今更な話ですが、100 巻が出てからもうすでに4分の100巻が出ていると考えると、なんつーかもうとんでもねーシリーズですな。
過去感想→115 , 116 , 117 , 118 , 119 , 120 , 121 , 122 , 123 , 124
外伝感想→21
【ネタバレ注意!】
ゾンビ・スカール!
前回に引き続き、今回もヨナの草原大旅行記。
そうそう簡単にヤガにつかせてくれませんでしたか(笑)。
とはいえ、今回は前回とまったく意味の違う旅行記となりましたね。
なんといっても草原の黒太子スカールさんですよ。
前回ラスト、さっそうと登場してヨナを助けてくれたのが印象的でしたが、あの時点ではただオタスケマンとして登場してきたんだな〜くらいの認識でしかなかった私。
きっとヤガまでヨナを連れてってくれるだけで、またどこかへ行っちゃうんだろうな〜くらいの簡単な展開を予想していた私でしたが、とんでもないとんでもない。
なんと迂闊だったことでしょう、まさかこんなに深くスカールさんが描かれることになろうとは。
スカールさん、まさかのブチャラティ化!!(爆)
いや、すんません、ジョジョネタです。
これだけは我慢しきれなくって(笑)。
いや〜グラチウスに悪い薬を処方されて、麻薬中毒みたいになってるってことは想像できていたんですが、まさかのゾンビ化ですよ!
酷いやっちゃな〜グラチーの爺さんは。
ただのひょうきん爺さんじゃなかったですね。
まぁ闇の司祭の面目躍如ってとこですかね。
あのスカッと爽やかスカさんを、まさかのバイオハザード化ですもんね〜。
恐ろしいしおぞましいし、よくまぁそんな状態に耐えられるものだと考えると、さすがスカールさんの精神力よと感服仕る以外ないわけですが。
また、これほどにギャップの激しいこともないでしょうね。
今後スカールさんが完全な健康体に戻れることはきっとないんでしょうね。
あのイェライシャですら匙を投げたわけですし。
きっとすでにスカールさんの血液、体組織は、ほとんどグラチウスによっていいように入れ替えられてしまっていて、黒魔道の創造物にされていたんでしょうね。
それを、イェライシャがとりあえずは黒魔術の影響が出ないくらいには措置したとはいえ、元に戻すにはすでに入れ替えられすぎていたってことなのでしょう。
もうほとんどゾンビというか、魔道人形と化しているのかもしれませんね。
あわれスカさん。
そのスカさんの崩れそうな心を支えているというのが、未だに燃え上がる、イシュトヴァーンへの復讐心だというのが驚き。
草原に戻ってきたと知った前回は、さすがにもう復讐の炎も沈静化したのじゃないかなと思ったのですが。
むしろその復讐心がなければスカールさんの心は崩れてしまうのかもしれませんし、ゾンビとなりはてたからこそ、いやおうなく復讐心に猛り立つしか、生きる術がないのかもしれませんね。
全てを失われたからこそ、余計なものがとっぱらわれていよいよ復讐の心にまい進するしかないのかもしれません。
そう考えると、スカさんも哀れな人だなァと思いますよ。
そして予言されている 『スカールの死』 という巻がいったいいつ来るのか、そしてどのように訪れるのか、妄想は膨らむばかりです。
どうにもそれが幸福な形で来るようには考えにくいのが悲しい話なのですが。
できたらそれが、ナリスのようにグインの見守る元で、という形であることを祈るばかりですね。
スーティについて
今回イシュトとのなれそめも含めて、いろいろとスカールと情報交換をし、ヤガに同行してもらう事にまでなったヨナですが、そのスカールの復讐心を知れば知るほど、余計に打ち明けられなくなってきたのがスーティの話ですね〜。
復讐の鬼と化したスカールさんに、まさかイシュトの子供を紹介するわけにもいかず。
もしスカールさんがイシュトの子供だと知ったら……そしてそれは作中何度も言われてきたように、イシュトの顔を知っている人間であれば、ひと目でそれと見分けられると言ってますからいともたやすくバレてしまうのは明白……たとえスカールさんが竹を割ったような性格であるとはいえ、どのような事態となってしまうか分かったものではありません。
小さな子供を人質にとるようなことは、スカールさんらしくないとは思いますが、復讐のためとあらば、スカールさんの心が揺れないとも限りませんものね。
ましてやスカールさんと知り合って間もないヨナには、スカールがいったいどういう態度に出るかなんて分かりようもありません。
もしヨナがスーティとこのまま接触できたとしたら、これはちょっと微妙なラインになってきたかもしれませんね。
しかし、ヨナはスーティたちを確保してパロに連れて帰ろうとするでしょうか。
今回のメインの任務はヤガの様子を確認することであり、副次的な目標がスーティたちの様子を確認することだったと思われます(あと、個人的な目的もありましたね。そっちのほうはどうも絶望的な匂いがしてきましたが)。
あわよくばスカールには知られないよう、個人的にヨナだけでフロリー・スーティ母子と接触し、連絡を取るくらいで、あとはそっとしておく、くらいのところがちょうどいい落としどころなんでしょうね。
しかし、そのへんでイシュトの動きやブランの動きで不測の事態に陥る、なんてことも充分考えられそうですね。
はたしてどうなるのでしょう。
ブランとヨナのスーティ争奪戦になると思っていたのですが、ここに意外なスカールさんという伏兵がからんでまいりました。
予言ふたたび
そしてまた、実に興味深いのがスカールさんの抱えるノスフェラスの謎。
ご自身まったくそれを打ち明けもせず、ここまで物語から遠ざかりまくっていたものですから、その謎の重要性そのものをすっかり忘れていました。
その秘密のためにこそ、グラチウスに付けねらわれ、ここまで酷い体にさせられてしまったんですものね。
スカールさんが知ってしまった《あること》っていうのは、いったいなんなんでしょうか。
そしてさらに大きく興味をひかれてしまうのが、ノスフェラスで得たという《あるもの》ですね。
この《あるもの》に関しては、スカールさんの言っていることが二転三転しているから余計に謎めいているんです。
あるときは《あるもの》をノスフェラスからたしかに持ち帰ったと言い、またあるときはそのようなものを持ち帰ったり拾ったりしたなど、正直覚えがない、というようなことを言っているんですね〜。
ヨナもこれには当惑したんじゃないでしょうかね。
ノスフェラスの秘密については絶対に口を開こうとしないスカールさんですから、もしかするとそのへんは煙に巻いて話しているのかもしれませんね。
うぬー、気になる。
そして、グインの記憶問題にからめて、ここでまさかのあの予言!!
これには正直驚いた。
「北の豹と南の鷹がはじめて相合うとき、
そこに何かが生じる」
あのルードの森での出会いで、それが果たされたのか、それとも果たされなかったのか、少々肩透かしをくらったような気をさせられたのは、そうかこのためだったのかと。
これはまさかの展開でした。
記憶を失っていたグインは、グインであって半分グインではなく、次に出会うときこそ、本当に 「はじめて相合うとき」 であると。
まるで意地の悪いトンチ話みたいなものですが、ヤーンの運命というのはまさにそういうものなのかもしれませんね。
では、そうするといったいそれはいつ、どういう形でなのかと、必然的に考えはそちらにゆくわけですが。
いや〜これは面白い。
スカールさんの登場で、予想だにしなかった壮大な未来の運命図が、ババーンと広がって垣間見えたような、そんな感触がありました。
まったく、125 巻にもなってどんだけ風呂敷を広げなさるんだか(笑)。
ヤガオストロの城
ところでヤガですが、ヨナとスカールの会話によってなにやらキナ臭いものが臭ってきましたね。
たしかに不戦無抵抗では、草原と沿海州に囲まれて何十年も生き残っていられるわけがない。
そこにはなんらかのカラクリが絶対にあるはずですよ。
それがふたりの言うとおり、周囲との密約によるものなのか、闇の軍団によるものなのか、それとも謎の魔術士軍団によるものなのか。
それはわかりませんが、見かけどおりのものじゃないようなそんな気がしてきましたね。
なんだか、表では観光立国の顔をしながら、裏では世界を動かすゴート札を刷っているカリオストロの城にでも忍び込むような、そんなワクワクを感じてきました。
ヤガの夜の町でカゲの軍団と大乱闘!なんてこともあるかもですよ(笑)。
今回のミロク教編、意外と面白そうだな〜と思えてきましたよ。
カメロン、お前もか!
最終章はところかわってゴーラのふたり。
イシュト暴発!
そうですよね〜、まさかイシュトがそんなに我慢できようはずもなく(笑)。
それを慌てて追いかけてゆくカメロンさんですが、は〜、あなただけは常識人だと思っていたのに……そんなに簡単に説き伏せられて、最後はすっかりのせられて……。
イシュトは間違いなくある種の病気ではありますが、ではそうするとカメロンさんもやっぱり“イシュト”という名の病気なのだなぁ〜とつくづく思い知りましたよ。
ゴーラをおっぽり出してふたりでパロへゆくなんて、普段のカメロンさんの判断力であれば、絶対うなずけるはずもない暴挙です。
イシュト・ゴーラを打ち立てるまでに、いったいどれほどの人が命を落とし、運命を狂わせ、飲み込まれてここまで来たのか。
それを思えばほっぽりだして出て行くことがどれだけ無責任で、王道に反することであるかが分かると思うのですが。
またたしかに、ヴァラキアを捨ててイシュトのもとに走ってきた冒険男児カメロンさんですが、あの時と今とでは話が違いますものね。
ヴァラキアを発つ際には、カメロンさんは後のことが綺麗に行くよう、きっちりと整理してきたはずですよ。
国家として立派に制度が出来上がり、人材もしっかりとあるヴァラキアと、まだ制度も人材も形だけでヨチヨチ歩きのゴーラとでは比べ物になりません。
イシュトはアレでこそイシュト! と思いますが、さすがにカメロンさんまでそれにのせられてしまったのには呆れてしまいました。
それではやはり、カメロンさんも病気だったんだなぁと、ちと暗澹たる未来が仄見えたような気がします。
結局一緒に行きこそしませんでしたが、もしかすると今回の分かれ道こそが 『ヤーンの選択』 となり、カメロンさんは二度とイシュトと会えなくなるのかもしれないなぁと。
カメロンさんの病気をまざまざとみさせられてしまっては、そんな気がしてしまいます。
カメロンさんでは、イシュトの抑えには絶対になれないんですよね。
最悪、イシュト軍に討伐されるような憂き目になってしまうのかもなぁ〜と思ってしまいましたよ。
そして、カメロンさんのあわやというときにやってきた急報がまた、ちょっと衝撃の報せでしたね〜。
くるぞくるぞと言われていましたが、ついに 『七人の魔道師』 事件の勃発ですよ!
いや〜なんか感無量。
ようやっと予言の未来が来ちゃったのだな〜。
そしてついに本編でヴァルーサたんを見られるんだなぁ〜と(笑)。
それに関連した動きとして、アンテーヌ侯アウルス・フェロンが全権特使としてゴーラに来るという動きはなかなか面白いじゃないですか。
それ見たことか。
カメロンがゴーラを開けるなんてもっての他だって話ですよ。
カメロンは 「もてなしたり」 なんて表現でイシュトに言ってますが、アンテーヌ侯アウルス・フェロンほどの巨魁を 「もてなす」 ってのはどれほど大変なことか。
イシュトには想像もつかないんでしょうね。
外交に長けたカメロンですから、おそらくアウルス・フェロンがどれほどケイロニアの重鎮であり、傑物、クセモノであるかは知っているでしょう。
ハゾスよりもよっぽど厄介な難物……というより、グインを抜いたらおそらくケイロニアで最も厄介な特使ですよ。
忘れもしない、グインがケイロニアに仕官したばかりの宴で、テラスで一人になったグインに近寄り、「今、わしは陛下に申し上げてきたところだ。おぬしを、処刑するようにな」 というようなことを平気で言ってのけた怪物爺さんですよ。
カメロンの交渉の出方次第によっては、独断で条約に一条追加したり、条項を勝手に削除したりなんてことも平気でやってのけるのが、全権特使たるアウルス・フェロンなのではないでしょうか。
なかなかにこれはスリリングで外交官としては腕のなる場面ですよ。
こういう展開が、「七人の魔道師事件」 をきっかけとしてごく自然に発生しているというのが、うまいなぁ〜と感心させられてしまうんですね。
まさにヤーンのお導きか。
そしてそのお導きが、またしてもイシュトとカメロンの運命を分かとうとしていると。
いったいこの二人、どうなっちゃうんでしょうね。
いや〜今回の巻は前回とうってかわって物凄く 「動いた」 って感触があって面白かった。
実際には物事はあまり動いてないはずなんですが、未来の激動の予兆みたいなものをビシビシと感じさせられましたね。
うむ、次が気になりまくりです。
ガン太郎って(笑)
ところで途中、スカールさんが 「ずっと病にふせっていると、だんだん気持ちがいじけてくるものでな」 みたいなことをどこかで言ってましたが、あれは栗本先生ご自身の気持ちなんでしょうね。
今回の草原編は、昔先生が旅行されたモンゴルの影響が大きく出ているんだろうなと思うんですが、カメロンさんの現状というか心境も、大きく先生ご自身の実感がにじみ出ているような、そんな印象を受けました。
スカールさんがへこたれず元気であるように、先生もガン太郎(爆)に負けず、グインを書き続けて欲しいものです。
新装版刊行開始!
読み終わってブックカバーを外し、帯を見てびっくり。
アニメ放送開始にタイミングをあわせて、なんとグインが新装版で刊行されるんですって!
2巻分を1冊にまとめて新書サイズ、アニメカバーということですが、これで新規読者をどれだけ開発できるかってことなんでしょうね。
中身の挿絵も全部アニメ絵に差し替えってことだったら、これはちょっと買ってみてもいいかも。
ついでに数箇所ある矛盾点も訂正してあれば完璧ですね(パロがパロスでモンゴールが南の国とかw)。
ぬ、もしや 「新装版で100巻完結!」 なんてまた言い出さないだろうな(爆)
いや、本当に言い出しそうだから怖い(爆)。
そしていよいよ2ヶ月後に迫ってきたアニメ放送開始!
次グインを読む頃には放送されてるのか〜。
いや〜楽しみだ!
▼関連記事
・アニメ 『グイン・サーガ』のスタッフ発表
********************************************************
よろしければランキングにご協力をお願いします。
にほんブログ村
********************************************************
よろしければランキングにご協力をお願いします。
にほんブログ村
********************************************************
カメロンさんはあれですよ、
会社に向かう電車の中で「ああ、このままいつもの駅で降りずに終点まで行って
家にも帰らずどこかに行ってしまいたい」とふっと思う瞬間みたいな(笑)
でも行かない。カメロンも行かなかった。行かないことは決まってる。でもムズッとは来ちゃった。そんな感じ。
しかし今回は人物がみなすっきりした人ばかりで読んでて心地よかったです。
あ、なるほど、そういう表現だと納得できるかも(笑)。
言ってみれば、若手の野心家実業家に惚れ込んでヘッドハンティングに応じたものの、元の技術職ではなくデスクワークばっかりやらされて、ちょっと鬱っぽくなってたところに今度の誘惑だったと。
そりゃムズッと来るかもしれませんね〜(笑)。
カメロンさんにも気分転換というか、休養が必要なんでしょう。