毎週欠かさず観ております。
当初はあちこちギクシャクしたところも感じられたのですが、役者さんたちもスタッフ達も徐々に慣れてきたのか、最近は物語世界が円滑に回りだし、10 話目を迎えた今回、旧シリーズのファンをも唸らせるような素晴らしいエピソードを作り出してくれました。
物語の大筋は、昨年おおいに世間を騒がせた、通り魔的無差別殺傷事件を主題に置き、そこに親の情、替え玉殺人などを絡め、おおいに必殺らしい現代を投影したモチーフとなっておりました。
さらに必殺チームには、仲間内でのぶつかり合い、仕事人としてのタブー、裏家業に一度手を染めてしまった人間の地獄をテーマとして試練を与える展開。
これは私など、旧作シリーズのファンにはたまらないモチーフです。
“必殺”が勧善懲悪のヒーローものと一線を画するのは、こういった主人公側の 『影』 『葛藤』 があればこそなのです。
所詮は殺して何ぼの裏家業。
自分の事を正義の味方と考えるのは大きな勘違いなのです。
よく勘違いされがちですが、必殺は、世のため人のために人を殺す正義の味方ではないのです。
それを象徴するようなセリフが今回、主水の口から出ましたね。
「仕事人を桃太郎かなんかと勘違いしているんじゃねえのか?」
というようなセリフだったかと思います。
あれは正体も分からない殺人鬼を見つけ出せと言う町人たちの無理無体に言っているセリフでしたが、暗にこのテーマを表したセリフでもあったのではないでしょうか。
仕事人は桃太郎ではない。
仕事人がもし自分を桃太郎だと思いあがってしまったら、それは己の善悪の基準を絶対だと過信する“狂信”に繋がり、際限もない利己的な私刑に堕ちてしまいかねません。
この世の善悪は実体不確実。一方から見れば正義でも、他方から見れば悪であることなどざらにある。
そういう無常でリアルな世界を描けるのが必殺ワールドの懐の広さ。
そのような世界で、正義のヒーローなんてことができるわけもないのです。
だからこそ、仕事人たちにとって思いあがらないための最後の歯止めであり、戒めでもあるのが“仕事料”なのですね。
仕事人は金をもらって鬼を退治する、己自身も鬼に他ならないのです。
それを伝えるための今回のサブタイトル 『鬼の末路』 だったのではないでしょうか。
いや〜今回はシビレました。
まだまだ仕事人としては甘っちょろい源太(大倉忠義)と涼次(松岡昌宏)の失敗と、それと対照的にハードさがクローズアップされた渡辺小五郎(東山紀之)と中村主水(藤田まこと)。
特に仕事の現場を目撃した依頼人を斬り殺し、さらに源太のことまで斬り殺しかねない小五郎のハードさはすばらしい。
「今回はやりにくい仕事だから降りる」 とか言っておいて、その実信用しきれない仲間を監視しているという冷徹さ。
これぞ必殺といったところでしょう。
普段は昼行灯の渡辺小五郎が、裏では見せるこの凄み。
未だにそのキャラクターの謎は明かされませんが、さぞや過去にいろいろあったんでしょうね。
当初あまり魅力的に見えなかった小五郎ですが、ハードさが明確になってきて急激に惹きつけられるものを感じ出しました。
今後の彼の展開が気になります。
また、今回はめずらしく続きものエピソードなんですね。
白黒劇画タッチになって続いたときは驚きました。
次回おそらく事態はうまくまとまって源太は斬られずに済むのでしょうが、仕事人たちはいったいどうなっちゃうんでしょうね。
気になります。
シビレたのはそういったテーマ面だけではありません。
演出・演技面も今までとは格段の出来。
カメラワークや画面作りが冴え渡り、出演者もピタリとはまった素晴らしいドラマでした。
特に発狂寸前の母親(池上季実子)が町をさまよい、依頼人となるに至る場面。ここの葬式行列の使い方にはゾクゾクきました。
シークエンスごとの切り替えタイミングがキレまくり。
依頼人のどん詰まり感が胸に迫り、突き刺さるようなインパクトをもっていました。
また、無差別殺人鬼<黒頭巾>(荒川良々)の最後の犯行にいたる場面も素晴らしい。
陣笠を上げると頬を伝う涙、というシーンは無性にこちらも涙を誘われました。
なんだか今回は妙に胸に来る、いいドラマでしたね〜。
また、内山信二くんや平泉成さんも脇を魅力的に盛りたてるいい役どころ。
これは今回のシリーズで1、2を争う名エピソードとなったのではないでしょうか。
当初は勧善懲悪もののわかりやすい時代劇になったのではないか?という印象でしたがとんでもない。
やはりそこは必殺。
いよいよハードなドラマの真骨頂が楽しめそうです。
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