過去感想 → 26 , 27 , 28 , 29 , 30
【ネタバレ注意!】
又八に、ついに回避できない決定的な試練がやってくる。
それは、母、お杉おばばの死。
これはガード不能の感動ドラマですわ。
嘘を嘘で塗り固め、何もかもから逃げ続け、自分でも 「本当」 がなんであったのか見失ってしまっていた又八。
自己否定とコンプレックスのデフレスパイラルに落ち込み、抜け出せなくなっていた又八を、すべて知った上で肯定してくれる母親。
なんて暖かいんでしょう。
あの頑固ババァだったお杉おばばがっていうギャップもでかいです。
見得も、嘘も、弱さも、コンプレックスも、すべて飲み込んだ上で、
「何が嘘だとてかまわぬ
母だけは味方じゃ」
と言ってくれる。
こんなに嬉しい事はない。
でも、その瞬間に告げられる、今晩が山だろうという非情な告知。
これは、涙なくして読めませぬ。
そして翌日、母を背におぶいながらの山越え。心の旅。
これまでを思い返せば思い返すほどに、自分の中身など何もないことを思い知る又八。
辛いですねぇ。
なかなかこれは、笑えるものじゃありません。
人はだいたい誰しも皮を剥がしていったらカラッポですよ。
俺にはこういう中身がある!と自信を持って言える人なんて、そうそういやしませんって。
言える人は幸せですよ。
私は日々しょっちゅうそういう恐怖とぶつかり合ってます。
それだけに、この又八の辛さが身にしみる。
あまりに身につまされる。
だから、母、お杉おばばの言葉が心にしみてなりません。
又八のせいで、この歳で母に長旅をさせてしまった負い目について、「海が見れたのがよかった」 と、さも物見遊山のように言い、そして、
「又八……
この世に強い人なんておらん
強くあろうとする人
おるのはそれだけじゃ」
又八の負い目を、コンプレックスを、自己否定のスパイラルを解きほぐす、落雷のような言葉だったのではないでしょうか。
ここはもう、こみ上げてくるものが止まりませんでした。
そして振り返られる、お杉おばばの過去。
なるほど、又八はお杉おばばの本当の子じゃなかったんですね。
お杉おばばも、きっと強い人ではなかったのでしょう。
でも、自分ひとりが頑張らなければ、本位田家はつぶれる。
だから恥も外聞も捨てて、妾に頭を下げて子をもらいうけ、自分ひとりでガムシャラに子を育てなければならない。
この鬼のような女性が、慣れない子育て場面でちょっとコミカルな人間的滑稽さを見せたのがとてもよかった。
「今は不幸せだとて このわしがついとる
……(コホン)……母が」
のあたりとか、実にかわいらしい。
憎まれ役だったこの人が、とても魅力的な人物だったのだなぁと思えるようになりましたよ。
そして、その苦労があったからこそ、先程の言葉が出てくる。
元々、お杉おばばも強い人ではなかった。
でも、強い人でなければならないと、自分で自分をガムシャラにそうしていった。
家のため、そして又八のため…。
そして今は、心から又八の母となり、本位田家のためでなく、又八のためにこそ語ってくれている。
ここからの語り口はあまりにありがたすぎて、拝みたくなってきます。
母の愛とは、なんと尊いのでしょう。
弱いものは自分を弱いとは言えない。
自分を弱いと言った又八は、既に強いものへの第一歩を踏み出した。
あっちこっち迷い、ぶつかり、遠回りした分、又八の後ろには、誰よりも広い道ができている。
広い道ができた分、誰よりも人に優しくできる。
それは、誰にでもできることではないのだよと。
あまりにも優しく、まるで光のような言葉ではないですか。
迷いまくり、苦しみもがき、自分を傷つけ続けた男に、救いの光、光明が、バーッと照らされたようです。
そして、母の死。
又八の絶叫。
まだ何も孝行できてないのに。
本当のことをなにも出来ていないのに。
楽をさせることもできなかったし、村に帰り着くことすらできなかったのに。
母の優しさ。
やっとできた和解。
真実。
癒し……解放。
そして死。
いろんなものがない交ぜになって、頭がグチャグチャになりそうです。
そしてすべてが混ざり合って、とにかく目から涙になって出てくるしかない。
そんなリアルな感覚を味わいました。
ここ、何度読んでもたまらんです。
でも、又八はこれで、これまでの堂々巡りからついに解放されたのではないでしょうか。
時は流れ、数十年後。
年老いた又八は、どこだかの橋で武蔵と小次郎、そして自分の話を道行く人々に語って聞かせていました。
そうやって日銭を稼ぎ、酒代と宿賃にしているのでしょう。
あいかわらずイイカゲンな生活っぽいですが、そのいでたちというか、顔つきが、どこかせいせいと、高貴な清潔感すら見受けられるのが不思議です。
なんだか、迷いがすべてふっきれて、悟りでも開いたようです。
まるで、あの時、母が又八の苦しみを吸い取り、あの世に持ち去ってくれたとでも言うような。
実際は、あの母の死の後も又八はいろいろと苦しみ、迷い、ぶつかっていったことはあったでしょう。
その上で年季を重ね、年の功もあって、ここまでさっぱりと灰汁が抜けたようになったのでしょうけど、でも、一番大きな転機は間違いなく、あの母の死なのでしょうね。
一番大切な人に、恩返しすることができなかったというのは、なんとも辛いことですが。
でも、なんて素晴らしいんでしょうね、母の愛って。
こういう話、私めっぽう弱いです。
あまりにも感情移入しすぎてしまいますよ。
一方、武蔵はなんと、あの伊藤一刀斎と対面。
天下無双の遥か向こう側へ到達した柳生の大殿とは、ひどく対照的な一刀斎が新鮮でした。
なるほど、この人は老いてなお、誰よりも強烈に天下無双という妄執にとりつかれているんですね〜。
とりつかれているというか、誰よりもその妄執と仲良く、一体化しているというか。
獣のようにまっしぐらに最強へ突き進む姿、これはこれで凄くかっこいい。
悟りの一つなのかもと思えてしまいます。
それに反応し、武蔵の中の我欲も膨らんできて 「うわあステキ」 なんて鼻息フンフン(笑)。
さぁて、この戦いどうなりますか。
てなところで続きは32巻へ。
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