2010年05月16日

コミック感想 ホムンクルス 12

 人間の歪みに鋭くメスを入れるカルト的マンガ 『ホムンクルス』小学館 ビッグコミックスピリッツにて不定期連載)。
 他人の心の歪みが、奇想天外な“ホムンクルス”という形として見えてしまう男・名越の運命は。
 精神分析的でダークなストーリー展開と、インパクトのある漫画的表現のミックスが素晴らしい作品です。

 これまでの感想→ 8 , 9 , 10 , 11

【ネタバレ注意!】





 ホムンクルスが見えなくなった名越。
 もう一度トレパネーションか? と思ったら、まさか自分でやるとは!!
 しかしこの、自分でドリル握ってしまうまでの流れが実にいい。
 やるのかと思わせておいて 「やるかバカ」 と肩透かししたり、資料を盗んでヤヤッと思えば 「頭の中を整理したかった」 といかにも素直な顔で言ってみたり。
 このひょうひょうとかわしていく過程が余計にジリジリと緊張感を煽るようで、読んでてたまらなかったですね〜。
 やるのか? やっちまうのか? と。
 自分で自分の頭にドリル打ち込むなんて、そんなバカなことができるのかと。
 かわされればかわされるほどこちらは期待というか、恐さというか、妙な引力に引きずり込まれてしまいます。

 そして雨の夜、ついに……。
 ここの描写もいちいち素晴らしい。
 口笛吹きながら公園のトイレを掃除する名越。
 鏡の周りに、イメージを助けるためか、資料写真をペタペタと貼り、髪をちょきちょき、麻酔を打ってメスを取る。
 淡々と、そしてもくもくと描かれる、いともたやすく行われるとんでもない暴挙。
 ドリルを取り出し、これが脳膜のところで止まらなければ死んでしまうと言ってビビりつつも、酒の力で迷うことなく行為を遂行する。
 なんなんでしょうこの素晴らしすぎる突進力。

 しかし、いよいよドリルを頭に向け、いざ、というところで、鏡に映った全裸の自分にクスリときてしまう。
 いいですね〜。こういうちょっと息を抜く感じ。
 人間、こういうものかもしれません。
 バカをする寸前、ちょっと自然体に戻ろうとする反動とでもいうか。
 いや、俺べつに狂ってないし。ほら、こんな冷静に帰ることもできるんだよね、と再確認する感じ。
 でも、俺はやるんだけどねと、クールになってなお止まらないことで、これからやる行為を正当化しているのかもしれません。
 いや、これはクールになったフリだけなのかもしれませんが。
 漫画的に見ても、爆発の寸前の静寂といいますかね〜。
 ありがちかもしれませんが、これは効果的な演出でした。

 そして、無言で、無音で、鬼気迫る表情だけで 「いくぞっ」 と来る。
 「カチ」 とスイッチを押し、ページをめくると土砂降りの雨。その中に聞こえる駆動音。
 いちいち演出が凝っている。
 ドリルの回転によって細かく四散する血しぶき。
 振動にガクガク震える名越の顔。
 この絵がスゴイ。
 頭蓋骨を直接ギャーンと削ってますよという、頭蓋骨の強烈な振動と、脳髄の揺れ、名越の視界のブレが直接こっちまで伝わってきます。
 狂気の世界が凝縮されていますね。
 思わず想像してゾーッと来ます。
 その反面、手のほうはまったく震えていない。まったく迷いがない。 強烈な意志によって、冷徹に、力強く、ドリルが押し込まれている。
 そして、ぐいいいいいと、渾身の力を込めてケツが引き締められ、足の指も不自然に握られている。
 このとんでもない暴挙の中で、名越が感じている緊張、不安、恐怖、激痛、アドレナリン、トリップ、全てがゲージを振り切ってしまう猛烈な感覚が、ビリビリとこちらまで伝わってきます。
 生で肉体の感覚が直接こっちまで来る感じ。臭いまでやってきそうです。
 これはほんとスゴイ。
 完全に圧倒されるとんでもないシーンでした。

 ページをめくると、これは名越の視界に映る血飛沫か。
 不思議と、どこか幻想的で美しい、時の止まったような世界。
 苦痛や、恐怖を飛び越え、この瞬間名越は別世界に突き抜けたのかもしれません。

 いつの間にか雨があがり、空には巨大な満月。
 ドリルが静かに仕事を終え、血まみれで呆然と立ち尽くす名越。
 さぁ、成功したのか?
 そう思っていると、おいこら、そこで頭の穴に指をつっこむかと!(笑)
 いやもうやることなすこと、すべてがとんでもねー。
 しかし、つっこんだ指から、脳の鼓動を知ってしまう名越。

鼓動をしている…!

心臓みたいに…

生きている(鼓動している)!


 これはたしかにスゴイ体験ですね〜。
 自分の脳が、トックントックン言っていることを指が感知し、その指の感覚を神経が脳に伝え、脳自身が認識する不思議。
 まさに 『自分の発見』、『我思う、ゆえに我あり』 ですね〜。
 いや〜、哲学者デカルトさんもこんな事を想像して言ったわけではないでしょうけれども!(笑)
 しかし、間違いなく名越にとっては、生で感じられる、自分と言う存在そのものだったのではないでしょうか。
 自分の過去を探してみたら、そこには何もなかったと知ってしまった名越。
 でも、ここに俺はいたんじゃないかと。
 ちゃんと生きているんじゃないかと。
 この体験は強烈なショックとして名越の頭脳を揺り動かしたことでしょう。
 そしてまたその衝撃で脳が反応し、その脳の反応を指が感知し、神経伝達がまたまた脳を揺り動かし……。
 もしかしたらここで、脳と指と神経とが強烈なハウリングを起こしてしまったのではないかと。
 そんな妄想まで働いてしまいました。
 ありますよね、カラオケボックスとかでハウリング。
 マイクがスピーカーの音を拾っちゃってその音がスピーカーから出てくることでそれがまたマイクに拾われて、どんどん増幅されて急激にすんごい大きい音になっちゃうあの現象。
 あれが名越の脳で起こったんじゃないかと、そんな妄想をしてしまいました。


 そしてこれまた、象徴的な不思議な現象。
 満月を見た名越。
 名越がその満月に見たものは、これはなんなんでしょうか。
 脳に走る血管でしょうか。
 それとも眼球に走る毛細血管?
 いずれにしても、いま、名越の中でなにかが爆発した! といった感覚を受けます。

 ここで私、ちょっとこれは妄想にすぎる、ネタの部類の話になってしまうのですが……私は以前からこのホムンクルスという漫画は、筋肉少女帯の歌 『少年、グリグリメガネを拾う』 によく似ているなぁと思っていたんですね。
 そう、うちのブログタイトルに拝借させていただいている、この曲です。

【ニコニコ動画】筋肉少女帯−少年、グリグリメガネを拾う



 歌詞も貼っておきましょう。→こちら
 
 不思議なメガネを拾った少年は、人の心の中身を不思議な形として見えるようになってしまう。
 あの娘のなかには、ひしめきあってる目玉。
 猫の中は薔薇。
 老人の中は釘。
 サラリーマンの中はネズミ。
 お姉さんの中はクレヨン。
 ね? まさにホムンクルスですよね。
 で、そんな少年が最後に見てしまうのが、お月さんなんですが、その月の中を言おうとして、ブツリと曲は途絶えてしまうのです。
 実に深淵かつ強烈なイメージを残してくれる曲で、私はこの曲くらい強烈な 「見抜く力」 が欲しいと思って曲名をブログ名として勝手に拝借させていただいているわけですが。
 で、ついにこの漫画 『ホムンクルス』 が、もしかすると作中最大の転機になるかもしれないこの一大イベントで、月の中を覗いてしまったと。
 なるほどこれは、やっぱり 『少年、グリグリメガネを拾う』 だったのではないかと。
 山本英夫先生のイメージモデルは、キンショーだったのだなと。
 勝手に確信を得てしまったのであります(笑)。
 いや、誤解をされたくはないのですが、私は何もパクリだとか、元ネタがあるんじゃないかと作品をあげつらう意味で言っているんではないのですね〜。
 そうではなくて、好きな作品が好きな作品からもしかしたらイメージを受け取り、いい影響を受けているのかもしれないと妄想すると、なんだか両方のファンとしてとっても嬉しいぜ〜と(笑)。
 そう思わずにはいられなかったんですね〜。
 いや〜、まぁこれはもう私の考えすぎの病気というやつで、見当違いも甚だしい話なんでしょうけどね(笑)。
 どうにも私、ここで脳内にグリグリメガネが流れ出して止まりませんでした。


 まぁでも、そんな話はどうでもいいですね。
 問題はここからの名越。
 その表情が一変!
 こ、こわっ!!
 ついに能力がもどったことへの、歓喜の表われなのか。
 これは、ニターッと笑うその表情は、写真の被験者の女とそっくりの異様なまでの不気味さ。
 なるほど、そう来たか〜と。
 あの被験者の顔写真は、物語冒頭、トレパネーションの不気味さをよく表していたと思うのですが、ここへきて、その表情の意味が、こうであったのかと。なるほど、こいつは隣の世界を覗きこんでしまったものの顔だったのかと。
 健康的な喜びとはまったくもって正反対。完全に突き抜けてしまった顔だったんですね〜。
 いやー恐ろしい。
 しかし猛烈に引き付けられざるを得ない、強烈な魅力も同時に感じてしまう。
 いったい名越はどんな世界に突入してしまったのでしょうか。

 満月の下、満足げに帰ってゆく名越の表情もまたすばらしい。
 そして翌日、交差点に立ち、道行く人々を眺めてホムンクルスを観察する名越の姿。
 その姿は、まさに狂気に他ならない。
 まるで悪魔に完全に魂を奪われてしまったかのようです。
 いやいやほんと、名越よどこへ行く、ですね〜。
 セルフドリフはここ最近のホムンクルスでは最大の爆発力と衝撃でしたが、そこから始まった名越の動きも、ついになんかヤバすぎるところに到達してしまったなぁ〜と思わせてくれるに充分。
 もうすでに破滅的な予感しかしないんですが、いったいどんな結末が名越に訪れるんでしょうか。
 なんだか、おっかないけどどんどん目が離せなくなってきました。

 そして、謎の女・牧村ななみ(?)がここへきて登場。
 巨乳をふりふりテケテケと走る姿がすばらしく印象的です。
 最近物語の中心となってきた、ホムンクルスの見えた女・ななことは別人のようですが、どうやらこの女性も過去、名越となにやらただごとならない物語があった様子。
 この流れは突然でびっくりしたというか、戸惑いましたが、いったいどうなるんでしょうね〜。
 この女も名越同様、かなりの嘘つきの様子。嘘つき同士、伊藤の時の様なホムンクルス対決がまたもやってくるのでしょうか。
 実は、名越が顔を変えたように、ななみもななこが顔を変えた姿だったり……とか。
 ちょっとこれは予想外の展開となってきました。

 しかし、頭ごっつんこで鼻血噴出し歯が折れるって……シリアスなんだかギャグなんだか。
 テケテケ走りといい、ちょっと反応に困りましたわ(笑)。



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