『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』で世界中を虜にした原作スティーヴン・キング×監督フランク・ダラボンの黄金コンビが帰ってきた。
今度は郊外のスーパーを舞台に、謎めいた霧に包まれて出口を失い、追い詰められた人々が織り成す衝撃のドラマ。
極限状態に追い込まれたとき、ある者は宗教を妄信し、ある者は凶暴性をむき出しにする……。
あらすじ
のどかな田舎町を襲ったかつてない規模の嵐も過ぎ去り、人々は被害の修復や食糧の買いだめのためにスーパーに集まっていた。そこに、不気味な霧に追われるように、血まみれの男が駆け込んでくる。「霧の中に何かがいる!」 そう叫ぶ男に混乱する間もなく、サイレンが響き渡り、町はすっかり霧に覆われてしまう。ついで襲い来る大地震。なにかがはじまろうとしていた。
幼い子ビリー(ネイサン・ギャンブル)を連れてやってきていたデイヴィッド(トーマス・ジェーン)は、裏の倉庫を見回っているときにシャッターを外から叩く恐ろしい物音を聞きつける。霧の中には何かがいるのだ。急いで人々に知らせるが、誰も信じようとはしない。必死に止めようとするデイヴィッドをよそに最初の被害者がでてしまう。
水道も電気も断たれ、携帯電話もつながらない状況で、霧の中から徐々に 『見たこともないモノ』 が忍び寄ってくる。ひとびとは、怪物からスーパーを守るために対策を練ろうとするものと、怪物を信じないもの、出てゆこうとするものなどで衝突を始めてしまう。
その中で、誰からもひんしゅくを買っていたのが妄信的なクリスチャンのミセス・カーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)。しかし彼女の 『予言』 が皮肉にも的中してゆくことで、追い詰められた人たちは彼女の言葉に吸い寄せられてゆくのであった。
はたして彼らの運命は……。
グリーンマイルはまだ見てないのですが、ショーシャンクの最高の感動に惚れ込んだた私としては、これは見ておかなければと映画館に足を運んでみました。
行ってみて大正解。
これはかつてない凄い映画です。
最初のうちは、 「これはちょっと失敗したかな〜? ありがちなB級ホラーパニックかも」 と思ってしまったのですが、いやいや中盤から後半にかけての盛り上げ方は素晴らしい。
なにより衝撃のラスト15分は 「こういう映画が観たかった!」 と唸りまくりでした。
まず単純にホラー映画として観ても、クリーチャー造形やその見せかた、ビックリさせかたはしっかりとした演出をしています。
演出タイプとしては、お祭り騒ぎ的要素はなく、シリアスなドキュメンタリータッチです。
また、山肌から溢れるように押し寄せてくる霧っていうモチーフがやたらと怖い。
ゆっくりと津波のように押し寄せてくる霧だけで、腹の底から湧き出るような恐ろしさを感じました。
何も見えない暗闇の恐怖を描いた映画ならいくらでもありますが、真っ白い恐怖というのもあったんですねぇ。
全編ちりばめられた、手に汗握るヒヤヒヤシーンはなかなかツボを心得ていて、ビックリドッキリ演出も多彩。
バリエーション豊かなクリーチャーやリアルな人体破壊描写に怖気をふるいつつ、その恐怖を堪能するという意味でホラーとしてもかなり面白いものがあります。
しかしそういったホラー面だけで見てしまうと、普通に面白いのは間違いないのですが、それでも目新しさには欠けています。クリーチャーにしても、そのクリーチャーを生み出した元凶にしても、どこかで見たことがありそうなネタなのです。あまたあるホラーのなかに埋もれてしまってもおかしくありません。
ところがこの作品の本当の凄みは、人々の本性が次第次第にあらわになってゆくその過程。
極限の群集心理劇が緊張感抜群なのです。
田舎町ならではの確執や、エリートと田舎モノのいがみ合いなど、普段はなんとか隠しておける問題が、極限状態になることでむき出しなってしまうのですね。
追い詰められた状況で、人々は理性のたががゆるみ、恐怖と焦りが怒りを増幅してしまうのでしょう。
団結しなければならない危険な状況で、むしろ本性をむき出しにして争いあい、それぞれの主張を醜くぶつけ合う人々。
さらに、はじめは誰もが煙たがっていた妄信的なクリスチャンの言葉に、徐々にひかれてゆき、救いを宗教に求めようとする人々。
これはまるで原始時代です。
文明の明かりを取り上げられ、本能を押さえつけていた理性が弱まったとき、人はここまで本能のまま暴走してしまうのかと、背筋の凍る思いがします。
外から襲い掛かってくる怪物よりもむしろ、スーパーの中の人々の争いのほうが恐ろしいとすら思えてきます。
後半より狂信的な集団を扇動し、事態を混乱の極みにおとしいれるミセス・カーモディがスゴい迫力で異彩を放ちまくり。
この人の自分に酔ったようなしゃべりかたは、最初から最後まで変わらず「イタいひと」のそれなのですが、それが後半になると逆に人を惹き付けてしまうと言う皮肉。
不安なとき、人はより声の大きな人についていってしまうのでしょうね。その言葉がどんな事を言っているのか深く考えもせずに。
このミセス・カーモディに扇動された人々の妄信ぶりもまた、何をしでかすか分からない恐ろしさがあります。
このへんは露骨なまでに現在のアメリカ批判なんですね。
911を端緒に 『正義の戦争』 を国民一丸となって盛り上げてしまったアメリカの、過剰なまでの自己批判があらわれています。
宗教に目がくらむと、人は徒党を組んで恐ろしいことも平気でやってしまうという反省なんでしょうね。
この反省の精神は、映画全体に一貫として流れているものようで、観ようによっては様々な批判・反省の精神が読み取れます。
またちょっとカッコイイのが副店長オリー(トビー・ジョーンズ)。
太っちょでチビのいかにも気の弱そうなおじさんのオリーが、実は射撃の元オリンピック選手だったりするんですね
このオリーが、どんなピンチでも冷静沈着に一発一発銃弾を撃ってゆくのがシビレどころ。いやぁカッコエェ。
言ってみれば反省映画にひとりだけ紛れ込んだいつもどおりの万歳映画ヒーローに見えるんですが、それでも最後の彼の行動は深く考えさせてくれるものがあって、この映画のぬかりなさを思い知らされます。
そして何をおいても凄いのがラスト15分のオリジナルエンディング。
原作のキングも絶賛のラストは息を呑むとんでもないシロモノです。
これは早く観てしまってくださいとしか言いようがない。
思わずノドまで出掛かってるけど言ってしまったらダメなんですねこれは。
今の世の中ネットをめぐればすぐ真相がわかってしまいますが、そういうページは観ないでとっとと映画を観てしまってくださいというのが私のアドバイスです。
いやぁさすがはキング×ダラボンコンビ。
ただのパニックホラーかと思いきや、とてつもないものを持ってきた。
胸に刻み込まれて忘れられそうにありません。
もう一度観たい! と思わされた一本でした。
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