2010年04月17日

コミック感想 バガボンド 32

 井上雄彦先生による宮本武蔵伝バガボンド、32巻の感想です。

過去感想 → 26 , 27 , 28 , 29 , 30 , 31

【ネタバレ注意!】




 伊藤一刀斎との決闘。
 一瞬の決着。
 一刀斎は、小次郎に斬られて右手を損なっていたんですね〜。
 その右を逆に武器として、相手の意識をそちらに集中させ、左で決めようと。
 一刀斎ほどの猛者であれば、それは必殺の決め手と言っていいでしょう。
 しかし、それよりも武蔵は速かった。
 抜く余地をあたえず、とっさに脇差をあびせる超早業。
 脚が不自由な上に、斬り合う心構えでもなかったでしょうに、これはやっぱりすげーなぁと。
 心理面描写がここのところ多く、いろいろと迷ってばかりが目立ってましたが、腕のほうはすこしも鈍ってないばかりか、いよいよ冴え渡っておるなぁと感心させられます。

 しかし、一刀斎もオツですな〜。
 酒代として柱にひとつ太刀傷をつけ、

「孫の代まで客は絶えぬだろう」

 ときた(笑)。
 何をキザなと言いたいところ、一刀斎ほどの男ならばそれが最高にカッコイイ。
 いやでも実際金はないんでしょうけど、かっこいいから許す!
 いやでも、こうやって 「かっこいい」 なんて言っているのが板倉勝重さんに言わせれば、引け目からきた崇拝、同化したがるということなのかもですな(笑)。


 またその決闘のかたわら、回想で幼い頃の武蔵が、なにやら深イイ話を。
 何も考えてない野生児かと思いきや、とても哲学的なことを考えてたんですね〜。
 自分の体は借り物で、もともとの自分が何者であったのかを知るためにあるモノなのかもしれないと。
 父も母も、周りの人も、世の中すべてのものがそういうもののために出会うのであれば、ほんとは誰も恨まなくていいと。

 これは、以前沢庵和尚が言っていた、天と人はつながっていて、それでいて無限に自由であるというような事を言っていたのと繋がっているような気がします。
 武蔵、子供心になにかの真理に一番近いところにいたのかもしれませんね〜。
 体はただの命の器で、借り物というあたり、ちょっと手塚治虫の火の鳥に出てくる生命観、宇宙観に似てるかもな〜と思いました。
 
 そして幼き武蔵は、途中から天下無双の夢に惹かれるようになり、ずぶずぶと戦いの螺旋にひきこまれ、いまや我執の炎に苦しむようになってしまった。
 子供の頃の、純粋な心が一番高所にあったという、なんと皮肉な。
 天下無双など幻と知った今、ではどうやればあの少年時代の洞窟に戻れるのか。
 そこですよね〜。
 その答えは、どうやら 「楽しいかどうか」 にあるようですね。
 面白い事に、対極にあるような柳生の大殿と、一刀斎が教えてくれました。
 対極にあるようでいて、その境地は表裏一体なのでしょうか。

 武蔵の脳裏によみがえる、これまでの殺し合いの螺旋。
 壮絶極まりない場面の数々。
 そこに、楽しいといえる瞬間はあったのでしょうか。

 子供の頃は、誰もそばにいなくても、剣を振っていればそれが楽しくてしょうがなかった。
 “名前のない誰か”が笑って見てくれていたという表現は、とても抽象的ですが、それは武蔵と世界との一体感のようなものだったのではないでしょうか。
 剣をやみくもに振り続けることの楽しさ。
 その楽しさに、かけらの不安も迷いもなく、没頭できることの喜び。
 そういった一体感が武蔵を充実感させていたのではないでしょうかね。

 その頃の心地を思い出し、涙を流す武蔵。
 これは衝撃ですね〜。
 あの武蔵が涙を。
 いやしかし、それほどにショッキングな覚醒だったのでしょう。
 なんとなくは悟ってはいたものの、それほどまでに自分は遠回りをしてしまったのかと言うような。
 自分は最初から分かっていたはずなのに、ちょっとしたボタンのかけ違いから、なんて遠いところまで来てしまったのだろうと。
 そんなところでしょうか。 


 さて、ようやっと原点回帰といいますか、武蔵、迷いなく求めるものが見つかったみたいですね。
 それが、小次郎との決闘へと一直線に向かってゆくようで、いや〜、上手い展開だなぁと。
 心の旅がこれまでの武蔵の旅を総括し、必然性を持って小次郎に向かわせています。
 いよいよ武蔵が小次郎と再会して、どんな場面が描かれることになるのか、武蔵はどう感じ、小次郎はどんな顔を見せるのか。
 いやがうえにも楽しみになってきます。
 井上先生は今年中にも完結させるという宣言をなさったそうですが、さぁ、それがだんだん現実的なものとして見えてきましたね〜。
 続きが待ち遠しい!



■関連記事
・動画ネタ バガボンドMAD



********************************************************
イーココロ!クリック募金
BOSSは募金サイト「イーココロ!」を応援してます。
右サイドバーのクリック募金にご協力お願い致します。
携帯からはこちらへどうぞ。
ブログ内の紹介記事はこちらへ。

********************************************************
よろしければランキングにご協力をお願いします。
にほんブログ村 漫画ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログ
blogram投票ボタン
blogramランキング参加中!
********************************************************
posted by BOSS at 21:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
【コメント欄について】 コメント入力の際には、必ずお名前(ハンドルネーム)の入力をしていただけるようお願いします。「匿名希望」や「通りすがり」のように名前入力を回避する意図のあるものは、管理人による削除の対象となる場合があります。ご理解ご協力をお願いいたします。