秦の始皇帝暗殺をめぐる男女の物語。壮大な舞台と色彩美と舞踏のようなアクションに見とれる。
舞台は2000年以上前の中国。領土を広げ続ける野心的な巨大国家秦の王を暗殺するため、3人の剣士が暗躍していた。
誰も止めることのできなかったこの3人を、だがたった一人で討ち取ったものが現れた。
その男、無名(ウーミン)と名乗る地方役人は宮中に上がり、王に謁見することになった。
彼は10年修行して会得した、ある必殺の技によって3人を討ち取ったという。
だが、彼の心中にはあることが秘められていたのであった。
ジェット・リー主演で、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーと豪勢な顔ぶれ。なんともゴージャスに描かれる一大剣侠絵巻。
セットも群集もとにかく壮大。この迫力が中国か。
色彩豊かな画面構成に衣装芸術がまず目を引くところ。
この色彩演出がただ単に綺麗に見せるだけで終わらず、ちゃんと意味をなしているのがよい。
話はちょくちょく巻き戻り、回想シーンの人物がさらに回想したりするのだが、シーンごとに基調となるカラーが決まっているので、ああ今は服が白だからあのシーンに戻ってきたんだなとわかりやすい。
アクションシーンは、実は私、ワイヤー・アクションの多用は、リアルじゃないのであんまり好きではないんですが、今回のはけっこうOK。
というのもこの作品において、アクションは血みどろのリアルなファイトではなく、優雅な舞踏のようなひとつの動きの芸術という位置づけのようなのだ。
飛び散る水滴や流れる長髪、ふわりふわりとたなびく袖がスローモーションで画面上を踊りまくり、そのなかをコマのようにくるくると回りまくる役者たちのアクションがこれまた綺麗。
重力を無視して空中を飛びまわる様も、スローモーションを多用して一幅の絵画として見せようとしているようだ。
ドラマ部分は力強さに欠ける感じも受けたが、全体に流れる悲壮感と、見ているとそれだけで満足な衣装とセットの色彩、舞を舞うようなアクションで、なんだか凄いドラマを見ているような気がしてくる。よい演出しているんだなぁ。
トニー・ジャーの「マッハ!」や「トム・ヤム・クン」で力の入る格闘技アクションを楽しんだあとは、こういったまったく違った切り口の品物も楽しんでよいかもしれない。