トム・クルーズ主演。ご存知ミッション・インポッシブルシリーズ第3弾。
爆弾を頭に埋め込まれ、婚約者を人質に取られたイーサン・ハントはどうする!?
魅力的な敵役や脇役たちが好印象。
捕らえられたイーサン・ハント。目の前には縛り付けられ、銃を突きつけられた女。
怒り狂った男が銃をふりまわしてハントを詰問し、カウントダウンを始める。
10数えるまでに言うとおりにしないと女は殺される。
観客は一切の説明ナシに、唐突に大ピンチから映画に放り込まれる。
無情にも10の声がひびき・・・どうなるんだ!どうなるんだ!というところで場面は一転、時間を巻き戻して、なんでこんなピンチになったのかを描いていくことになる。
今回は(今回もかもだが)まわりの役者たちの見せ方がなかなかよい。
敵役をはじめ、任務の仲間たち、上官たちと、なかなか魅力的でよい。
特に敵役、死の商人ディヴィアン役のフィリップ・シーモア・ホフマン(初めて知った)のキレっぷりが楽しい。
結束力の高いイーサン・ハントのチームメイトも良いし、邪魔したり協力してくれたりの上官2人の演技も深くていい。
冒頭イーサン・ハントが捕まっている展開へ帰結するために、きっと裏切り者がどこかにいるんだろうなと観客に思わせているため、どいつもこいつも疑わしく思えてしまい、結果役者達の動きに注目していくことになる。
意図的かどうかわからないが、おかげで脇役達が光ることとなり、逆にイーサン・ハントの魅力は少々押さえ気味となったのでは?というのが印象だ。
このシリーズに求められるのは、やっぱり厳重なセキュリティをかいくぐっての、チームでの息を呑むスパイ作戦だろう。
今回は残念ながら、大掛かりな作戦は少な目という印象。
前半でドイツの工場と、バチカンに潜入するのだが、これはあいかわらずの見事さで、大胆かつ繊細。
多少のアクシデントも機転で乗り越えるヒヤヒヤ演出も健在で、ミッション・インポッシブルだなぁと感じさせる。
だが今回はこれっきりで、後半バチカンとはうってかわって上海の超高層ビルに潜入する部分は思い切って途中経過が割愛される。
本編の目玉はここではないという制作側の判断だろう。
ストーリー上大きく主題っぽく出てくる「夫婦の信頼の問題」という面では、私にはあまり本質的には解決していないように思えた。
これは続編へもちこしのテーマかもしれない。もしあれば、の話だが。
あるいは観る人によっては意見が異なるかもしれない。これでいいじゃないかと、言われればそうかもしれないのだ。
それ以上に今回の注目ポイントが、時間軸が冒頭に戻ってきた瞬間のからくりだ。
観客は結果を知って映画を観はじめているので、予想しまくりだ。
10数えた瞬間に人質にとられた婚約者が殺され、ハントの頭には爆弾、では話が終わってしまう。
どううまい具合に解決するのか、そこまで全編観ながら観客の頭にはそればっかりがある。
それをいかに裏切ってさらに上をゆくのか。
この観客と制作側の戦いが、実は今回の影の眼玉なのだろう。
それに比べたら、アクション部分や「夫婦の信頼」、国際社会の力学や諜報機関の内部事情などは味付けに過ぎない。
少なくとも私は、今回のからくり具合には満足だ。
少々残念なのがその後。
からくり披露が終わると、物語は急に力を失ってトーンダウン。
ここから大団円に向けてもうひと盛り上がりするんじゃないかな?と期待していたのだが、そのままスムーズに終了に向かっていく。
エキサイトする部分は用意されているのだが、これまでの盛り上げ方からするとスケールダウンをどうしても感じてしまった。
しかし全体的には安心して観れる出来のよい映画。
トム・クルーズって走ってるだけでカッコいいんだよなぁ〜。