2008年06月27日

コミック感想 ヴィンランド・サガ 6

 トルケル軍に追い詰められたアシェラッド軍。
 そのとき奇跡が訪れる!
 『プラネテス』幸村誠が描くヴァイキング叙事詩コミック。
 絶好調の最新刊第6巻の感想です。

過去感想→5

ネタバレ注意!



 冷静なときのトルフィンがここまで強かったのかとオドロキの冒頭。
 あの怪物トルケル相手に一歩も引かず、それどころか一方的に斬りつけてゆく展開。
 たしかに今までずっとアシェラッド相手に戦い続けてきたわけですから、そりゃあ強くなるってモンですね。
 しかもナイフの使い方がかっこいい。
 自分から切りつけるよりも、トルケルの攻撃軌道にナイフの刃を当てるようにしてダメージを与えていってるんですね。
 自分の体勢を極力動かさず、相手の力を利用して攻撃しているというのが実に理にかなっていて美しい。
 しかし、トルフィン飛びすぎ(笑)。
 軽く10メートルくらい飛んでませんか?(笑)
 あらためてトルケルの化け物っぷりを思い知らされます。

 そしてインターバルをかねてのトルケルの思い出話。
 トールズの妻ヘルガがヨーム戦士国の王の娘だったとか、その王の弟がトルケルなんだとか、そんな面白い新情報が明かされました。
 世が世ならトルフィンは王子様だったのか(笑)。
 しかし、3ヶ月の失踪から帰ってきたトールズが変貌していたというだけで、なにゆえトールズが変わってしまったかは判明せず。
 トールズのめざしたもの、みつけたものとは一体なんだったのかが語られるのは、まだまだ先になりそうです。
 それこそトルケルこそが知りたいんでしょうけどね。
 「本当の戦士」 とはなんなのか、それこそこの漫画のテーマっぽいですから、それにトルフィンが気づくのは最終回ってとこでしょうか。


 ラグナルの死を経て、酒びたりのヴィリバルド神父の言葉に導かれ、ついに覚醒したクヌート王子。
 あのクヌートのためなら命すら投げ出しかねない忠臣中の忠臣であったラグナルの思いですら、それは 「愛」 ではないのだと、それは 「差別」 なのだという神父。
 本当の愛とは、憎むことも殺すことも奪うこともしないものであり、それは神がつくりたもうた大自然のなかにしかない。人間は生きる限り愛を手に入れられず、死によってのみ手に入れられるのだと。
 その言葉にショックを受け、王子は新たな境地を手に入れたわけですが、このへんかなり観念的で分かりにくいですね。
 要するに、世の無常を嘆き、神の与えた試練の厳しさを悟り、王者としての果たさねばならない使命に目覚めたと、そういうことなのでしょうか。 

 しかし、ここの会話だけで王子が覚醒したとすると、彼ははかなり影響されやすい性格ということになってしまいますよね。
 たぶんそうではなく、こうなる下地は元々あったのでしょう。
 宮廷陰謀に巻き込まれつづけた幼少時の生活や、これまで王に受けた仕打ち、そして今回の長旅の試練やラグナルの死、その他もろもろが彼のこういう一面を引き出したのではないでしょうか。

 今までトルフィンにバカにされて顔を真っ赤にしていたようなヒョロヒョロ少年が、いきなり王者の風格を手に入れちゃいました。
 パターンではありますが、なかなか爽快です。
 トルケルもアシェラッドも、この変貌に驚いてついていくって言うんだから大したもの。
 またこの2人がそれぞれついてゆく理由が、ただの野心ではなく、それぞれが内面に抱えたナイーブな問題がからんでいるというのがまたいいじゃないですか。
 アシェラッドは、あの哀れな母が言っていた 「アルトリウス公の伝説(アーサー王伝説)」 を蘇らせるため……いわば母の復讐でしょうか。
 そしてトルケルは結局敵わなかったトールズの目の輝きをクヌートの目の中に見つけたから。 「本当の戦士」 とはなんなのかを追い求めるため。


 まさかこんな展開になるとは予想だにせず。
 クヌート王子の下に、智将アシェラッド、猛将トルケルが集い、そこにトルフィンがいる。
 こんな軍勢が集まるためにここまでのストーリーがあったのかとオドロキです。
 「桃園の誓い」 ならぬ、 「雪原の誓い」 ですね。
 しかもその誓いにトルフィンの影が薄いっていうのが(笑)。
 あれ、この漫画主人公誰だっけ(笑)。

 しかし未だ軍勢はわずかに500
 ゲインズバラに本拠をおくスヴェン王の本隊1万6千には遠く及ばない。
 はたしてここからどうやって軍勢を集めてゆくのかがカギとなるでしょうね。


 ところで、全滅させられちゃったアシェラッド軍がなんとももったいなかった。
 裏切った面々が死んだのはしょうがないとしても、あのキャラが立ってた 「耳」 の最後がアレとは。
 もったいない人をなくしたものだ。
 いやぁクヌートじゃないけど 「こんな戦いに意味などない」 と戦慄させられますな。


 また今回あらためて思ったのですが、幸村先生は画力がビックリするぐらい上達されましたねぇ。
 いまやプラネテスと同一人物とは思えないほど。
 クヌート王子の凄絶な美しさをもった迫力とか、トルケルの猛獣のような戦いっぷり、アシェラッドの渋さなどなど、幸村先生の化けっぷりをみせつけられた巻でした。
 クヌートがときどき 『ベルセルク』グリフィスに見えたひとも、けっこう多かったんじゃないでしょうか(笑)。
 いやぁレベルアップの早い漫画家さんだこと。
 今の画力でちょこっとだけプラネテス描いて欲しいわ(笑)。



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