今回は、ドリフトやタヴーが、死とともに灰となって消える謎について考えてみたい。
現時点での最新エピソードは 「CALL.72」 であり、そこまでの情報を元に考察を試みることとする。
過去の考察→序文 , 1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 6 , 7
【ネタバレ注意!】
PSYREN‐サイレン‐の謎 その08
ドリフトとタヴーが、灰となって消える死の謎
死体がなぜ灰になるのか
『サイレンドリフトは死して灰となる運命』
テレカの裏に表示されるルールだが、この言葉の通り、サイレン世界で死んだドリフトは、一瞬にして灰となり消え去ってゆく。
だがそれは、ドリフトだけの運命ではない。
禁人種(タヴー)と呼ばれる怪物たちや、ワイズの星将ドルキもまた、死んで灰になったような描写がされた。
また、この現象は未来だけで起こるものではない。
現代でも、サイレンの秘密をエルモアに伝えようとした蝉谷が灰になって死んでいった(CALL.13)。
この灰化する死には、いくつかの謎が隠されている。
当初この原因は、PSI伝導率の高い未来世界の特殊な空気や環境が、異常なまでに腐食を早めて死体を消去してしまっているのではないかと考えられた。
サイレンの世界に連れてこられた者のうち、PSIの才能を持つものは、一定時間経過後、発熱、目の充血、大量の鼻血などの症状を発症した後、PSI能力に目覚めることになる。
これを八雲祭は、
「それはサンレンの大気を吸引した事によるただの感染症状だ」(CALL.8)
「PSIを覚醒させるサイレンの大気…!! つまりあの世界は“PSI”の力に満ちた異界に変貌してしまったのだ」(CALL.11)
と説明した。
サイレンの大気は現代とは違う何かで満ちているのだ。
また、サイレンの大気についてはこうも言及されている。
「“PSI”の伝導率は元の世界と比べ物にならない
向こう(現代)で訓練を積んだ私達のPSIは枷が外れたように力が増すわ」(CALL.16)
「新聞などの紙媒体もそのほとんどが風化してしまって読む事ができない
運よく読めたものも…サイレンの真実に迫れる記述があったものは無かった…」(CALL.31)
「この世界は…異常な速度で風化が進んでいるって…
本や新聞はあっという間に砂になる…」(CALL.34)
これらのセリフは、サイレン世界の大気がPSI能力を活性化させるとともに、異様に腐食性の高いものであることをうかがわせる。
たとえばこの腐食の性質が、科学的な作用によるものではなく、PSI的な作用によるものであれば、灰化現象は説明がつくのではないだろうか。
このサイレンの大気下においては、死亡した生物はことごとく灰になる、そういう特殊な腐食性が全世界にわたって働いていると考えることはできないだろうか。
ところが、この説はどうも違うようだ。
環境が原因であるとするならば、まずおかしいのは、服や所持品、金属類までことごとく灰になってしまっている点だ。
周囲には金属や建物、構造物、ポスターなど、腐敗していないものはいくらもある。
それなのに、現代からサイレンドリフトたちが持ち込んだサイフや携帯電話、服やたとえば歯の詰め物などが、一瞬にして灰になってしまうのはおかしい。
また、所持者の生き死にと、無生物である所持品の灰化のタイミングが一致していることも不自然となる。
これらの一斉の灰化には、そういった自然の腐食作用ではなく、なんらかの超常的な力が働いていることが考えられる。
また、未来世界で死んだもの全てが灰化するわけではない。
このことは、未来のエルモアウッドの食事に“焼き魚”が出てきたことではっきりした。(CALL.71)
では、一度、これまでの灰化現象を整理してみよう。
灰化は、これまで以下の条件で発生している。
・サイレンドリフトが未来世界で死亡した時。
・サイレンドリフトが一般人に秘密を洩らした時。
・タヴーが核を破壊された時。
・ドルキが核を破壊された時。
ドリフトと、タヴー、両方が灰になって死んでいるわけだが、順に考えるために、まずはドリフト側から見てゆくことにしよう。
■ドリフトの灰化
まずドリフト側についてだが、これはネメシスQのPSI能力によるものと見て間違いはないだろう。
ネメシスQの立場から、その理由はとても分かりやすい。
秘密漏洩防止のため、口をふさぐためであったり、証拠を一切残さないためという理由である。
あるいは、未来にいらぬ痕跡を残さないためとか、因果律を越えて送り込んでしまった物質(ドリフト)を回収するためとか、そういう理由も考えられるだろう。
ネメシスQはドリフト達を未来に送り出す際、事前にそういうPSI処理を仕込むのかもしれない。
話が少々横にそれるが、ネメシスQは直接の攻撃力を発揮したシーンはいまだなく、サイレンドリフトを灰にすることだけが攻撃能力である可能性がある。
逆に言えば、ネメシスQは一般人を攻撃する事はできない可能性が高い。
情報が天樹院エルモアに漏れてしまった際、エルモアを殺害しなかったのはこのためだった可能性があるのではないか。
話を戻す。
サイレンのテレカと所持者には、特別なつながりが作られていることも想像される。
・最初のゲームから帰還した際、蝉谷のテレカはいつの間にかポケットの中に入っていた。(CALL.8)
・朧のテレカを検証しようとした番組スタッフには、まったく使用できなかった。(CALL.13)
・テレビで証言しようとした朧が胸を押さえて倒れた時、朧のテレカが反応していた。(CALL.13)
・テレカを破壊された蝉谷は灰となって死亡した。(CALL.13)
・金庫の中に保管してあったはずのテレカが、いつのまにか服の中に入っていた。(CALL.15)
以上のことから、テレカと所持者には何らかの重要なつながりがあり、その作用によって、テレカを破壊することで所持者を灰にすることができるのではないかと推測できる。
またネメシスQはテレカを破壊するまでいかなくとも、なんらかの反応をテレカに起こし、所持者に発作を起こさせることもできるのではないかと考えられる。
未来でサイレンドリフトが死亡した際には、テレカが自動的に能力を起動させ、自身を灰化させることで所持者も灰化させているのではないだろうか。
あるいは、少々突飛な推測をしてみる。
サイレンドリフトは、実際にはタイムトラベルをしていないのではないかという考え方もあるのだ。
サイレンドリフトは、その身体的データ、および精神面でのデータを全て解析され、その膨大なデータがテレカを介して未来に送信され、そこで再生されたものが実体を《投影》され、ドリフトとなっているのではないだろうか。
そして帰還したものにはそのデータが本体のほうにインプットされ、《再統合》が図られる。
その最初の解析に必要な過程が、実はあの“最初の電話のアンケート”だったのではないだろうか。
だとすると、死亡と同時にその実体化が解け、灰となってしまうことは簡単に説明がつく。
元々彼らは本当の肉体ではなく、周囲の塵などを集めて作られた模擬人体に過ぎなかったわけだ。
また、テレカに全データをコピーされたものは、その時からテレカと本体に密接なつながりが作られ、テレカのデータを破壊することで本体そのものが破壊されてしまうのではないだろうか。
理屈ではなく感覚的にではあるが、そのように想像がついてくる。
そして、実はこれこそがこの説の本題なのだが、この説を推し進めてゆくことで、ある大きなパラドックスを解くことができるのではないかと筆者は考えている。
これについては機会を改めて、後日紹介することにしよう。
■タヴーの灰化
さてこうなってくると、禁人種タヴーとドルキの灰化は、別の原因から探らなければならなくなる。
彼らには、情報漏えいを防がなければならない理由はないし、タイムトラベルで崩された因果律のバランスを取り戻す必要性はさらにない。
彼らの灰化にも、いくつかの特徴がある。
まず、彼らの場合は 「死んだら」 ではなく、「核(イルミナ)が破壊されたら」 灰化する。
「“イルミナ”
それがボク達W.I.S.E(ワイズ)の持つ核(コア)の名前です。
PSI能力を何倍にも高め
身体の老化を著しく遅らせ・・・
大気中のPSIを還元し
食料を必要とせず生命活動を営むことができる
この新世界の環境に適した新しい生命形態
それが…『イルミナス・フォージ』です」(CALL.62)
シャイナのセリフから分かるとおり、彼らの肉体は既に生命としての常識を逸脱している。
生命活動というよりは、もはや《ゾンビ》のような存在であると考えたほうがよさそうだ。
彼らは、核の力でPSI的に無理矢理動かされている擬似生命活動体に過ぎない。
そのため彼らは核の力を失うと、存在としての根幹を失い、活動を一瞬たりとも維持できず、即座に灰化してしまうのではないだろうか。
だがここに、もうひとつの問題が持ち上がってくる。
ドルキの灰化に注目していただきたい。
彼の場合、身につけていた服や、バイザーまでもが、彼の死とともにあっというまに灰化してしまったのだ。(CALL.65)
これはいったいどういうことなのだろうか。
これには二つの仮説が成り立つ。
ひとつは、実はあの服やバイザーは、ドルキの体の一部だったという説。
ワイズは世界を自分達の思うとおりに作り変え、新世界を作り出すことに成功した。
しかし、考えてみて欲しい。
彼らは残念ながら、服屋や仕立て屋、クリーニング屋も全て殺してしまったのだ。
自分達で一から服を作ろうにも、その原材料となる動植物もほとんど絶滅しているだろうし、合成繊維を作る技術も残っていないかもしれない。
そこで困った彼らは、体の一部として最初から服を着ているような姿をとるしかなかったのだ。
ドルキが二度目に出現した際、着ている服が変わっていたことは、二度目のイルミナスフォージで姿形が影響を受け、服も変わってしまったのだと説明がつく。
実は彼らは、姿形こそ服を着ているように見えて、すっぱだかだったのだ。
もうひとつは、実はあの服は、自身が常時“バースト”で作り出ししている 『幻影』 に他ならないという説。
彼らは実は、真実すっぱだかなのだ。
アゲハたちがドルキと初遭遇した時、彼らはすでにPSI能力に目覚めていた。
そのため彼らはドルキの服を見る事ができたが、彼らがもしPSI能力に目覚めていなかったとしたら……。
アゲハ達はそこに、ちょっとした新世界を目にしていたのかもしれない。
ワイズは、もしかすると取り返しのつかない過ちを犯してしまったのではないだろうか。
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今日初めてPCから拝見しました。
PSYRENの考察、感想どれも面白くてとても鋭いと思いました。
凄い…!!
プロフィールの写真に(良い意味で)動揺して思わずコメントしてしまったのは内緒です…☆
また拝見に参りますV
失礼しました。
コメントありがとうございます^^
サイレン本編で次々と新事実が明るみに出て、このサイレンの謎で推理したことがいろいろ瓦解しちゃってたりする今日この頃ですが(笑)、楽しんでいただけたようでうれしいく思います。
プロフィールの写真に反応いただいたのは久々ですw
もし街中でこんなヒゲ男爵を見かけたら声かけてやってくださいね(←いねーよ!そんなヤツ!w)。
またのお越しをお待ちしております。