2009年02月23日

映画感想 クローバーフィールド/HAKAISYA

満足度83点(レンタルDVD)
 ハンディカメラで撮影された一本の映像に記録された、恐るべき大事件の記録。
 そのとき、夜のマンハッタンは地獄と化していた。
 災厄の元凶をひた隠しに隠した宣伝戦略は成功。
 あの思わせぶりなトレイラーは思わず観たくなっちゃいますもんね。
 この映画の面白さは、そのなんだか分からない、分からなさこそがミソなのです。
 でも、ネットで情報を探すといとも無造作に 「それ」 を書いちゃってるところがいくらでも目に入ってしまいます。
 観たい人は予備知識なしでとっとと観てしまいましょう。
 Google も Wikipedia も使っちゃいけません。一瞬で目に入るところに決定的な文字が平気であります。
 分かっちゃったら面白みは半減以下。
 とにかくとっとと観ちゃうのが吉です。

【ネタバレしないよう注意して書いてます】



あらすじ

 物語は、最初から最後まで、ハンディカメラで素人が写した一本の映像を追うことになる。
 最初は若い男女がイチャイチャしている光景から始まるが、どうやら重ね撮りをしたものらしく、すぐさまパーティの様相が映し出される。
 送別会らしく、送り出される男性に対して送る言葉を、一人一人がカメラに向かって残していったり、そんなときに限って出てきてしまうスキャンダラスなウワサで、パーティがちょっとおかしな雰囲気になったりする。そこまではごく普通の、なんでもない光景。
 だが、突如事態は急変する。
 大音響とともに街が揺れ、一瞬の停電。騒ぎ出す会場の人々。
 ニュースは港で船が炎上を始めたと伝え始める。物見高い若者達がビルの屋上から様子を見ようと行って見ると、彼方のビルが大爆発。巨大な破片が雨あられと降り注ぐ。パニックになってわれ先に逃げ始める群集。
 ビルから脱出した若者達だったが、次に、目の前に飛んできた破片は驚くべきものだった。
 それは、ボロボロになった自由の女神像の頭部であった。
 ニューヨークにいったい何が起こっているのか……。


 あの 『トランスフォーマー』 上映前に謎めきまくった予告編が流され、大きな話題となった作品ですね。
 何が起こってるのかまったくわからないけど、なんだかとんでもないことがニューヨークに起こってしまったぞって事だけがわかる非常に思わせぶりなトレイラーで、宣伝効果はバッチリだったのでした。
 しかしてその蓋を開けてみると? 


 最初から最後まで素人の手持ちのカメラ映像ってことで、観る前にとにかく気をつけなくちゃいけないのが 「画面酔い」 です。
 劇場上映時にも、「画面に酔いますので注意」 というパンフが配られたとか。
 とにかく終始手ブレしまくり。
 私はそういうのにけっこう強いほうだったはずなんですが、大画面テレビにかじりついて観ているうちに、いつのまにかウェっていう気分になってしまいました。
 いや、直前にカップラーメンでおなか一杯になっていたってのも悪いんですが(笑)。
 鑑賞時には画面酔いする人は気をつけて、そうでない人でも画面からちょっと離れて観るのをオススメいたします。
 あと、最近は 「吹替え派」 が増えているそうですが、コレの場合は字幕があったほうが、画面中唯一固定されているモノが出来ますのでかなり救いになるかと思います。
 実際、重要な場面では手ブレもピタリと止まり、ピントもしっかりして大事なものをしっかり映してくれますが、それ以外のパートはひたすら逃げ惑って手ブレしまくり。
 むしろそのあたりは見なくてもいい意味のない映像と割り切ってしまって、目線をちょっと外してしまうくらいがよいのかもしれません(笑)。


 この映画を分類するなら、「パニックもの」 となるでしょう。
 ハンディカメラの視点で物語は終始進行し、観客は逃げ惑う群集のひとりとなって、前代未聞の災厄を疑似体験できる恐怖映画です。
 事態はとにかく巨大。
 マンハッタンのみならず、原因や波及効果はどこまで大きいものかよくわからないほどです。
 というのも、描かれる視点が一本のビデオテープから外に出ないので、いったい何が起こっているのか、そして結局どうなったのか、確たる全体像は最後まで把握できないのです。
 それこそが、この映画が描く最大の恐怖なのではないかと思うのです。

 人が何らかの巨大災害に見舞われたとき、その当事者達に万全の情報は入りません。
 全体の規模がどうなっているか、今自分がいる場所が安全かどうか、どこに行けば求めているものが手に入るのか、原因が何で、救助隊や国や軍隊はどう動いているのか、結果はどのくらいで出そうなのか。
 そんなことは 「映画」 でもなければ分からないのです。
 そう、通常のパニック映画はそれを同時並行で描きますから、観客は万全の情報を常に手に入れ、映画が仕掛けた謎や展開だけに集中することができます。
 時に被災者が陥るパニックや、愚かな行為を高見の見物気分で眺め、バカだなァと笑ったり、嘆いたりもするでしょう。
 しかし、そうやって気楽にしていられるのは、映画の登場人物よりも圧倒的な情報量のアドバンテージを観客が維持できているからなのです。
 この映画は、そのアドバンテージを完全に除去し、被災者と完全に視点を一致させたところが最大のポイントなのではないでしょうか。
 
 そこが分からないで観てしまうと、「なんだこの映画は、結局最後までよくわからないままなんて脚本いいかげんだなぁ〜」 ってなってしまうでしょう。
 しかし、この映画が描きたかったのはおそらく、そういう通り一遍のパニック映画とは違うところなのです。
 「これって続編ありきで作ってるんじゃない?」 という批判があるようですが、それはちょっと違うんじゃないかな〜というのが私の感想です。

 
 しかし、その登場人物と視点を完全一致させたことで、この映画はとても大きな難題を脚本に負わせることになったんですね。
 普通被災者は、災害の中心点からいち早く逃げようと行動します。
 それに反して映画は、災害の序盤や周縁部から物語を始め、事態の核心に向かって動こうとするものです。
 被災者のカメラに視点をすえてしまったことで、この両者の綱引きが物凄く難しいものになってしまったのですね。
 そういった面では、脚本は結果的にこそいたって平凡に見えるものになりましたが、その呼吸は鮮やかだったと思うのです。
 ドキドキ、ハラハラ、安心、そしてドッキリという 「テンション曲線」 もしっかりできていて、スリリングなシーンもバッチリ。
 傾斜したビル上など最高にスリリングなシーンでした。
 情報も少なすぎず与えすぎず、あの手この手でカメラの前に与えられます。
 私としては、脚本家はこの大きな制約の中でよくやったなぁ〜と感心してしまいました。
 

 ところで、このカメラマンとなるハッド(T・J・ミラー)くん、なんと凄まじいプロ顔負けのカメラマン根性でしょうね!
 普段は手ブレしまくりですが、どんな恐怖の事態でも絶対カメラを捨てず、イザという時にはカメラワークもシッカリ! ピントもバッチリ!
 思わせぶりなカメラワークから、痒いところに手がとどく親切な画面構成まで!(笑)
 まさにピューリッツァ賞ものの大活躍です。
 とてもさっきまでカメラの使い方も分からなかった、ちょっと田舎っぽい普通の青年とは思えません。
 この異常事態に潜在能力が発現したとしか思えませんよ(笑)。
 この映画最大の功労者はまさにこの青年。
 ちょっと言うことが無神経で、同行の女性達のヒンシュクを買っちゃったりしてますが、そのへんはこの凄まじいばかりのカメラマン根性で大目に見てやってくださいって気分になります(笑)。

 本当はこの青年のガンバリに88点はあげたいところなんですが、ちょっと酔っちゃったので83点になりました(笑)。
 まだあちこちに情報が隠されている映画らしいですし、ネットを探せばあちらが用意したニセのサイトがあるといいますからまた改めて観たいんですが、今度は体調が万全のときにしますかね。


 作品中でも言われていますが、この災厄はどうしても 911 のテロを連想させますね。
 この作品が 911 について何か言いたいのだとは、私は推測できなかったのですが、おそらくは 911 がひとつのショックとなって生まれた映画のうちの一本であることは間違いないでしょう。
 それだけ 911 は根深く、今も痛みを発し続けているんですね。



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