2010年04月08日

コミック感想 バガボンド 30

 実際に読んでからだいぶ時間がたってしまいましたが、井上雄彦先生による宮本武蔵伝バガボンド、30巻の感想です。

過去感想 → 26 , 27 , 28 , 29

【ネタバレ注意!】





 植田良平の亡霊に幽体離脱させられて、次々と凄惨な場面を見せつけられるおつう。
 しかし、

「しかたない……あたしにどうしようもない

 だってもうずいぶん前から

 子供の頃から―――

 死ぬことなんて恐れてないんだから

 ずっと見てきたわ

 だから 今さらジタバタしたりしない」


 涙を流しながらも決然と言ってのけたおつう。
 これはちょっと驚きでした。
 おつう、こんなに強い芯をもった娘だったのですね。
 おそらく半分は強がりでも、もう半分はずっと抱いてきた覚悟なのでしょう。
 これまで、ちゃんと武蔵のことを見ていたのですねぇ。
 決意のこもった瞳がじつに美しい。


 そして、天下無双とはただの言葉陽炎のように消えたという問答のなかから、武蔵、辻風黄平との戦いのその後をふりかえる。
 ああ、なんとまさか、あの後黄平も龍胆も死んでいたとは。
 いや、でも、ウィキによるとこの場面は武蔵の想像の産物である可能性があるそうですが、うーん、それもそうかもなぁと。
 武蔵が、

「あのガキを貴様の前でいたぶり

 それから二人仲良く殺してやるってのはどうだ黄平」


 って言う場面がちょっと想像つきません。
 これは武蔵の妄想なのかもしれませんね。
 自分は勝ったのか負けたのか、天下無双に近づいたのか離れたのか、その迷いの表れだったのかもと。


 今、ようやっと武蔵が天下無双への執着、呪いから脱却し、では何のために生きるのかを問われる時なのですね。
 板倉勝重から誘われ、またおつうと一緒になれとも言われ、剣を捨て、人のために伝えよと言われ。
 しかし武蔵にはピンとこない。
 武蔵が最後に選んだのが、「技の極み」
 競える相手がいたからこそ今の己がある。
 今一度、全力でぶつかりあえる相手を欲し、旅立つ武蔵。
 なるほど、そう来ましたか。
 誰から見ても今や天下無双を手にした武蔵。
 それに動揺する周囲。

 しかし武蔵としては、今こそ本当の生を受けたような気分なのでしょう。
 あるいは、もう一度ちゃんと生き直せる。
 あの洞窟に帰ることができるという心境なのでしょう。

 今回ちょっと面白かったのは、沢庵和尚にしても板倉勝重さんにしても、年季の入った知恵者の言葉を、武蔵はこともなげにさらりと自分なりに理解し、すっと飲み込めたりする瞬間があるところでした。
 天と自分のつながりとか、真ん中が一番も良いとか、たぶん武蔵は一度も考えたことがないはずなのに。
 でも、剣を振ってきた自分にあてはめると、ふっと理解できてしまえるのでしょう。
 学問にも仏門にもまったく関わりのなかった武蔵ですが、剣ひとすじに自問自答を繰り返し、苦悩してきたこれまでが、それに答えることのできる自分を構築してくれていたのですね。
 今回この流れがなかなかに説得力があって、うーん、うまいなぁと。
 剣豪ストーリーがちゃーんと人間の生き方、哲学していたんだなぁと、ちょっとジーンと来てしまいました。
 武蔵の剣の道は、人の生きる苦悩の道、そのものだったのですねぇ。

 そう言われてみれば、天下無双を欲する心ってのは、たしかに人間みんなあるものですよね。
 なんだってそうじゃないでしょうか。
 人間、誰だって大なり小なりそれぞれの分野で天下無双になりたいという我欲がるものではないでしょうか。
 そしてどうしたって己より強いものというのがいて、そういう出会いがあると、人はそれへの引け目というゆらぎから、同化するか、敵意とするかの二択を迫られる。
 うーん、業ですな。
 業ですけど、なかなかもっていかんともしがたいものです。


 さて、では30巻の感想はこんなところで。
 近いうちに続刊の感想と行きましょう。



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