2010年05月07日

コミック感想 ホムンクルス 10

 人間の歪みに鋭くメスを入れるカルト的マンガ 『ホムンクルス』小学館 ビッグコミックスピリッツにて不定期連載)。
 他人の心の歪みが、奇想天外な“ホムンクルス”という形として見えてしまう男・名越の物語。
 精神分析的でダークなストーリー展開と、インパクトのある漫画的表現のミックスが素晴らしい。

 これまでの感想→ 8 , 9

【ネタバレ注意!】




 ここのところ順調に続刊の出ているホムンクルス。
 ちょっとの間感想を休んでいたら、3冊も宿題がたまっておりました。
 ダメですね〜、ズボラー星人は。
 ということで、最新刊までちょっと駆け足で追いかけようかと思います。


 ついに問題の本丸というか、トレパーネーション手術をしかけた張本人、伊藤との対決。
 まさか女装させてのデートとは、予想の遥かナナメ上をゆく展開ですが、しかしこれが“いかにもホムンクルス”といったバツグンの緊張感。
 じわじわと手に汗の滲んでくるような対決でした。

 伊藤の舌鋒が鋭くなっていき、どんどん攻撃的になり、名越が防戦一方になっていっているようでいて、この伊藤からかもし出されてくる、すごく奇妙な違和感はスゴイ。
 あれ? コイツは本当に伊藤か? それとも名越が見ている、聞いている幻想か?
 なんだかだんだん現実かどうかもあやふやになってくるような、足元がグラついてくる不安感がすばらしい。
 徐々に徐々に、伊藤の外の殻が壊れていって、本質が形を変えながら露呈してきているんでしょうね。
 伊藤は名越のことを暴き立てているつもりで、知らないうちに自分を丸裸にしていっているワケです。
 いや〜、素晴らしい知的興奮。
 このあたりの流れが、実にスリリングで面白かったです。
 知的興奮と娯楽性を見事に両立しています。

 そしてクライマックスは、女子トイレでの奇跡。
 なんと、げっぷがそこに繋がりますか!
 さんざん出てきていたげっぷが、伊藤の過去とつながり、喉から出てくるグッピーの幻
 そして一気に伊藤は自分の精神と和解(?)。
 ホムンクルスと自分が、トラウマと理性が、和解した瞬間ってところでしょうか。

 人間のトラウマという非常に表現の難しいものを描きながら、こういう感覚的な絵でズバリと分からせてくれる、もしくは感覚的に分かった気分にさせてくれる。
 やはり山本先生はすげーなと思わされます。

 そしてもうひとつ、これもすげーなと思ったのが、伊藤の過去のトラウマ回想。
 グッピーを見つめ、同じように綺麗になることに憧れ、女装したり口紅つけたりし始めた、子供の頃の伊藤学くん。
 その様子に戸惑った厳格な父の行動がとってもリアル。
 最初は怒って、ついで困惑して、どうしたらいいかわからなくなった父はグッピーさえいなければと、殺そうとする。
 しかし最後のところで殺せない。
 この踏み出しきれないところが実にリアルって思っちゃうんですね。
 ここでやっちゃうのが、トリップ感となる作品もあるんですけど、ここで踏みとどまるからリアルさが増し、今度は次が生きる。
 飛び込んでくる猫といういかにもありそうな事故があり、そして、割れたガラス越しの子供の目。
 で、恐怖の、グッピー踊り食い!!
 なぜそこで!! と思ってしまう唐突な行動ですが、いかにもなこれまでの流れがリアルさを補強してますし、この学くんならやってしまうかも? とも思わせてくれます。
 ひとつの場面を印象付けるためには、それまでの描写は普通の積み重ねでいいんですね〜。
 いや〜、すごいショッキングでしたけど、とても勉強になりましたわ。
 そんなことを思った回想シーンでした。

 そしてつながる、先程のトイレのげっぷからグッピーの奇跡。
 おー、なるほどと。ポンと手を打つ気分。
 なるほど、それでグッピーが口から出てきたのかと。
 いやほんと、構成がうまい。

 割れた水槽をボンドでつなぎ、形をつくっても、ちょろちょろと水があちこち漏れるばかり……。
 これが伊藤学というホムンクルスの原型だったんだなぁ〜と、納得の過去回想でした。

 お父さんと和解できて、伊藤、よかったですね〜。
 あまり好感の持てるやつではなかったですが、最後はちょっと、こいつも悪い奴じゃないなと思い直しました。
 ホムンクルスも、これで消えてるんでしょうかね。
 伊藤もようやっと、これから本当の意味で生きることができるのかもしれませんね。

 ホムンクルスを取り除かれた人は、み〜んなどこかスッキリしたような感じがするんですよね。
 組長も、女子高生も、そして今度は伊藤もそう見えます。
 号泣したあとは、きっとスッキリと歩き出せるんじゃないでしょうか。
 父親のほうも救われたようですしね。
 前より、お互い素直になれた父と息子として、これからはまっすぐ歩いてゆけるんじゃないでしょうか。

 一方、名越は、いったいどうなるんでしょうか。
 いつかは、自分と和解することができるんでしょうかね。
 なんか、そういう暖かい予感がまったくしないのが心配なんですよね〜。
 さて、どうなることやら。
 俯いて、自分の足元ばかり見て、名越よ、どこへゆく……。



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