アカデミー賞で12部門にノミネートしたという名作中の名作。今更ですが初めて観ました。
たくさんのユダヤ人を逃がした実在のナチス党員シンドラーを描いた感動作。
シンドラーという男が根っからの善人ではなかったというところが非常に魅力的でした。
ナチス党員でもある企業家オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)は、戦争で大儲けするため、ユダヤ人を利用することを思いつく。まずは現金は持っていても使うことが出来ないユダヤ人から投資を集め、台所用品製造工場を買収。次いで人件費の安いユダヤ人を従業員として集め、工場で製造した台所用品を賃金のかわりに渡した。ユダヤ人にはそれを闇市で物々交換することで生計をたてるようにさせたのだ。
しかしホロコーストの大波が押し寄せ、工場も危機に陥る。少しずつユダヤ人へ心を開き始めるシンドラー。彼はいかにして大勢のユダヤ人救出へと至るのか。
オスカー・シンドラーを演じるリーアム・ニーソンがとにかくかっこいい。
『スターウォーズ・エピソード1』のクワイ=ガン・ジン役もやたらとかっこよかったですが、シンドラーは白眉ですね。
スマートにきまったスーツ姿の長身も見栄えがするし、上品な笑顔のどこかしらにワルっぽさを覗かせるのも大人の男の色気です。
品格と人間的なワイルドさの絶妙なブレンドという印象です。
このオスカー・シンドラーが、最初は 「金の亡者」 といったら言いすぎですが、「徹底した企業人」 として生きているのが面白い。
ユダヤ人を積極的に利用しようとするのは、迫害を受ける彼らへの慈悲からすることではなく、彼らが使い道のない現金を持っているからであり、ポーランド人を雇うより、ユダヤ人を雇ったほうが上に払う金が安く済むから。
全てが損得の計算に基づいている野心家なんですね。
しかも部類の女好き。
奥さんとは上手くいかずに別居状態で、どんなポストより熱心に面接するのは女性秘書採用(笑)。
すばらしく人間的じゃありませんか。
最初から絵空事じみた善人を見せられるつもりで観ていたら、かなり肩透かしをくらった感触です。
じゃあこんなヤツがいったいどんな経緯で、ナチスを裏切り、ユダヤ人を大量に逃がすなんてすごいことをやってのけるに至るのか。
そこに俄然興味を惹かれてしまいました。
そこが本編中盤の見所。
この作品、基本的に白黒なのですが、数箇所だけカラーが使われています。
これがドキリと胸につきささる使い方で、鮮烈に目に焼きつきます。
この手法、実はスピルバーグ発案ではなく、なんと黒澤明の 『天国と地獄』 のモチーフなのだそうで。
いやぁ“世界の黒澤”はやっぱり凄いなぁ。
全編非常に陰惨な虐殺、迫害が描かれる作品ですが、中でもアウシュビッツの“シャワー室”は最高の恐ろしさ。
“うわさ”で聞いたとおりに頭を刈られ、服を脱がされ、“シャワー室”に詰め込まれる女たち…。
こんなに恐ろしいシーンはそうそうありません。
また、子供たちが連れ込まれる建物の上に煙突があり、それがもうもうと煙を吐き続けているのがあまりにあまりで、こみ上げるものが止まりませんでした。
スピルバーグ監督自身がユダヤ系でもあり、ユダヤ人虐殺の悲惨さを描くことに社会的メッセージをこめられた作品なのかもしれませんが、そういった難しいことは抜きにして観ても、普遍的な恐ろしさと感動があります。
戦争の理不尽さがもたらす狂気、迫害を受けることの悲惨さ、そしてなにより、そんな中で生き方を変えて、すばらしい奇跡を起こした男を描いた作品として深い感動を覚えました。
凄惨なユダヤ人虐殺を描いた映画としては、他にも 『戦場のピアニスト』 や 『ライフ・イズ・ビューティフル』 などを観ましたが、それらの印象が頭の中でごっちゃになってきて、迫力を増すような、世界観が充実するような、そんな奇妙な感覚がありました。
どれも同じ時代の同じテーマを描いているようでいて、微妙に視点が異なり、まったく違った鑑賞後感覚にひたれる名作ばかり。
3作品とも、力いっぱいオススメです。
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