2010年09月22日

スティール・ボール・ラン感想 #63 LESSON5C

 ウルトラジャンプ2010年10月号掲載。
 ジョジョの奇妙な冒険 Part7
 SBR #63 LESSON5C
 の感想です。
 息詰まる交渉!!

【ネタバレ注意!】





 今回はジョジョとしてはひじょーに珍しい、オール会話回。
 最初から最後まで、ひたすらジョニィを説得しようとする大統領の演説でありました。
 ともすると単調になりそうなこういうお題のためか、フキダシの中に 「約束」 とかキャラの顔とか、ちょこちょことイラストが入っているのが印象に残りました。
 
 しかし大統領、あの手この手でいろいろ言ってきましたね〜。
 いや〜、面白かった。
 思わず引き込まれて、大統領の術中にはまってしまいそうだったんですが、これこそ詐欺師の話術じゃないでしょうかね(笑)。

 いや、ほんとうにもしかしたら大統領はいい人で、ジョニィは大統領と和解するという展開があるのかもしれませんが。
 でもこの展開は天使と悪魔のささやき系だと思うのですよ。
 善とはなにか、悪とは何かという重い命題をジョニィにつきつけ、頭をぐっちゃぐちゃに悩ませたうえで、とても重要な選択肢を選ばせる、そういう場面だと思うのですよ。
 でも結局は大統領は倒すべき敵のはず。
 騙されるなよ、ジョニィよと。
 よく考えて、大統領の真実を見極めろよと。
 さてでは、ひとつひとつ考えていきましょう。


 まずジャイロです。
 ジャイロをこの世界に連れてこれるのは大統領だけ。
 たしかに連れてこられたジャイロはこの世界のジャイロではないから記憶も違う。
 だが、大事なのはこの世界にジャイロがいるということではないか? というのが大統領の言い分でした。
 しかし、これについてはまったくそうとは思えません。
 たしかにジャイロがいることで一時の安心感か心強さのようなものは得られるかもしれません。
 でも、それが本当の友情なのだろうかと。
 ジャイロにそっくりであればあるほどに、この戦いで死んだジャイロとは違うということが浮き彫りになりはしないでしょうか。
 やはり、あのジャイロは死んだんだと、そう思ってしまうんじゃないでしょうかねぇ。
 そしてなにより、隣の世界のジャイロを連れてくるということは、その世界のジョニィを孤独にするということでもあるわけです。
 そんなことが許されるのだろうかと、そう思うんですよね。
 また、連れてこられたジャイロも、わけもわからず連れてこられて、自分が覚えている世界とはちょっとずつ違ったりして、そんなことで幸せになるのだろうかと。
 何より、ジャイロ自身が最も大切にする、「納得」 とかけはなれた事態ではないでしょうか。
 ということで、ジャイロを連れてくるというお題について、私がジョニィだったらまったく受け入れることが出来ません。
 ああでも、それでも揺れてしまうのが人間の心理というものだというのも、よっくわかるんだなぁ〜。
 ジョニィ、がんばれ!!
 ジャイロが死んだという事は受け入れがたいことだけれども、でも、事実として受け入れなければ!


 次に、大統領は遺体を手に入れたら、ジョニィたちに一切報復しないということ。
 これはどんなに言われたところで納得できるわけがない。
 いや、実際、大統領が遺体を手に入れたら、最も脅威となるのはジョニィとジャイロに他ならないわけですよ(隣の世界から連れてきたジャイロがスタンドを使えないことは考えられますが)。
 遺体の作り出す防壁を越えて、大統領を直接攻撃できるのはジャイロとジョニィだけなわけですからね。
 そのことについて触れずに、説得しようってのがちょっと無理なんじゃないですかねぇ〜。


 また、世界の幸福量保存の法則とでもいった論説。
 たしかに世界の全ての人が幸せになることなど実際不可能でしょう。
 だれかが幸せを掴む一方で、だれかが不幸を掴まされるのでしょう。
 それを一方的に決定できる遺体という存在は、まさに運命をあやつる神。
 これを他国に支配されるより先に自分で支配しなければならない、というのは、大統領として絶対の責務となるというのはよくわかります。


 そして、遺体のパーツを集めるためにはスタンド使いたちの戦いが必然となり、そのためにこそスティール・ボール・ラン・レースが開催されたというのも、まぁ納得行くのです。
 大切なものを手に入れるためには戦いが生まれる。
 逆に言うなら戦いの犠牲が出るからこそ大切なものが手に入るという論法は、やや詭弁の臭いこそしますが、遺体の出現法則はまさにそんな感じだからしょうがないのかなぁと。
 平和的に手に入ることを、遺体そのものが拒絶しているのかもしれませんし。
 (しかし、遺体の主と思われるキリストは、いったい何を考えているんだか……)

 しかし、その論法もやや信用がおけないんですよ。
 平和裏に集める方法は、本当になかったのかと。
 たとえば、遺体の出現条件がスタンド使いの戦いだとしたら、まぁ出現するまでは戦わなきゃいけません。
 そればっかりはしょうがない。
 だとしても、一度出現してしまえば戦いはやめてもいいはずです。
 遺体を奪い合って、殺しあう必然性まではないはずです。
 そのほかの手段、たとえば金銭交渉などをとらずに殺して奪うことを繰り返してきたのは、単に大統領がそういう暴君的な気質だったからとしか思えません。
 さらに今は、集めた遺体を守るために、交渉などせずに近づくものは片端から殺しているじゃないですか。
 たしかに殺して奪ったほうが、後々奪い返されたり、裏切られたりする心配はありませんが、でもそれが民主主義の国家の大統領がすることなんだろうかと。
 強引に、誰彼かまわず殺してでも遺体のパーツを集め、しかし敗北しそうになったらこうやって言い逃れる。
 どうもそういうふうにしか思えないんですよね〜。


 次に、大統領は隣の世界のホット・パンツから奪ってきた肉スプレーをジョニィに渡してよこしました。
 それで、傷ついた馬も、遺体が身体から抜け落ちかけて死にかけているルーシーも、ジョニィの切断された左手首も元に戻ると。
 馬が復活することでレースに戻れるというのはかなりの魅力。
 また、ルーシーが死にかけているというのは驚きの新情報ですが、気まぐれすぎる遺体のすることですから、もうそんなものかなと。
 しかし、これについては交渉材料というより、交渉を成立させるため大統領が持ってこなくてはならなかった必須アイテムという気がします。
 むしろ、これがなかったらジョニィは交渉を受け入れたとしても、得るものが少なすぎるんじゃないでしょうか。
 レースの優勝というものもかかっていますし、そもそも馬がなければ移動もままならず、大統領から逃げることだってできませんもの。
 なので、これで信用がおけるかどうかというのは、違うと思うんですよね。
 信用するための材料ではなく、これで交渉のテーブルにつくことができる、ただそれだけの事ではないでしょうか。


 また、次に大統領が持ち出したのは、スティール氏のこと。
 スティール氏を殺さなかったのは、ルーシーに氏の 『安全を保証』 していたからだということをもって、自分が信頼に足る人間だという事ですが、これまた眉唾モノもいいところ。
 だって大統領、激昂のあまりスティール氏を締め上げてたじゃないですか。
 安全ってのは、普通は首を絞められないことですよ(笑)。
 しかし、ジョニィはそんなことは知らないでしょうから、そう言われればそうなのかな〜と、思ってしまうかもしれないんですよねぇ。
 うーむ。 


 そして、大統領が最後のカードとして出したのが泣き落とし
 たしかに、「愛国心」「父のハンカチへの誓い」 というのは大きなものでしょう。
 なるほどこのために先月号で大統領の過去編を出したのかと納得したわけですが、たしかにあの過去編の後でハンカチに誓われては、うーむと思わざるを得ません。
 パラレルワールドをいくつも渡り歩き、亡き父を探したというのもなかなか泣かせる話じゃないですか。

 この話が、偶然にも父との軋轢に悩んできたジョニィの胸を打つことに。
 なんたる運命か。
 なるほど、こういう見事な対比のためにこそ、ジョニィと大統領はふたりとも父親像が描かれたわけですか。
 かたやジョニィは、痛ましいほどにすれ違い、愛憎もつれあう関係。
 かたや大統領は、一度も会ったことがなくとも、お互いの存在を己の誇りと支えにできる強い関係。
 父をいまだに憎み、恐れているところのあるジョニィとしては、大統領のほうがまっとうな人間ではないかと迷ってしまっても無理はないか。
 うーん。


 さぁ、大統領の大演説を聞き終わり、ジョニィはどういう結論を出したのでしょうか。
 その指に、爪弾が回転を始めました。
 これは 「正の回転」 なのか、それとも 「負の回転」 なのか。
 いや〜、いろいろと考えさせられる、緊張感の高い一話でした。
 思わず、わたしも大統領の話を信じたくなっちゃいましたよ〜。
 しかしね、これまでの所業、言動を知っている立場としては、いやいや、あんたは違うだろうと。


 
■外部リンク
SBR感想 #63@JOJO



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