2007年06月30日

コミック感想 ホムンクルス 8

 当初ナイトメア・ハンターのネタに使えるかな?って動機で読み始めた漫画だったりします。
 ビッグコミックスピリッツで不定期連載中。作者山本秀夫は「殺し屋1」が有名。

 トレパーネーション(頭蓋骨に小さな穴を開ける手術)によって、人の心の歪みを視覚的に見ることが出来るようになった男・名越進が、次々と心に歪みを持った人間たちと出会い、葛藤しながらその歪みを取り除いてゆく物語・・・と思いきや?
 てな内容ですが、今回は・・・・・・

ネタバレ注意



 この漫画、まず面白いのが「人の心の歪みの視覚化:ホムンクルス」ですよね。
 自分の心を誤魔化して、心理的に武装している人は、ロボットみたいに見えたり、首を絞められたことがトラウマとなってる人はジャミラみたいになってたり、そういう表現がまず目を引きます。
 次はどんな表現をしてくれるんだろう・・・って期待しちゃいます。
 妙な表現があると、「これはどんな意味があるんじゃろう」ってこちらの脳が刺激される。
 読者側も心理学者になったような気分を疑似体験させてくれるのが、この漫画のミソなのでしょうか。

 で、今回は名越、この能力をとことんまで使おうじゃないかって気概です。
 トレパーネーションの施術者である伊藤もやっぱり心に歪みを持つ男。
 この男とのトコトンまでの「心の戦い」が今回のテーマ。
 8巻目はまるごと伊藤との対話だけで進むので、読む人によっては「ダレ」て感じるかもしれませんが、わたしはこの「トコトン感」がよいですな。

 表現としては、伊藤と名越の会話→ホムンクルスの微妙な反応→会話→ときにホムンクルスの変化の繰り返しですが、徐々にホムンクルスが正体を現していっているようです。
 見えてくるホムンクルスのちょっとした動き、変化だけをたよりに伊藤の心、ひいては自分の心の歪みに肉薄してゆこうとする、その過程が興味をそそります。

 伊藤の言葉だけを聴いていると、すらすらと理論的で理性的な男を装っていますし、名越をバカにしたような、わかりきったような物言いをしています。が、実は名越はその内部が透けて見えている。言葉のウソが見えてしまう。伊藤も見られているということが分かっているから必死です。
 今までは、ホムンクルス側の人間はホムンクルスを見られているということを知らない一般人でした。が、今回は特別。見抜かれていることを知っている人物です。そこが刺激的なのですね。

 私の身勝手な予想ですが、この伊藤のホムンクルスのキーワードは「装う」ではないでしょうか。
 名越は「美」?「オカマ」か?と読んだようですが、どうも違うように思います。
 透明になったのは、名越に見られたくないからじゃないでしょうか。
 「人間が知りたい」と言いながら、「本当の自分は知りたくない」のが伊藤なんじゃないでしょうか。
 グッピーという美しいものに憧れて、それを自分と同化させているのも、「そうありたい自分」なのではないでしょうか。
 だから、「気持ちわりぃ・・・・・・」のセリフに激烈な反応を見せ、さらなる変身をとげたと・・・そう理解しました。

 つまり、名越もそうであると。
 彼はひとりの時に気を抜くと東北弁(?)が出てしまいますよね。東京に出てくる際に整形もしたようです。
 彼にとっての昔の自分は、絶対に見たくない自分なのでしょう。
 相手のホムンクルスを取り除くと、自分に移ってしまうという今のところ謎につつまれた現象は・・・・・・実は名越自身が、自分を装い、ごまかすためにつけている鎧なのではないでしょうか。

 ホムンクルスを取り除かれた側は、今のところ2件だけですが、どちらもスッキリとした顔をして物語から去っていきます。
 ですが、名越の側はどうかというと、リンクした自分の歪みは除去される様子はありません。
 自身はっきりと認識したかもしれませんが、その重みがさらに増しているような気もします。
 ですが、これ自体がブラフなのではないでしょうか?
 実は、この2件のホムンクルスは、名越の本当に大切な歪みを覆い隠すための歪みなのではないかというのが私の読みです。

 本当に隠したい、自分でも見たくない歪みを隠すために手に入れた鎧が、2件のホムンクルス。
 本当に名越が抱えている深刻な歪みは、さらに深いところにあるのではないでしょうか。 

 もしそうとするならば、今回の伊藤という「装う」ホムンクルスを除去したとき、どうなるのかが興味津々ですね。
 名越が完全に「装う」ことになり、自分をごまかしきってしまうのか、それとも「装う」ものが剥がれ、自分の最深部にある本当のホムンクルスを見てしまうことになるのか。
 後者だと刺激的ですね。

 ・・・と書いてきましたが、こいつは完全な私の妄想なので、実際まったく別の話になったからって驚きませんがねふらふら
 ところでこのホムンクルスを読んだとき、まっさきに思い出した曲が少年、グリグリメガネを拾うでしたw
posted by BOSS at 14:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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