2009年01月25日

読書感想 エンダーのゲーム

 SF 小説界の2大賞、ヒューゴー賞とネビュラ賞をダブル受賞している傑作 『エンダーのゲーム』 を読みました。
 10うん年も前に、友人 Wao からオススメだって言われて買ってあったんですが、すっかり本棚の奥に行ってしまっていまして、それをこの前の年末大掃除でようやっと掘り出せたんですね(笑)。




 宇宙人バガーとの戦いに、からくも逆転勝利を手にし、バガーたちを撤退させることに成功した人類。
 しかし数十年後にはまた、バガーとの戦いが迫っていることは明らかだった。
 そこで人類は大規模な宇宙艦隊を準備し、それを指揮できる天才司令官を育て上げる必要があった。
 その司令官として、白羽の矢が立ったのが、なんと6歳の少年エンダー。
 親元から引き離されたエンダーは、軍事学校バトル・スクールで“ゲーム”と呼ばれる、無重力空間における戦闘シミュレーションのリーグ戦に放り込まれる。
 大人たちがしかけた無理難題、恐るべき試練を次々と克服しながら、エンダーは才覚の輝きをどんどんと増してゆく。
 バトル・スクールで出会った、たくさんの大切な友人達。そして卒業してから現われる、意外な師。
 様々な人との出会いを経て、エンダーは驚くべきスピードで成長してゆく。
 しかし、バガーとの決戦が迫るある日、エンダーは疲労の極地にあった。
 彼は、ある悪夢にうなされていたのだ……。



 20 年以上前に書かれたSF小説ですが、ぜんぜん古びていないというのが素晴らしい。
 技術的な表現で、違和感を感じるところはまったくありません。
 むしろ新鮮な気持ちで読めるというのは凄いと思います。

 まずこの小説で非常に興味深いのが、大人たちがエンダーに次々と罠を仕掛けてくるというパートですね。
 彼ら大人たちは、エンダーを最高の司令官として完成させるため、実に恐ろしい試練をエンダーに与え続けます。
 それも、エンダーにはそれとは分からないように。
 まるでごく自然に発生した事故であるかのように、エンダーには災厄、災難が降りかかってきます。
 時には学校内のイジメであったり、時には孤独であったり、時には“ゲーム”の試合組み合わせや、チーム編成の急な変更であったり。
 エンダーの才能に嫉妬したものが、エンダーに襲い掛かるよう人心操作することすら厭いません。
 この大人たちの仕打ちのあまりにも残酷なやり口には、なかなかにゾクゾクさせられるものがあります。
 なにゆえそこまでしてエンダーをコテンパンに、それこそ擂粉木ですり潰してしまうように試練を与え続けるのか。
 エンダーを完璧な司令官にするためとはいえ、それでは下手をするとエンダーが死んでしまうではないか!と、義憤にかられてしまうようなヒドさなのです。
 この仕打ちが人為的なものであるとは、エンダーは最初まったく気づいていませんが、徐々に、本当の敵はバガーではなく、バトル・スクールそのものなのじゃないかと気づき始めます。
 しかし、気づいたからと言ってなにが出来るわけでもない。
 ただただ次から次へとやってくる試練を乗り越えてゆくしかない。
 エンダーには、自分を司令官にするために大人たちがやっていることなのだということすらお見通しであり、自分はそれを従容と、あるいは超然とやりとげてやろうと、そういう鼻っ柱の強いところがエンダーにはあるんですね。
 このストレスのたまる大人とエンダーの熾烈な戦いが、非常に緊張感たっぷりで目が離せません。


 そんな試練の毎日のエンダーですが、やっぱり普通の子じゃありません。
 さすが神童、超天才児です。
 次々と新しい発想でゲームを勝利に導く柔軟な思考力、明晰な頭脳を持ち、どんな逆境でもそれを打開してしまうだけの強靭なバネを備えています。
 そして非常に計算高く、必要とあらば年上の子を挑発して戦いを挑むことも迷いません。
 また、卑劣なイジメや暴力に対処するときには、容赦なく相手を叩きのめします。
 加減をしてしまっては、禍根を残すことになることが分かっているからです。
 やるときは、徹底的に。
 時にその姿は冷酷無情にも映ります。
 このへんちょっとイヤな子ではありますね(笑)。
 なんつーか、そんじょそこらの子ではないので、共感できるかというと、ちょっと違うかもしれません。
 しかし、そんな暴力の後で、エンダーは苦悩し続けるのです。
 自分は、なぜこんなにも憎いピーターのようにしてしまうのかと。


 このドラマでミソとなっているのが、エンダーの兄弟という要素。
 エンダーを苛め続けた兄ピーターと、エンダーのことを愛し続けた姉ヴァレンタインです。
 両者ともに天才児で、バトル・スクールは彼らも一度司令官候補として調査しています。
 しかし、ピーターは残酷性ゆえに、ヴァレンタインは優しすぎるがゆえに、候補から脱落しています。
 この二人の存在が、エンダーの中でトラウマとなり、支えとなって後々大きな影響を与えてゆくことになります。
 エンダーが成長し、大活躍を始める頃、地球ではこの二人にも重要な役割が待っています。
 この活躍の仕方というのも実にエキサイティング。
 なんとネット界を使っての言論操作!
 これはそれこそ今現在の世の中でこそ発想されそうなアイデアではありませんか。
 これを 20 年以上前にやってしまったオースン・スコット・カードはとんでもないですね。


 タイトルにもなっている、ゲームがまた非常に興味深く、実にエキサイティング。
 球状の無重力空間内部で、40 名のチーム同士が宇宙服を着、凍結銃だけを持って戦闘します。
 アメフトのようにフォーメイションがあり、飛びぬけた個人のファインプレーがあり、時に突発的な事故が発生してそれをさらに突飛な発想で克服したり。
 このへんはまさに少年スポーツ漫画を読んでいるようなワクワク感でいっぱい。
 次々と現われる強豪チーム相手に、エンダーがどんな活躍を見せるのか。
 エンダーが独自のチームを与えられてからは、どんなチームに鍛え上げ、どんな作戦で敵をやっつけるのか。
 敵はどんどん強大化し、しまいにはルールそのものが破壊的な無理難題になっていきます。
 このへんはそれこそインフレゲームと呼ばれる少年ジャンプの漫画のよう。
 とってもなじみのある楽しいものです。
 かといって内容がチープだったりするわけではなく(漫画がチープだとは思いませんが、そういう偏見を持つ人も多いでしょう)、そこには少年たちの心の葛藤やいがみ合い、心温まる友情がリアリティ溢れる筆致で描かれています。
 読み応えバツグンのエンターテインメントです。


 そして、そのバトル・スクールを卒業して、エンダーが向かわされるのはコマンド・スクール。
 本来はバトル・スクールに6年、プレ・コマンド・スクールに3年は行ってからでなければ進まないはずのコマンド・スクールに、エンダーはなんと4年で進んでしまいます。
 これはエンダーの天才ゆえというのも当然ありますが、大人たちの焦りゆえというほうが大きいのです。
 “決戦”はもう、目の前。
 一刻の猶予もないのです。
 コマンド・スクールでは、今度は編隊や艦隊に指示を与える3Dシミュレーションがエンダーを待ち受けます。
 ここで師となる人物がまた意外。
 そして苛烈にして容赦せず!
 敵バガー艦隊役を担うこの師が、次々と壮絶なシチュエーションを想定したシミュレーション戦闘をしかけてきます。
 心が休まる暇もなく、突然やってくる夜間戦闘や、数時間にも及ぶ長期戦。
 次第に疲弊してゆくエンダー。
 さらに、エンダーはこのときある悪夢に悩まされるようになり、眠ることすらろくにできなくなってゆきます。
 はたして、このボロボロ状態のエンダーは、この試練を乗り越えられるのか。
 最後の、エンダーの運命を決定する重要なシミュレーション戦が始まります。
 非常に恐るべきトリックをはらんだシミュレーション戦が……。


 このトリックにはすっかりしてやられました。
 考えてみれば、ここまでの物語はそのトリックに進むためにこそ、綿密に計算されて織り成されてきていたんですね。
 ただのSFではない、傑作と呼ばれるゆえんがここにあるのかと納得の思いです。


 ところで、先日書店で新装丁版のエンダーのゲームを見たんですが、表紙イラストが昔と変わっているんですね。
 あれはあれで素晴らしいイラストだと思うのですが、私としては旧版の、エンダー独自の射撃フォームのほうがよかったかな〜と思いました。
 無重力空間の射撃戦で一番有効なのは、相手を下に見て、足を体の下に折り曲げ、その股の間から撃ち下ろすように銃を撃つフォームである、というのがエンダーの持論であり、その有効性はあっというまに証明されてチームに導入されてゆくのです。
 このポーズこそ、エンダーのゲームの象徴なんですよね〜。


 で、今ちょっと調べてはじめて知ったのですが、映画化の話が進んでいるようですね!
 これは楽しみ!!



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