2011年05月10日

ジャンプ感想別室 ONE PIECE(ワンピース) 第623話 “海賊フィッシャー・タイガー”

 週刊少年ジャンプ2011年22号掲載分の感想です。

■ジャンプ本誌の感想はこちら→前編

【コミック派ネタバレ注意!】






 うおー! カヤってば美人さんになっちゃってー!
 このままゆくゆくは素晴らしい女医さんになっていただきたい。
 あと、新聞かなにかの切れ端が本にひっついてますが、これ、よく見ると麦わらの一味の指名手配写真なんですね。
 で、しっかりそげキングのところが中央にきてる。
 大量の求婚者を袖にしながら、ウソップの写真をみつめて一途に待ち続けているというわけですか。
 くそーう、ウソップの幸せ者めーーーっ!!!



【感想小タイトル】
■何も知らないから
■別れの時
■タイガー死す



■何も知らないから

 時はすぎ、コアラの故郷へのエターナルポースを手に入れた魚人海賊団。
 コアラはやっぱり女の子だったんですね。
 髪をとかしてもらい、女の子らしいワンピースを着せられ、なかなか可愛い子じゃないですか。
 でも、ちょっと困ると掃除をしだすという悪夢のクセだけは抜けてない。
 船医サラディン(イタチウオの魚人)によれば、こういうトラウマはそうそう簡単には消えるものではないとのこと。
 一見軽く描かれてますが、実に重い話です。
 そして今回は、この事が重要な伏線となっていたようです。
 

 そんな話に絡んでくるアーロン。
 アーロンの人種論は、この頃からすっかり作り上げられてきたものだったんですね。
 魚人と人間の憎しみの壁は絶対になくならない。
 たとえ何も知らない小さな子供でも、親から差別を学ぶ事で永遠にその壁は続いてゆく。
 どんな人間の心にも蔑みは潜み、そして魚人たちも人間達を恨み続ける。
 誰かがそれをブッ潰してしまわなければいけない。

 しかしその話に乗らないジンベエさん。

「わしにはみな

 いつも…脅えておる様に見える」


 おお、あの狂犬のようだったジンベエさんも、この旅の中で少なからず人間を見て変わってきたみたいですね。
 なぜそんなに人間が脅えるのか。
 それにコアラは答える。

「……だって

 何も知らないから……」


 無知こそが恐れの産みの母。
 奇しくもそれはオトヒメ王妃と同じことを言っている。
 小さな子供の口から出てくる真実って感じですねー。
 


■別れの時

 そしてまた時は流れて。
 すっかり仲良くなったコアラたちと魚人たちの幸せな日々。
 こう見ると、みんな気のいい奴らだなぁ。
 あの人攫いになったマクロたちも、この頃はコアラと一緒に遊んで小さな雪だるまを作ってたりするんですね。
 なんか、いろいろと想像して胸が締め付けられてしまいました。

 いよいよやってきた別れの時。
 船上ではコアラとの別れを惜しみ、号泣しちゃう魚人たちも。
 こういうところ、ルフィたちと変わりませんね。
 どの船にもどの船のドラマがあり、そしてどれも結局人と人。
 同じような「人のドラマ」なんですよね。
 魚人だってぜんぜん変わらない。
 なんだか、ルフィたちのこれまでの冒険も重ねて、彼らにも大切な旅の思い出ができたんだろうなぁと、いろいろと想像してしまいました。


 故郷に帰ってゆくコアラ。
 それを先導するフィッシャー・タイガー。
 手を繋ごうとするコアラと、それを邪険にしようとするタイガー。
 でも強引にコアラがひっついて、タイガーはヤレヤレって感じで……。
 なんか、いいですね。
 まるで親子みたいだ。
 切ねェ。

 そんな光景を見送りながら、あいかわらずなのはアーロン。
 コアラもどうせ大人たちにまぎれて、いずれ他の人間たちと同じになる。
 村で一人、魚人はいいヤツだと主張してもむなしいだけ。
 シビアなものの見方ですねー。
 しかし、すごくリアルでもある。
 アーロンの哲学は、やや視野狭窄の気味もあるとは思いますが、でもとてもリアリストだよなぁと思います。

 まぁでも、ジンベエさんやマクロの気分をおおいに害したみたいですが(笑)。
 いや、でもそんなところ、実はアーロンの照れ隠しっていうか、ひねくれた性分がさせたことで、実はアーロンもコアラのことは気に入ってたんじゃないかなーと勝手に妄想しちゃいました。
 だって、アーロンはコアラが「魚人はいいヤツ」って村の人に言うだろうって事を、疑ってないんですものね。
 このアーロンにして、コアラにだけは心を許したのかもなと思うと、なんだかジンとさせられてしまいました。
 心なしか、コアラを見送るアーロンの横顔も、優しく笑っているように見えるんですよね。
 うーん、考えすぎかな。



■タイガー死す

 ついに訪れる悲劇。
 コアラを村に送り届けた帰り道、フィッシャー・タイガーは海軍のストロベリー少将の部隊に待ち伏せされ、瀕死の重傷を負う。
 海賊船は落とされ、からくも魚人海賊団は海軍の軍艦を一隻奪って逃走する。

 海軍は事前に「ある島」の者から通報を受けていたということですが、この傍点で強調されている「ある島」ってのはどこなんでしょうねー。
 傍点がわざわざつけられているってことは、下手をするとコアラを送り届けてくれと言ってきたあの島の事なのかもしれません。
 コアラを送り届けておいてくれと頼んでおいて、それが罠ってどれだけ悪質なんでしょう。
 いやもちろん、最初から罠をしかけようとしてコアラを預けたとは限りませんね。
 内部に一人だけ恩知らずがいたということかもしれませんし。
 
 コアラはこのことを知るよしもなく、瀕死の床に倒れたフィッシャー・タイガー。
 血を失いすぎたタイガーを救う為には輸血しかないが、あいにく珍しい血液型のタイガーに合う血液は、軍艦にストックされていた人間のものしかない。
 なんと、これを頑として跳ね除けてしまうタイガー。

 なるほど、タイガーは、タイガー自身が奴隷だったのでしたか。
 天竜人に捕らえられ、数年の間に味わった地獄。
 その地獄が脳裏から離れず、それでマリージョア襲撃なんてことをしでかしたわけでしたか。
 おそらくなんらかの機会に天竜人とその奴隷の姿を目にしたんだろうなとは予想していましたが、まさか彼自身が奴隷になっていたとは思わなかった。
 口にも出さず、さぞやこれまでの日々、苦しんだ事でしょう。
 心の中に潜む鬼というのは、なるほど、その事だったのかとおおいに納得いたしました。

 また、コアラに向けられたタイガーの目は、自分を見るような目だったのかもしれませんね。
 追い詰められると、どうしてもトラウマが目覚め、掃除をしてしまうコアラ。
 それと同様に、タイガーはどうしても身体が人間の血を受け付けない。
 心の鬼が目覚め、邪魔をして、どうしても人間を愛する事ができない。
 タイガー自身が、実は非常に重いトラウマの患者だったというわけですか。


 かくして、死んでしまったフィッシャー・タイガー。
 理屈で考えれば、なんとも愚かな事です。
 物理的には、人間の血も魚人の血も一緒です。
 なのに、それを拒絶し、未来を捨て、仲間達を放り出してしまったことは愚かな事でしょう。
 これによって、この先救えたはずの人たちも救えなくなるわけです。
 私達は、この先崩壊してしまう魚人海賊団と、バラバラになった彼らの行く末を知っています。
 これもまた、フィッシャー・タイガーのこの愚かな選択が呼んだ結果かもしれません。
 でも、なかなかこればかりは責められないなぁと思うのですよ。
 天竜人がタイガーに植えつけたトラウマは、あまりにも残酷なものだったと――責めるべきは天竜人であると、そう考えるべきなのでしょう。

 なるほど、魚人島では、フィッシャー・タイガーは人間達から血液の提供を拒まれて死んだと語られていましたが、真相はまったくの逆だったわけですね。
 タイガーは、

「島に何も伝えるな!! 

 おれ達に起きた“悲劇”を!!

 人間達への“怒り”を!!!」


 と叫びましたが、でも、現実は真逆だった。
 こうして悲劇が悲劇を呼び、怒りが怒りを呼ぶ。
 魚人島と人間の誤解と無知からくる差別の壁は、どんどん大きなものとなってゆくのでしょう。
 悲しい負の連鎖です。


 ラスト、単身復讐に乗り込んだアーロン。
 それをいともたやすく捕らえたのは、なんと黄猿!
 そりゃアーロンじゃ敵うはずがない!!
 あのアーロンが、滂沱と涙を流し、復讐の誓いを叫ぶ姿。
 悲しき蟷螂の斧。
 この無力さはなんとも痛々しい。
 なるほど、これはあのアーロンパークのアーロンに、しっかりとつながりますよ。
 人間達に対する深い怒り。
 その底には、アニキと呼んで敬愛したフィッシャー・タイガーへの、弔い合戦という想いがあったんですねー。
 悲しいな、アーロンってヤツは。

 そうか、だからアーロンはイーストブルーに解放されたのかもしれませんね。
 ここで捕まったアーロンは、ジンベエが七武海に加入するための交渉材料にされるのでしょうが、その際もしアーロンがグランドラインに解放された場合、この島や通報した島に復讐に行ってしまうわけです。
 だからイーストブルーに解放されたと。
 解放と言うと聞こえはいいですが、いわばグランドラインから締め出された格好だったのかもしれません。

 なんだか、アーロンという男の深さ、業、悲しさなど、いろいろと分かってきたように思えた一話でした。

 そして恐るべきは、差別と言うものがいかに人を破壊するか、ということです。
 コアラのトラウマしかり、タイガーのトラウマしかり。
 ただ単に社会的に相手を排除し、争いのタネとなるだけじゃない。
 人の心を再生不可能なまでにズタズタにしてしまうことだった。
 それによって、また恐ろしい悲劇の種ともなってしまうこともある。
 悲劇の連鎖が生まることになる。
 差別の悲劇のおおもとは、心の破壊なのだと。
 それが差別と言うものの本質なんだと、そうワンピースという物語は語ろうとしているのかもしれません。

 さぁて、ついにここにフィッシャー・タイガーが倒れ、魚人海賊団は危機に陥りました。
 ここからどんな展開が待っているのでしょう。



■ジャンプ本誌の感想はこちら→前編



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