2010年05月09日

コミック感想 ホムンクルス 11

 人間の歪みに鋭くメスを入れるカルト的マンガ 『ホムンクルス』小学館 ビッグコミックスピリッツにて不定期連載)。
 他人の心の歪みが、奇想天外な“ホムンクルス”という形として見えてしまう男・名越の物語。
 精神分析的でダークなストーリー展開と、インパクトのある漫画的表現のミックスが素晴らしい。
 そんなホムンクルス 第11集の感想です。

 これまでの感想→ 8 , 9 , 10

【ネタバレ注意!】





 本当にこの漫画は人間の深いところまで踏み込むよなぁと、素敵にズーンとさせてくれる11巻。
 ついに名越の整形前の顔が明らかになりましたか。
 明らかになったといっても、絵的には読者に見えなかったわけですが。
 おそらくは普遍的な話として、どこがどうということもない普通の顔、ということなのではないでしょうかね。
 そういう、特に美形でもなく、かといって特に醜くもなく、自分で望むほどには特徴のない顔。
 もっとこうでありたいと願望を持つほど、どんどん自分の顔って平々凡々に思えてくるものですよね。
 つまりは、名越にとっては全ての元凶と思えるほど、普通すぎた顔、ということなのでしょう。
 それを漫画で、絵として描くよりは、名越の演技で表現することで、今の名越の心、過去の心を表現したと、そういうことなんですかね。

 いや〜、なるほど、そういうことだったのかと。
 どれだけ醜い顔だったのだろうと、これまで思っていましたが、これは意外なオチでありました。
 しかしその反面、なんだかとても納得させられる真相でした。

 すべては逃避と、そういうことなんですかね。
 痛みや怖さから逃げ、人やらなにやらすべてから逃げてた青年期の名越は、自分が逃げたのにもかかわらず、逆に人が自分を見てくれないと、心の中で周囲に責任を転嫁。
 なぜ見てくれないのか。それは自分の顔がいけないのだと、整形すれば全てが変わるのだとさらに責任をすりかえ、顔を変える。

 彼の不運は、そこで本当に人生がガラリと、180度変わってしまったことではないでしょうか。
 まわりは突然名越を突然チヤホヤするようになり、仕事が爆発的にうまくいくようになったおかげで、余計金に群がる女も増える。
 そんな生活が、名越を充実させるはずもない。
 これは嘘の俺だと。
 嘘の俺に群がる女達も嘘だと。
 本当に自分を見てくれているわけではない。
 本当の自分はどこだと。
 突然すべてがわからなくなり、全てを捨てた名越は路上生活を始めたと。

 うーん、なんとも悲劇のスパイラルですね〜。
 救いがありません。
 しかし、私にはなんとも笑えませんよ。
 他人事とはどうしても思えない。
 なんだかそういう普遍的な心の問題をはらんでいるような気がしてなりません。

 人は、誰しもそういう「見て欲しい」という欲求は、大なり小なりあるものですしね。
 見てくれない、誰からも相手にされない、という恐怖心というか、疎外感を感じたことのないひともいないでしょう。
 自分は一体何者なのかという不安感は、誰もが青年期に通る道でしょうし、ふとするといつまでも追いかけてくる問題だと思いますし。
 
 だから、名越のこの焦燥感というか、渇きというか、懊悩はすごくよくわかる気がするのです。
 でも、だからこそといいますかね。
 そうではないんじゃないのか? と名越に言いたくもなってくるんですよ。
 顔を変えた時、ではなぜ名越は大成功を収めることができたのか。
 それは顔が変わって、人がチヤホヤしだしたから、ただそれだけではないはずです。
 名越は、顔が変わり、明るく外交的になったのではないですか?
 何事にも積極的に、勇敢に立ち向かえるようになったのではないですか?
 そういう前向きな姿、努力する姿が、人には魅力的にうつったのではないですか?
 まあ、今回出てきたフェリスの女のような、金目当て、ブランド目当ての汚らしい性根の持ち主も確かにいるでしょうけどね。
 ああ、この女の醜悪さは今回すばらしい見所でしたね(笑)。

 まぁそれはさておき、名越が成功することが出来たのは、ひとえに名越が頑張ったからなのではないでしょうか。
 つまり、やればできるのに、臆病に殻に閉じこもっていたからこそ人は誰も見てくれなかった。
 殻から出て、頑張ったからこそ人は見てくれた。
 そういうことなんじゃないですかねぇ。
 その見ていた場所はおいておくとして。

 あと、もうひとつ名越に言いたいのは、そうやって人に見てもらいたいとか、人が見ていたのは俺の本当の姿じゃなくって財布だったとかそういう事を言う前に、では自分はこれまで人の何を見てきたのだろうかと。そういうことも考えてほしいんですね〜。
 大切なのは、見られることではないと思うんですよ。
 その人の中身が、何であるかは、どのように 「人から見られるか」 で決まるのではなく、「人をどう見るか」 で決まるものではないでしょうか。
 誰からも愛されなかったと嘆くことも、とても痛々しいのですが、でも、ならば名越は誰かを愛したことがあったのだろうかと。
 人から見てもらうことがなかったと嘆く名越は、ではかわりに誰かを見つめたことはあったのだろうかと。
 人に見つめてもらうことより、人を見つめることのほうがずっと価値があると私は思うのです。

 夢見続けた願いはいつも愛されること愛してもらうこと
 それが人生の幸せだったいつも信じてた
 信じて待った 待って夢見た
 (中略)
 でも誰も愛したことがない
 それで生きた事になるの?
 それで生きた事になるの?
(中島みゆき『I love him』より)


 今回、意外ななりゆきで、昔名越を愛してくれた女性の存在が浮き彫りになってきましたが、それがもしかすると、名越が愛した人なのでしょうか。
 なかなか面白い展開となってまいりました。


 それはそうとしかし、伊藤、ずいぶんスッキリしたいいヤツになりましたね〜。
 まるで憑き物が落ちたようです。
 しかし、まだホムンクルスはつきっぱなしということのようで。
 でも、間違いなく快方に向かっている、ということなのでしょうね。

 あと、ホームレスのおっちゃんがとってもいい人でしたね。
 まさか冒頭、名越を踏みとどまらせる重要展開のキーパーソンになろうとは。
 しかも、あのなんとも含蓄の深い言葉。
 なんか、ジーンとしちまったい。


 さて、いよいよ名越の心の最深部に話は迫ってきた模様。
 どんなことになるのやら……。
  


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posted by BOSS at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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