらなりにぶら下がることになる。
最も下にぶら下がることになった父は、3人が掴まっていてはロープが持たないから、自分を切り離せと言う。
切迫した状況のなか、必死に制止する妹を無視して、兄は父のロープを切り離す・・・。
数年がたち、場所はヒマラヤの麓。
妹はアメリカ企業がスポンサーにつく大掛かりな登山チームの一員となっていた。
これとは反対に、兄のほうは既に登山家としては引退し、個人の山岳カメラマンとなって気ままにやっていた。
兄と妹は、会ってもどこかぎこちない。
やはり父の死が、重くのしかかっているのだ。
K2登頂を目指し、出発する妹と登山チーム。
それを見送る兄。
だが悲劇が起きる。
強引に登頂を目指す無謀な計画のために、登山チームは吹雪に襲われ、クレバスに落下し遭難してしまう。
兄は、メンバーをつのり、妹を救出にむかおうとするのだが・・・。
壮大な山々のそそりたつ岩壁、絶壁、雪原、青空。
K2の厳しい大自然の映像の迫力だ。
高所恐怖症の人はきっと楽しくて仕方ないだろう。
存分に足の下がゾクゾクする感覚を味わえること請け合いだ(爆)。
ストーリーの小道具にニトロを導入したのもうまくいった。
とかく吹雪や雪崩、落下イベントくらいしかなく単調になりそうな登山物に、いつ爆発するかわからないヒヤヒヤと、大爆発のド迫力を加えることで面白みが増した。
おかげでリアルな登山物というより、アクション物の風味が増したが面白ければよかろうなのだ。
作中、大小いくつもの「自己犠牲の精神」が描かれる。
冒頭の父しかり、妹を助けに行こうとする兄しかり。
何人もの登場人物が、それぞれの大切なもののためにそれぞれのやり方で身を挺し、他者をたすけようとする。
それが実に熱く胸に来る。
切迫した状況で、じっくり考える暇も議論する余地もない場合、他に手段が見当たらずどうしようもないのなら、他者を助けるために迷うことなく自分が犠牲となる。
あまりこういったことを賛美してしまうと危険だが、でもそういうことが出来てしまうというのは素晴らしいことだと思う。
作中これと対比として現れるのが、登山チームの中心人物ボーンだ。
野心家で自己中心的で想像力をもたず、いざピンチになると他者を押しのけ手段を選ばず自分だけで生き残ろうとする。
彼の傲慢で一見魅力的な、パワフルなヒーローを演ずる姿は、そのまま「カウボーイの醜悪な側面」だろう。
暗に現在のアメリカの醜悪な一面を批判したかったのではないかと、少々うがった観かたもできるだろう。
主人公たち、熱い精神を見せる彼らもカウボーイ。
誰かのため、身を挺してまで助けようとする精神もやっぱりカウボーイのかっこいいもうひとつの側面ととらえられる。
「カウボーイの子孫たちよ、昔を思い出せ」っていうそんなメッセージに取れた。
だがまぁそんな事を考えずとも、この映画は単純に面白い。
またこの映画の監督、いきなりめったやたらとドデカイ音を出して観客をびっくりさせるのが好きだったりするようだ。
静かなシーンがしばらく続くと、いきなりニトロがドーーン!と来たりする。
家族で観ていたのだが、うちの母親は本当に飛び上がった(笑)。
カップルで一緒に鑑賞する場合は、うっかりと飛び上がってかっこ悪いハメにならないよう要注意だ。