2009年07月02日

ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.76 “家(ホーム)”

 サイレン、週刊少年ジャンプ31号掲載分の感想です。

【コミック派ネタバレ注意!】




 億号のライオンの口からビーム 『鬼哭砲』 で、開戦の狼煙が上げられた夢喰島編。
 まずはカイルのレベルアップしたマテリアル・ハイが威力を発揮しますが、太河の鋭利なチャクラムにはかなわない。
 能力の相性ってやつですね。
 このあたり、たぶんシャオだったら難なくキャンセルしてたんでしょう。
 って、シャオの場合相性もクソもほとんどないか。
 なんでも動きを読んでキャンセルすればいいんだから、反則的な強さですわ。


 さて、散開したアゲハたちの背後に、ちょっと通りますよと出てきた碓氷あらためネオ天草。
 アゲハは、自分を追い詰め、結果的にサイレン世界に巻き込むことになったあのニセ刑事だと気づき、衝撃を受けたようですが、碓氷さん、聞かれてもいないのに語る語る(笑)。
 得意になって自分の意図を説明してくれました。
 なんて親切な人でしょう(笑)。
 いやまぁアゲハの顔に、「なんでテメーがここに!?」 って書いてありましたからね。

 
 碓氷の野心は、滅亡した日本ライフをただただ享楽的に面白おかしく命果てるまで満喫することでした。
 うん、まぁ否定はしない。
 動機は充分悪役っぽいんだけど、その結果として天樹院のルート以上に人々を数多く救っているのは確かですからね。
 碓氷としては人を救うのが第一義ではないにしろ、1人では生きていけないし、1人で生きてたって面白くもない。
 それなりに贅沢をして、それなりに高い地位や自由、権力、そしてなにより夜の生活を楽しむためには、他者がいなくてはどうしようもない。
 島原のコミュニティを作った第一義がそういう利己的なものだったにせよ、結果的にたくさんの命を救い、守っている事に変わりません。
 それなら、いいことじゃないかと。
 まぁそこでやってる碓氷の支配者としてのふるまいが、たとえば酷く横暴だったり、悪辣非道だったりして、人々が碓氷さんにすっかり騙されて信じ込みつつもそういうご無体に耐えているんだったら、そりゃ〜ダメなんですけどね。
 今のところはそういう描写はないですし、じゃあ碓氷別に悪いヤツじゃないじゃんってなるんですよね(笑)。
 情報統制や独裁体制は、こういう混沌世界の小コミュニティにおいては必須の政治体制だと思うんで、そこは私は賛成なんです。
 こういう状況で言論の自由や民主主義は、いらぬ混乱を招くだけだと思うのですよ。
 危機管理能力という面では、民主主義国家よりも独裁主義のほうが高かったりするんです。
 人権は確かに大切。
 でもこういうときは命のほうがもっと大切。
 そう思うんですね〜。


 でもま、アゲハたちにはそんな事は関係ない。
 ネメシスQを殺されたらたまったもんじゃないですから。
 悪役としてはちょっと迫力に欠けますが、戦う理由としてはそれで充分です。


 ところでフと思ったんですが、なんで碓氷さんはネメシスを殺したがってるんだろうか。
 別に生かしておいたところで碓氷さんの邪魔にはならないと思うんですけどね。
 なんというか、たとえば碓氷さんの王道楽土を危険に晒すようにネメシスQが歴史を改ざんしたとしても、それは別の時間軸の話で、今のこの碓氷さんの帝国がこの時代まで安泰だったことはこの時間軸ではすでに不動の事実じゃないですか。
 で、今後はどうかというと、ネメシスQが生きていようが死んでいようが、コミュニティが存続できるかどうかは、まったく別の話だと思うんですよ。
 だって、この時代までその場所が安全なのは碓氷さんの能力で分かったかもしれないけど、今後も安全かどうかは分かってないんでしょ?
 だったら、この後たとえばコミュニティがワイズにみつかって滅ぼされたとして、それがネメシスQのせいなのか、それともそうじゃないのかは結局分からない話じゃないですか。
 ここでやっきになってネメシスQを殺しにかかる意図が、ほんとよくわかんないんですよね〜。
 いったいなんでなんでしょう。

 もしかして、碓氷さんは時間軸の概念をなにか勘違いしているんじゃないでしょうか。
 歴史が改ざんされたら、今のこの現在がガラッと変わって、その変化をその場で認識できちゃうような、そういうのを想像していたりするんじゃないですかね。
 たとえば、過去で自分の親が殺されたら、その瞬間未来で自分が消滅しちゃうような、そういう昔の SF ではよくあったようなのですね。
 どうも、そういう誤解が根底にあるような、そんな気がしてきましたぞ。
 我々読者としては、どうもサイレンの時間SFはそういうのではないらしいなぁと気づいていますが、当の世界の住人である碓氷さんとしては、気づけなくて当然ではあります。
 まぁ、来週あたりそういう動機は語られるんでしょうね。



 さて、バトル方面はロリコンカミングアウトの億号にカイル&フレデリカ。
 太河にアゲハという組み合わせになるようです。
 カイルが防御壁をつくってその中にフレデリカとともにこもり、外にパイロクイーン・サラマンドラを出して攻撃フルオープンアタックってのが考えられますね。
 凶悪なコンボです。

 一方なかなかすばやそうな切断チャクラムを操る太河にあたるアゲハですが、これもスピード系ライズ使いのアゲハなら、そうそう喰らいはしないでしょうし、いいタイマンになりそうです。
 これがヒリューくんだったらどうなっていたことか(笑)。
 まぁこの戦いでアゲハがどういう能力に目覚めるのか、そのへんがメイン展開となるのでしょう。
 暴王の月を剣の形にして、半ばそれを支え持つようにしながら自動追尾能力で追って行って斬るとか、そういう“暴王の剣(メルゼズ・ブレード)”ってのを考えたんですけど、どうでしょう(笑)。
 当たったらなんかおくれ、岩代先生(笑)。


 しかし、いきなりマリーを押し倒さんばかりの勢いの億号だけど、マリー、そんな格好してるからですって(笑)。
 まぁ、億号の気持ちもよくわかるのです。
 だって、億号が一生を送ろうとしているのは、異性の数も極めて限定されている閉鎖社会ですからね。
 この機会を逃したら、本当に一生結婚の機会なんてないかもしれないのですよ。
 そりゃ、餓えも焦りもしますわ。

 逆に言えば、同じような小コミュニティにいて、この歳まで結婚もせず子供も作らずにきたマリーたちのほうが呑気だなぁと(笑)。
 人類絶滅の危機なんですから、子供を産める年齢になったら、バンバン埋めよ増やせよですよ、ホントならね。
 いやまぁそれ以前の問題として、彼らの恋愛矢印の方向がすべてアゲハに向かっているのがダメだったのかもしれませんがね(笑)。
 カイルもマリーもフレデリカも、ずーっと行方不明のアゲハが大好きで日々アゲハアゲハ言っていて、その中で1人シャオが寂しくもんもんとしていたかと思うと…ね。
 哀れよのぅ、シャオ。

 で、さりげなくフレデリカが

「誰がお前にマリーをやるか!!」

 と、マリーを自分のものだ宣言を(笑)。
 アゲハとは離れたくないしマリーも渡せない。
 両方守らなきゃいけないのがツンデレの辛いところだな。覚悟はできているか? 私はできているってところですか。
 ちょっと最近フレデリカ素敵すぎでしょう。
 億号との召喚獣対決、楽しみだ。



 さて、場面移って今週のメインイベント。
 地下に降りた碓氷たちの見たものは……そこは“特異能力者の家(ホーム)”と呼ばれる、政府の作った特殊施設でした。
 かなり大きな施設のようで、かなり破損はあるようですが動力も生きていますし、これだけの規模ってことはかなりのサイキッカーがその昔収容されていたんでしょうね。
 今ではほぼ無人のようではありますが。
 政府も裏で碓氷のような人間を使っていたようですし、PSI 犯罪者を捕まえて人体実験やってたりと、かなり悪どいことやってたんですね〜。
 あ、そういえば碓氷が政府の裏側に属する人間だっていう予想が当たったですよ。わーい(笑)。
 
 そして、その奥で待っていた、ネメシスQ本体。
 それは、巨大なガラスの水槽に浮かぶ裸の女性。
 古風だわ〜。いいわ〜こういうビジュアル。
 すっごい懐かしい昔のSFのあまずっぱい何かを思い出しますわ〜。
 そうそう、こういうところが岩代先生の味なんだよなぁ〜と最近思えてきました。

 いやしかし、ネメシスQの正体は、まったくの新キャラクターでしたね。
 祭先生じゃないかとか、アゲハの姉フブキじゃないかとか、朧のマネージャーじゃないかとか私も予想を立てていましたが、完全な新キャラのようです。
 …ですよね?
 いや、実はどこかにこの女性の 10 年前が出ていたりしたらビックリなのですが。
 記憶にある限り、こういう鋭い目の女性は出ていないはずです。


 さぁ、いよいよサイレンの核心に迫る展開です。
 碓氷たちの行動も気にかかりますが、とにかく私としてはその秘密のほうが気になって気になって(笑)。
 この女性の正体はなんなのか、そしてサイレンゲームの目的とは。
 サイレンゲームの構造も謎がいっぱいですし、そもそもこの世界の時間構造も気になるんですよ。
 ここからは一話一話いろんな情報が飛び出して、そのたびごとにこれまでの予想が崩されていきそうで、それがとても楽しみだったりします(笑)。



■PSYREN‐サイレン‐の謎
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その08 「灰化する死」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その07 「薄明るいサイレン世界の夜」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その06 「タツオの放浪期間」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その05 「現在と未来の同調性」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その04 「ゲーム主催者」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その03 「ニセ刑事の正体」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その02 「電話の声」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 その01 「噂の発生源」
・PSYREN‐サイレン‐の謎 【序文】


■関連記事
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・ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.73 “偽帝”
・ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.72 “夢喰島へ”
・ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.71 “SOS”
・ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.70 “転生の日B”
・ジャンプ感想別室 PSYREN‐サイレン‐ CALL.69 “転生の日A”
・ジャンプ感想別室 PSYREN(サイレン) CALL.67 “根(ルート)”
・PSYREN(サイレン)感想 CALL.66 “戦士” 第1回キャラクター人気投票結果発表!
・コミック感想 PSYREN ―サイレン― Vol.5 “幻視(ヴィジョンズ)”
・コミック感想 PSYREN 4 “暴王の月”
・コミック感想 PSYREN 3
・コミック感想 PSYREN 2
・コミック感想 PSYREN 1



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posted by BOSS at 22:47| Comment(2) | TrackBack(0) | ジャンプ感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>時間軸
DVDの内容が改変されていることから見て、サイレン世界の歴史改変も行われているのではないでしょうか?

http://psychobind.blog57.fc2.com/blog-entry-17.html

↑の考察サイト様では、サイレンの時間軸設定は、単一時間軸と平行世界の間をとったような形で、「現代(アゲハ達の時間軸)」にでの改変が、別の時間軸である「サイレン世界」にも影響を与えるような形なのでは? と考察されておりました。

まあ、それでも、碓氷さんの行動はおかしいらしいのですが。
ちょっと私の知識では説明できないので、詳しくはこちらも……(苦笑)↓
http://psychobind.blog57.fc2.com/blog-entry-50.html


ネメシスQの本体は新キャラでしたか。実験体というのは予想していませんでした。
いや、もしかしたら、能力強化の為にカプセルに入っている研究員という可能性もありますが(笑)

ホーム℃ゥ体は研究機関ではなく、PSI犯罪者や実験で失敗した者を閉じ込めておく場所ということなので、彼女も犯罪者か「失敗作」なのでしょうか?

しかし、ああいう事情があったのなら、サイレンドリフト達を駒のようにしか扱わなかった性格も理解できるような気はしますね。

こうなると、ややベタではありますが、ワイズメンバーも研究機関から逃げ出してきた実験体、という可能性は出てきた気がします。

でも、ネメシスQの本体が新キャラとなると、「アゲハだけ特別扱い」の伏線はどういうことなんでしょう?
他に協力者がいるのか(個人的には、猫を飼っているつながりで、マドカちゃんが研究員として出たら嬉しいです)、これもベタなところでいけば、アゲハの父親が研究員で、かつて優しくしてもらい……、みたいな感じかも。

あと、億号・大河は強そうではあるのですが、チルドレンがかなり強いのと、ネオ天草の面々は愛嬌があるので、緊迫感には少し欠けるかも。
Posted by キンカク at 2009年07月03日 00:16
 こんばんわ〜。
 実は、そちらのサイトさんは知ってました。
 面白いですよね〜。
 特に見やすく図にして説明してくれるところが凄くナイスです。

 ただ、サイレン世界の時間軸考察については、私の解釈はまったく違うな〜と思いまして、それを順を追って説明していくために『サイレンの謎』というカテゴリーをスタートすることになったりしたわけで。
 ということで、いずれ私のサイレン考察は『時空間構造力学概論』をもってクライマックスを迎える予定であります。
 さて、いつになることやら(笑)。

 いくつかの可能性があるのですが、ちょっとだけネタバレしますと、不可逆にスライドしてゆく並行宇宙タイプが一番可能性が高いと思っております。
 実は、タイムスリップするたびに平行宇宙にアゲハたちは投げ出されているのです。
 元の世界に戻ってきたように見えて、実はアゲハたちは戻っていない。
 トラベルするたびごとにそこは、全然変わって見えないけれどもちょっとだけ別の、ちょっとだけ何かが違う平行宇宙。
 ではなんでそこにアゲハ本人はいないの?と問われれば、そこのアゲハも平行宇宙のネメシスQに飛ばされて、そのまた隣りの平行宇宙に行っちゃってるから。
 そういう鏡合わせの無限世界を想定すると、一気に謎が解明していくと私は考えています。
 DVDの謎も、実は『灰化する死の謎』がそのヒントになってくれたりして、私の時間軸解釈だとすっきり解決できます。
 難点はエルモアばーちゃんの予知だったりするのですが、まぁ詳しくは、『サイレンの謎』をご期待ください。

 とか言って、エントリーする前に本編で解決されかねない最近の展開なんですが(笑)。

>サイレンドリフト達を駒のようにしか扱わなかった性格も理解できるような気はしますね。

 おおたしかに!
 あの冷徹なやり方は、自分がされてきた仕打ちを考えれば当然ということですね〜。

>「アゲハだけ特別扱い」

 ふむ、どういうことなんでしょうね。
 単にアゲハの潜在能力の高さを買っているだけなのか、それともメルゼズの力に何かもっと大きな秘密が隠されているのか。
 父親のラインは面白いですね。
 なんかそういう私情がらみってのも情緒があります。

>緊迫感には少し欠けるかも。

 たしかにそうなんですよね〜。
 ちょっと掲載順位も下がってきましたし、そういったところが影響しているのかも。
 心配ですよ〜。
Posted by BOSS at 2009年07月06日 22:51
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