探偵ガリレオシリーズもノりにノって、今回は初の長編もので、かつてない驚くべき事件に挑戦しております。
過去感想⇒『探偵ガリレオ』、『予知夢』
これまでは、オカルトじみた奇怪な事件を科学的に解き明かすと、そこに驚くべき仕掛けがあったというのがお得意のパターンだったガリレオシリーズですが、今回はまったく違います。
専門家でないと知らないような科学的なギミックはまったくなし。
いわば正統派(?)の殺人事件にガリレオ先生がとりくんでゆく、直球勝負な推理物となっております。
科学的なギミックは、ガリレオシリーズにおける大きな魅力だったとは思いますが、この路線変更は失敗ではないでしょう。
ああいった読者としては知らない科学知識で謎が構成されている場合、それを楽しめるのは短編が限度なのではないでしょうか。
長編で長々とひっぱられ、ひたすらに悩まされた挙句、最後に明かされる真相が知りもしない科学の知識を必要としていたら、読者としてはガッカリもいいところだったりするのではないでしょうか。
短編ならば、「お? 今度はどんなギミックなんだ?」 と期待してパパッと読み進めることができますから、ガリレオシリーズの楽しみを充分堪能することができますが、長編だとそのへんが逆に働いてしまいそうです。
そして、例えギミックを捨てたとしても、やっぱりガリレオはガリレオなんですね。
ガリレオシリーズの面白さというのは、常識を打ち破るような科学的思考の面白さだと、私は思っています。
固定観念や見せ掛けに騙されず、ただ起きた現象をありのままに、論理的に整理してゆけば、おのずと正解は導かれてくるのだという、そういう科学者という面白い 「変人」 の思考、頭脳パズルの絵解きこそが一番の魅力なのではないでしょうか。
そういった意味では、今回登場する石神という男こそ、ガリレオシリーズを体現したような人物でしょう。
天才数学者にして高校教師の冴えないおじさん、石神の強烈な個性!
今回はこの人に尽きますね。
このひと、一つ間違えればストーカーですよね(笑)。
ほとんど会話したことさえもない隣人女性を命がけで愛し、いざその女性が誤って殺人を犯してしまったら、隠ぺい工作を買って出て、本人よりも重い役割を喜んでやろうとする。
そして、最後に明かされる驚きの真相。
これほどまでに一途で純愛な、それこそ眩しいほどの献身的な愛情物語はたしかになかなかお目にかかれません。
とても胸を打つ素晴らしい物語でした。
ラストシーンなどはもう号泣状態。滂沱と涙が止まりませんでしたよ。
そして、石神の講じたトリックの完成度も痛快なまでの素晴らしさ。
普通は刑事や探偵が調べればどんどん犯人側はボロが出て、次第に真相が明らかになっていくものですが、今度の事件はそうはいかない。
調べれば調べるほどに、どんどん石神のペースにはまり込んでゆくようで、オイオイ、この石神はいったいどこまで考えているんだと。
あまりの天才ぶりにあきれ返ってしまうほど。
なによりも、最後に判明する最大のトリックの見事さ!
トリック自体もインパクト充分ですが、そこから受けるのは大きな感動なんですよね。
ガリレオシリーズは初の長編化にあたって、献身の純愛をテーマに置くとともに、そことは切っても切れないところに頭脳パズルを本題として読者に突きつけたわけです。
この構造こそが東野圭吾先生の、今回もっとも物凄いところだと思うのですよ。
パズルはパズルで面白いし、純愛も純愛で胸を打つ素晴らしい物語です。
しかし、パズルを読み解いた瞬間にこそ、純愛の物語が本当に完成するんですよね。
なんとまぁ完成度の高い推理小説なんだと。
こういう刑事コロンボタイプの、犯人の犯行を先に見る推理ものは、思わず犯人側に感情移入してしまうものですが、これは本当に完全犯罪が成り立ってもいいんじゃないだろうかと思ってしまいました。
石神さん、カッコよすぎですよ!
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