誰だこの表紙は。アムネリス? とか思ったのですが、読み終わって見ればシルヴィアとしか思えない。
おお、シルヴィアずいぶん美化してもらってよかったね〜って思っちゃいましたが(笑)。
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ネタバレ注意!
ハゾスについて
シルヴィアやクララに対して情状酌量を頭の隅にすらうかべないハゾスは、なかなかに偏った男なのだなぁと苦々しく思ってしまう前半。
相性は悪いだろうなとは思ってましたが、ここまでとは意外でした。
極めて有能な男だし友情にも篤く信義にも篤く、また愛すべきキャラクターだと思うのですが、それでもやっぱり欠落している部分はあるんだよなぁ〜と、改めて思い知らされた気分です。
ちょっと歯がゆいというか、ハゾスを憎ったらしくすら思えてしまいます。
クララのほうは、くだくだした言い訳を聞けば聞くほどイライラして 「もういいッ!」 って言いたくもなりますが(笑)。
シルヴィアの罪が許されざるものである事は確かとしても、その心の病を察して若干の哀れみをあたえてやってもいいのではないかと、大人のハゾスにはそうしてやれる度量があってもいいんじゃないかと思うんですがね。
赤ん坊を、心を鬼にして処理してしまおうとするハゾス。
しかし手が止まる。
この場面、なかなかにヴィジュアル的で場面が目に浮かぶようで印象的でした。
赤ん坊の首に手をかけようとするハゾス。指が猛禽の爪のように広げられたまま、ぶるぶると震えて止まる。
その手が、何かを恐れたかのようにバッと乱暴にひっこめられる。
そんな場面が目に浮かびました。
そうだよハゾス、それが人っていうもんだ。
この赤ん坊関連のハゾスはやることがでたらめで失敗ばっかりでいいところなしでしたが、いやいやハゾス、それが人ってものですよ。
ハゾスっていう人間にちょっと疑念が生まれていただけに、ここは安心しました。
で、その赤ん坊の目がなんとヘテロクロミア!
ロイエンタールか!
右がかなり薄い青で、左が異様なくらいの黒。
これはなんだか凄いロマンティック。
未来のドラマをズンズン予感させてくれますね〜。
ゆるがぬ証拠を体に刻んで生れ落ちただけに、これは 20 年後にケイロニア中枢部に復活するとしか思えません!
ロベルトについて
赤ん坊については安心したハゾスでしたが、シルヴィアにたいしては憐憫の情なんてカケラも頭にうかべないハゾス。
なので、黒衣のロベルトがそれを代弁してくれたのがよかった。
ここでかなり胸のつかえがおりた気分でしたね〜。
カラー口絵を見た瞬間、こちらも 「ナリス!?」 って思っちゃいましたが、いや〜、ロベルトってあんな若々しい美形だったとは。
もうちょっと歳のいった線の細い優しげなオジサマを想像していたんですよ。
まぁ公式外伝同人(なんじゃそりゃw)としてロベルトを使った BL 系があるってのは知ってましたが、それは過去のロベルトとアキレウス若かりし頃の話じゃろ? くらいに想像してたものですから(笑)。
しかし外見以上にロベルトの、高僧のような明哲さにはなかなか驚きました。
アキレウス大帝が相当に買っているというのは繰り返し語られてきましたが、なるほどこれほどの人物だったとは。
ただ知識が豊富とか頭が切れるっていうのじゃなく、徳が高いといったらいいんですかね。
「判断力が凄すぎるぜ〜」 って感じです。
特にグインへの対応を、もしかしたらハゾスは誤ったのでは? というロベルトの指摘はドキリとさせられるものがあります。
ハゾスはグインになにもかも包み隠さず伝えて、グインとシルヴィアを対面させるべきだったと言いましたね。
時すでに遅し、ハゾスはグインに真相を偽り、想像妊娠などというウソを言ったばかりでした。
これは痛い。
よかれと思ってやったことだけに、余計苦しい。
このウソによって、もしかしたらグインとシルヴィアの関係が修復される最後の機会を断ったことになるのかもしれませんものね。
もしかするとそれが、ケイロニアに暗雲を生むことになるのかもしれない。
ハゾスは友を守ろうと良かれと思ったことが、逆に未来に闇を呼び寄せてしまったのかもしれませんよね。
そう考えると皮肉だなぁと、恐ろしい事だなぁと、ちょっとゾゾッとさせられるじゃないですか。
今からではそのウソを取り返すことも出来ない。
ハゾスは墓まで腹に抱えていかなければいけない、とんでもないウソをついてしまいましたね〜。
これは、もしかするとハゾスとグインとの間に微妙な齟齬をきたす事態かもしれません。
ロベルトの言うことが、なんだか圧倒的に正しいような気がしてきます。
怖い怖い。
赤ん坊について
で、ロベルトがローデス領に赤ん坊を連れ帰ることとなり、命名。
その名も、
シリウス!
天狼星キターーッ!
栗本先生、この名前ほんとに好きなんでしょうね〜。
しかもあのシリウスを思い出させるだけに、凄くこのシリウスがロマンティックに思えてくるじゃないですか。
もしかして将来は大怪盗!?(笑)
またロベルトがシリウスと命名した理由もおもわせぶり。
「―やがてシレノスとバルバスという二人の冒険児に出会い―」
って、これじゃシリウスとグインをいつか出会わせてあげたいっていう、ひそかな願いが込められているとしか思えません。
ロベルト、なかかないい名前をつけてくれました。
しかし第二世代もキャラがなかなかキャラが立ってますね〜。
イシュトの呪われた子ドリアンに、生まれながらに英雄の気質を持つスーティ。
耳の聞こえない美姫マリニア。
そしてヘテロクロミアのシリウスと、将来生まれるグインの子供。
これは面白そうだ。
彼らの活躍する時代が見たくてしょうがない!
まぁそれにはあと 300 巻あっても足りるかどうかですがね(笑)。
パリスについて
ハゾス、パリスに全ての罪をかぶせようと画策す。
その意図を汲み取り、パリスはハゾスの意図以上に全てをしょいこむと宣言。
「そうではない。シルヴィアさまは俺のようないやしい男と恋になど落ちられぬ。俺が――俺が、恐れ多くも……シルヴィアさまに横恋慕して……勝手に恋をして、それでシルヴィアさまを――恐れ多いことながら、手ごめにしてしまったのだ」
男だパリス!!
感動したッ!!
今までただの愚鈍な牛のような男としか見えてなかったけど見直した!!
口では 「ただ、ふびんだったのだ」 とか言ってますが、パリスのその想いは真実の愛だ!!
この選択肢自体も愚かしいことかもしれませんが、しかしそれだからこそでしょうか。
自ら燃え尽きんとする献身無償の愛には感動せずにはいられません。
カッコいいぜパリス!
悪いけどハゾスよりもよっぽどカッコいいぜ!!
この 122 巻のいい男ランキング No.1 は文句なしにパリス!
ちなみに No.2 がロベルトで、 No.3 は拷問人だったりしますが!(笑)
あの冷徹な拷問人には仕事人としてのプライドを感じますぜ。
ああいう人が家に帰ると実はけっこういいお父さんだったりするのよ、きっと。
で、鉄球の回転の秘密を息子に伝授したりするんだ(ナンダソリャ)。
グインとシルヴィアについて
そして、ついに――グイン、シルヴィアと面会。
シルヴィアの態度が狂乱的なものではなく、かえって胸をつかれるような思いに。
あの夢の回廊で、グインに切られたためにシルヴィアは魂を失ってしまったのだと告白。
これはグインの記憶喪失がなんとも痛い。
魂を失ったというのはシルヴィアの思い込みでしょう。
スナフキンの剣にそのような機能はありません。
魔なるものしか切れない剣で、人の心を切ることはできますまい。
だからこそ、グインはシルヴィアがもしホンモノであっても、スナフキンの剣であれば切れないからこそ振り下ろしたのではないかと思えますし。
いや、そのへんはかなり微妙で、あとでその辺をちょっと読み返してみようとは思ってますが。
私にはそう思えてましたね〜。
しかし、グインはそのときの判断を覚えていない。ならば、言い訳することも出来ない。
シルヴィアの心には、グインが自分の姿をしたものでも平気で斬ることができるという冷たい事実しか残らなかった。
なんとも辛い運命です。
これもまた、やはりグインの記憶喪失が絡んだ皮肉な運命と考えてもいいのではないでしょうか。
辛いなぁ〜。
シルヴィアの口から流れ出すのは、昔からずっと語られてきた女官たちによるいじめ問題。
彼女たちへの復讐のため、自滅的なむちゃくちゃな乱行にいたったのだとシルヴィアは告白。
実におぞましく、ゆがみきった心が噴出した醜い場面とも見られはしますが、逆にわたしはこのあたり、シルヴィアがかわいいと思えて仕方がなかったですよ。
いじらしいって思えてしまうんですね。
私がおかしいんでしょうか。
シルヴィアの女官たちに復讐してやるって言う思考ルート自体は、私もダメです。
それはいかんです。
なんとも悲痛だしシルヴィアの気持ちもよくわかるから、やるせないことこの上ないけど。
シルヴィアの復讐に至る歪んだ思考回路は、最近の陰惨な事件も連想させられてたまらない気分にさせられてしまいます(このあたり、栗本先生はかなり意識されているでしょうね。先生なりの意見が込められているのカモ)。
そうじゃなくって、この告白のプロセスが、グインへのいじらしい女性らしい駆け引きのようでかわいくてしょうがないんです。
シルヴィアは、悪いのはグインだと最初に言っておきながら、最終的に悪いのは女官たちなのよと、グインに一生懸命ヘルプ! ヘルプ! って言っているようにしか私には見えなかったんですよ。
一番悪いのはグインじゃないのよ? 悪いのは女官たちだったのよ? って言って、さっき糾弾したばかりのグインをちょっとだけフォローして、責任を女官にぜんぶ転嫁してグインにそれだからこそ助けて欲しいんだよって言っているようにしか見えません。
これは、「シルヴィア擁護党鷹派」 たる私だからこそでしょうか(笑)。
悪いのは女官たちだ、悪いのは私をほうっておく皇帝家だ、つめたくあしらう家臣団たちだって言うってことは、「悪かったシルヴィア! お前をほうっておいた俺の罪だ。これからは心を入れ替えてお前を守りたい!」 って言って欲しいからじゃないですか。
ツンデレシルヴィアここにあり!
ヤンデレシルヴィアここにあり!!
かわいいったらねーじゃねーか!!
シルヴィアは、やっぱり俺たちが愛したシルヴィアだったよ!!
それをなんだグイン!
なんであっさり別れちゃうんだ!
あんた分かってないよ! なにも分かってないよ!!
どんなときも判断をあやまらず、世界において唯一無二の 「正しい男」 が、ことシルヴィアについてはなにゆえここまでに…!!
シルヴィアを愛するがゆえに、自分がいてはシルヴィアを守ることが出来ないから身をひくって、なんだそのあまっちょろさは!!
バカヤローッって誰かグインを殴ってくれ!
そうか、それではやはり、グインも過ちからは逃れられない人の子であったのだなぁと…。
そしてラスト、
それが、ケイロニア王グインが、その王妃とこの世であいまみえた最後であった。
……なんという冷たいヒキ。
ダーンと死刑宣告が下されたようです。
これは落ち込む。
もう、ダメなのか。
…そうか、ダメだったのかと。
思えば、数奇なふたりの運命だったのだなぁ。
あのケイロニアワルツがよぎって、たまらなく胸が締め付けられます。
なんて、遠いところまで来てしまったのだろうと、マリウスじゃないけど思わざるをえませんよ。
ああ、悲しいなぁ〜。
二人とも相手を愛しているのに、なんでこうなっちゃうんだよと。
やるせない気持ちになってたまりません。
まとめて
暗澹たる思いにさせられる 122 巻でしたが、いやぁしかし面白い。
つくづくグイン・サーガはすげーなぁ〜って思っちゃいます。
ものすごく濃く、心を打つ一冊でした。
次の 123 巻は 「風雲への序章」 か。
新章開始でしょうか。
いったいどこで風雲が巻き起こるのか、これもまた楽しみです。
しかし、とりあえず今は、グインとシルヴィアの結末にぐったりしていたい。
ああ、なんとも……。
テレビアニメ化について
そしてそして、あとがきでついにグインのアニメ化が発表!
アニメ化されるらしいよって話はかなり前に言ってましたが、来春からテレビアニメ化って言われるとかなりリアルになってきたなぁ〜と、かなり感動ひしひしと。
私なんかは昔から 「もしグインがアニメになったら」 って、いろいろと妄想してきましたから(笑)。
とりあえず3話かけてじっくりスタフォロス城を描ききり、1クール 13 話で辺境編を完結。
好評なら1クール5冊ペースで進めて 40 話あたりで 『パロへの帰還』 へと至るって感じで。
いや〜、そんな贅沢がいまどき出来るとは思えませんが(笑)。
しかしテレビアニメっていうのは驚きました。
まぁきっと劇場版2時間で辺境編まとめちゃうんだろうなって思ってましたよ。
で、都内でも数館しか上映せず、あとは DVD でって商売かと思ってましたが、まさかのテレビアニメとは。
これはスタッフよくやった。
そうですよ、グインは短い劇場版なんかじゃ面白さは伝わりませんもの。
長編テレビアニメでしか良さは出ませんって。
できたら 『銀河英雄伝説』 のような壮大長大な大河アニメになってほしいものです。
最低限辺境編。できたら 「ケイロニア編」 までいってほしいけどさすがにそこは無理だろうからせめて 『パロへの帰還』 まで。
頑張って欲しいものです。
それに一度映像化されれば、一回放送が完了しても、あとあとでセルオンリーやネット配信などで続編が作られる可能性もできますしね。
それこそ、いままで映像化がまったくなかったものが映像化される可能性より、一度つくられたものの続編が作られる可能性のほうが圧倒的に高いはずです。
それには好評を得なければいけないってのはありますよね、もちろんのことですが。
まぁ、始まる前から続編がどうの言うのもおかしな話ではありますが(笑)。
いや〜楽しみ!
たとえ糞アニメになっちゃっても私は見ますよもちろんですとも!
とりあえず、グインアニメ化ばんざーい!!
で、下はオフィシャルページとスタッフブログ。
ブログを見ると第4稿と見える脚本がちょこっと見えて、登場人物のなかに辺境編のメンバーに加えて 「アルド…」 の文字が!
これは 「陰謀編」 までいくのは確定か!?
アニメ公式ページ
スタッフブログ / アルド…
で、ふと思ったんだけど、アニメ劇中でサントラの曲が使われたらきっとゾクゾクするだろうなぁって!
音源は今の時代にはあわないだろうから再編集再録音だろうけど、エンディングテーマに『《GUIN》 WITH PANTHER HEAD(グイン・サーガ・グラフィティ収録)』とか流れるとたまらんぞきっと!
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残念ながらアメブロからseesaaさんへのTBが不調でお返しできずに申し訳ないです(涙)。
しかし、シルヴィア擁護党鷹派としての意見、見事です!
ほんと、グイン、なんでわかってやれないんだよと残念というか失望のラスト。
シルヴィアが最後に投げかけた言葉をどうして最後まで聞いてやらないんだと憤慨、そして涙です。。。
アメブロさんとは相性が悪いようで、今回のトラバもダメモトだったりしました。
>しかし、シルヴィア擁護党鷹派としての意見、見事です!
あ、お褒めに預かり光栄です!
まったく、口惜しいったらありゃしないラストですよね〜。
ザブングルなみにくやしいです!!
私もシルヴィア擁護党員なんです実は(笑)
今回の顛末にはもう…私の心が全開で悲鳴を上げてしまいまして、
今の気持ちを誰かと共有したい!しないと死ぬ〜!
という状態でwネットの海を泳ぎ回ってここにたどり着いてしまいました。
う〜ん…なんというか…擁護党員の私でも
「いや、シルヴィアの運命って結局自業自得じゃね?」
ってのは頭ではわかるんですよ、現実にシルヴィアみたいな人が身近にいたらたまったもんじゃないとも思うし(苦笑)でも!
「グインなら!グインならそれでもなんとかしてくれる!」
って信じたかったんですよう〜(号泣)
本当にショッキングな一冊でしたね〜。
グインもシルヴィアも、哀れでなりません。
本当にもうどうにもならないんですかね。
『それが、ケイロニア王グインが、その王妃とこの世であいまみえた最後であった。』
なんて、あえて「ケイロニア王」とか「王妃」とか書いているわけですから、どちらかがその肩書きを失ったら会うこともあるんじゃないかな……なんてかすかな希望を抱いてみたり……。
ないかなぁ〜。
あの世ぐらい地続きでもいいじゃん、あの世界なら、とかそういう感じで。
もう一度夢の回廊で出会っちゃうってのも素敵カモ!