今回は、現在と未来を結ぶ時間タイミングの同調性について考えてみる。
現時点での最新エピソードは 「CALL.69」 であり、そこまでの情報を元に考察を試みることとする。
過去の考察→序文 , 1 , 2 , 3 , 4
【ネタバレ注意!】
PSYREN‐サイレン‐の謎 その05
サイレンが時を結ぶ、現代と未来の時間の同調性
タイムトラベルは、到着タイミングを自由に選べるなら、出発時点よりも前の時間に帰ってくることで、出発する前の自分に出会う可能性が出てきてしまう。
だが、サイレンにおいて、それはない。
注目すべき事例を列挙する。
・作中の時間経過描写を注意深く観察すると、ゲームに半日かかれば出発から半日後、5日かかれば5日後に帰還するようプログラムされているようである(描写がはっきりしないので確証はない)。
・第1話において失踪した雨宮を追い、5日後にサイレン世界に突入したアゲハが遭遇したのは、5日ほどサイレン世界を放浪したものと思われる雨宮であった。
・未来世界から電話ボックスを利用して帰還できるのは1人ずつだが、使用した順番がそのまま帰還する順番となっている。
・未来への出発が 「雨宮⇒アゲハ」 の順番で、1分あけて行われれば、未来への到着も 「雨宮⇒アゲハ」 の順番で、1分あけて行われている様子(確証はないが、少なくとも逆の現象は確認できない)。
・現代の昼に出発すれば未来でも昼であり、未来の夜に帰還を果たせば現代でも夜となる。
・2回目のゲームでは、ゲーム開始時は日中だったが、アゲハの腕時計がPM7:55を指すころには夜(サイレン世界の夜については機会を改めて考察する)となっていた。
・エルモアが18時の便に間に合うかどうかの瀬戸際で開始された4回目のゲームでは、空の描写はサイレン世界の夜を表すものと思われる薄暗さ。
・現代に戻ってきたアゲハらが、出発前の自分達と遭遇してしまうようなことは起きていない。
・現代は、3回目のゲーム時点で 「2008年の6月終盤」 であり、未来は、ドルキによると 「2018年の6月も終わる時」 であった。
・CALL.47において、ネメシスQは 「10年前の平行時間軸」 へ送り出されたことが分かる。
以上のことを考えれば、現代と未来をつなぐサイレンのタイムトラベルは、ほぼ一秒の狂いもなく 「10年キッカリ」 の間隔を跳躍させる効果であると推測できる。
AとBの2回のサイレンゲームが実施されたとして、10日と5時間の間隔で実施されたのなら、それは未来でも完全に10日と5時間の間隔で発生する。
Aで未来から帰還したはずのものがBの帰還タイミングより後に帰ってくることはなく、Bで未来に出発したものがAより先に未来世界に現われることもない。
「10年キッカリの跳躍」。
以上は、これから進める考察の前提条件となる。
もしこれが確定事項だとすれば、この同調性は何を意味するのだろうか。
注目したいのは、前述の 「ゲーム主催者」 で提示した“本体の存在”である。
この“本体の存在”が、過去と未来の時間の同調性が何を意味し、どのような役割を持っているかのヒントとなるのではないだろうか。
自然に考えれば、“本体”にとっては、“自分の時間”でゲームの経過を見届ける必要があるのではないかという仮説が出てくるのだ。
まずは物理的問題。
“本体”は時間旅行が不可能な体だ。
「私自身の…肉体が…時空転移に…耐えられない」(CALL.47)
よって“本体”は、“本体”が縛られる時間法則にしたがってゲームを運営しなければならない。
無茶なタイムスケジュールでは運営できない。
“本体”は不自由な肉体でありながら、前述のとおり、ゲームフィールドの選定や、スタートとゴールの設置など、もろもろの作業が必要なのだ。
そして、問題は物理的な運営面だけではない。
このゲームの目的の面からもこれは重要である。
“本体”には、サイレンのゲームを繰り返すことで、いかに歴史が変わってゆくかを“見届ける”必要がある。
つまり、希望する歴史改ざんが行われたかどうかを、だ。
それには、時間旅行の出発タイミングと到着タイミングにズレがあっては大きな不都合が生じてしまう。
せっかく良い結果を生んで歴史改ざんを成功させても、あるドリフトがその改ざんが行われるタイミングの前に戻り、失敗という結果で“上書き”してしまっては元も子もないのだ。
良い結果を生んだところで、ぴったりサイレンのゲームを停止させるためには、この時間の同調性は絶対に必要なシステムなのではないだろうか。
そしてこれは非常に良く出来たシステムでもある。
もし、サイレンのゲームが順序どおり処理されてゆき、どこかのタイミングで歴史改ざんに成功した場合、その歴史における“本体”は、歴史改ざんを行おうという動機を失う。
つまり、ネメシスQが最初から生まれない新たな歴史が発生することで、サイレンのゲームはそこで自動的にストップすることになるのだ。
頭の良い運営者であるならば、未来の運営者からのなんらかの“つながり”が途絶えた段階で、ネメシスQには活動を終了させるようプログラムさせておくだろう(この論法を完成させるには、サイレンの時空の構造についての考察が必要となる。それはまた機会をあらためて)。
これは余談であり、個人的な感想の部類だが、“本体”は、非常に洗練されたシステムデザイナーであると感じさせてくれる。
10年キッカリ跳躍させる、という一見応用力のないシンプルなシステムで、これだけのことを見事に成し遂げているのは驚嘆に値する。
複雑なシステムより、単純明快なシステムこそが強靭で美しいシステムだ。
さて、以上の文章はCALL.68の段階で書いたものだったのだが、CALL.69で前提が崩れかねない場面が出てきた。
そう、タツオの髪の長さである。
これについてはまた機会を改めて考察してみたい。
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