牢の中で沢庵和尚と語り合い、何を得るのか。
片や小次郎は本阿見光悦の邸宅である出会いを果たしていた。
過去感想 → 26 , 27 , 28
【ネタバレ注意!】
足が動かないという衝撃の事実をつきつけられたことで、武蔵、おつう、それぞれが 「この先」 を考えて揺れ動くのが今回。
沢庵和尚は武蔵におつうと一緒になれと言い、たろちんはおつうにどうせお師匠と一緒になれるって思って嬉しいんだろうとスネて見せる。
まわりは一緒になることが幸せだと考えているのだけど、本人たちはそう簡単にはいかない。
おつうの苦悩がまたいじらしくて切ない。
「好きな人の好きなものを
剣を 嫌いになったりしないっ」
「嫌いじゃない
ただ… 分からないだけ」
武蔵と幸せに暮らしたいけれど、それ以上にまったく理解できない剣に血道をあける武蔵を止めることだけは、おつうにはできない。
武蔵が走り続ける気持ちでいるなら、一緒になるなんて口が裂けてもいえないのがおつうなんですね。
いじらしいじゃないですか。
一方、今まで斬ってきた者達の重みが辛くなってきている武蔵に、沢庵和尚は天の声を聞いたと、話して聞かせる。
土砂降りの海岸線に一人立つ沢庵和尚。
その目の前に雷が落ち、瞬間和尚になんらかの天恵が訪れる。
「それによると―――
わしの お前の生きる道は
これまでも これから先も
天によって完璧に決まっていて
それが故に完全に自由だ」
実に矛盾しているようでいて、とても不思議な響きを持った言葉です。
難しいなぁ。
重い人生経験がないと実感できそうにない深い言葉のようです。
私なんかにゃまだまだって感じですが、頑張って解釈してみるなら、人間苦しいときでも一人で苦しがってないでいいんだよと、そこは天の懐の中なんだから、天だけは見ていてくれるんだよと、そういうことでしょうか。
自由というのを、選択肢を選べる自由と現代的に解釈するのではなく、心の豊かさ、苦悩や迷いからの解放と解釈すれば、ちょっと分かりやすくなる気がします。
いや〜難しい。
しかし武蔵は、その沢庵の話をわかったんだかわかってないんだか、実に武蔵らしい受け止め方をした様子。
「自分でも驚くほどの太刀筋が―――強くて速い剣使いができるときがある
そんなときは……俺の体の……真ん中の奥が光ってる
そんなときなぜか……笑いがこみあげてきて……祈りたくなる(中略)
天としっかりつながるほど剣は…そうか 自由で 無限だ」
吉岡清十郎と戦ったときの、集中しすぎてよだれが落ち、手が消えたあの瞬間がそうなのでしょう。
また、七十人斬りのなかでは、「ぬたあん」 の時間帯がその状態なんでしょう。
無我の境地と言うんでしょうか。
剣と体が一体となる貴重な体験が、武蔵にとっては天とひとつになる奇跡の体験と思えたんですね。
これは案外、沢庵の言いたい事と見当はずれだ、とは言えないのかもしれませんね。
何かと一体となれたと感じられる貴重な体験は、もしかしたら人の救いとなりうるんじゃないでしょうか。
武蔵にとっては、剣の道を歩んできた今、見出せたたったひとつの真実に他ならないはずですものね。
人と心について考えて、「天」 を見出した沢庵と、武蔵はまったく違った道を歩みながら同じ地点に到達しつつあると言うことなのかもしれません。
さてその頃、小次郎は。
武蔵の難解な問答で一巻を費やしてしまっては退屈だろうという井上先生の配慮でしょうか(笑)、こちらは思わぬ出会いから決闘話に。
なんとちいさな木切れで相手を死に至らしめるという超離れ業!!
これはすげーッ。
すでに小次郎、凄まじい域に達してしまったようです。
武蔵サイドが悩んで悩んで悩みぬいている中、この小次郎だけはそういうのとは無関係なんですよね〜。
まさに、剣の精。
あとは性もあったか(笑)。
悩まず女を抱く小次郎と、悩みぬき、女を遠ざける武蔵。
そんなところでも意外と対立してたんだなぁとちょっと考えてしまいました。
いや、だから何だと言われると困りますが、もしかしてそういうところにも井上先生は何かを隠しているのかもしれないなぁと。
そして又八は……あれま。
親孝行したいときに親はなし……という悲しい言葉が胸に迫ってきちゃいます。
又八、ようやっと心を入れ替えたというのに、悲しい奴だなぁ〜。
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